第四百九十一話 警戒心ゼロ?概念が面倒!?
私の間合いまで近付いたのは一瞬。
攻撃したのも一瞬。
でも、リベルにその攻撃が当たる事は無かった。
「…ロボ…?」
何故なら、リベルは最初からそこに居なかったから。
リベルだと思っていたのは、リベルと全く同じ服装に見えるようにペイントされたロボだったのだ。
この場所は薄暗かったから気付くことは出来なかった。
「不意打ちとは…卑怯だと思わないんですか?」
「卑怯って、ドアが壊れたのに警戒心ゼロのあなたが悪い……!?」
聞こえてきた声は後ろから。
いつの間に背後に回り込んだのか、どこに隠れていたのかという一瞬浮かんだ疑問を叩き落として振り返る。
「警戒心ゼロって、単身で敵の本拠地に乗り込んでくるお姫様に言われたくないですね~。」
そこには案の定リベルが居た。ついでに大量のロボも。
迂闊だった。せめて転移で逃げた皆と合流してから来れば…ついでがきつい。
絶体絶命のピンチ…でも、私はどこかで聞いた。ピンチはチャンスなのだと。
この状況を逆に考えれば、脅迫事件の犯人を捕まえるチャンス。
ただし、それにはあの大量のロボをなんとかする必要がある…ここが課題。
ロボはリベルの周りを囲むようにいる。ということは、ロボのコントロールをリベルが得ている可能性がある。
もちろん全自動の可能性もあるし、どこか別の場所から誰かが操っている可能性もある。
…一芝居うってみよう。
「…まさか、私が1人で乗り込んだなんて本当に思ってるの?」
「ほう…面白い事を言いますね。
しかし、彼女らもこのロボ達に苦戦していたようですし…恐れる事もありません。」
「へえ…よく言うね。
ああ、あなたは見てなかったね。私の仲間が一瞬でロボを溶かしたところを。
ロボが一機足りないと思わない?」
「ここに居るのはあなた達が戦ったものとは別のものです。
信じているわけではありませんが、仮にそうだとしても足りないわけが無いでしょう。」
あのロボとは別!?
だとすると、敵が多すぎる…いや、アレはリベルのハッタリかもしれない。いくらなんでも1人で作る量にしては多すぎる。
それも研究にも開発にも政策にも時間がかかるはずのロボットをあんなに作れるわけが無いし、見た目は若いしね。
「…ジョークにしては笑えないけど。」
「さすがにばれましたか。」
そうだよね!?そうだよね!?
表ではポーカーフェイスを維持してるけど、内心はもの凄く安心してる。
…ちょっと待って、あれだけでも多すぎない?本当に1人で作ったの?
おっと、演技演技。間を空けたら怪しまれる。
「それより、私たちがあんな程度の実力だと思う?
周りのことを気にしなきゃ、一瞬で殲滅も出来たけど?」
「暴れづらくするために町中を選ばせて貰いましたからね。
そうでなければどうなるかなんて、予想済みです。」
「そう。
じゃあ、こうなる事も?」
「え?」
障壁でリベルとその周辺のロボを囲む。
「よし、とりあえず危機は脱し」
バコォン!
てなかった。
一瞬で創った障壁は一瞬で壊され、閉じ込めていた者は一人残らず脱出した。合計二瞬。
あ、人は1人しかいなかった。
「…このような手が通じるとでも?」
思ってた。口には出さないけど。
「さすがロボ。」
「私ではないんですか…」
「そりゃ、あなたは何もして無いからね。
戦いも脱出も、結局は全部ロボ任せ。少しは自分で何か…」
少しずつ怒りの気配が大きくなっていくことに気付き、黙る。
しかし、その時にはもう遅かった。
「お前も…お前もなのか…お前も俺の俺の努力を認めないのか!!」
「お前“も”?」
どうやら、私はリベルに言ってはならないことを言ってしまったらしい。
怒りは際限を知らぬかのように高まっていく。気配察知がそれをはっきりと教えてくれた。
「ああ、そうだ。
昔嫌になるほど聞いた言葉だ。俺はゴーレムにまかせっきりで、お前は何もしてないってな…
そのゴーレムを作ったのは俺だというのにも関わらず…その恩恵を自分も受けているにも関わらずにな!!」
ゴーレム?
私たちがロボだと思ってたものが、実はゴーレムだったって事?
「…続けて。」
「ああ!?」
「あなたの悩みを聞いてあげるって言ってるんだよ。
情報を自分から喋ってくれるのはありがたいからね。」
「…!」
リベルの表情が驚きに染まる。
あ、なんか勘違いされたかも。
事実をそのまま言ったつもりだけど、建前を立ててカウンセリングしようとしてるようにも聞こえなくは無い。
ツンデレって言う概念が面倒…別にツンデレな人を否定するつもりは無いけど。
「…いいだろう、話してやるよ。
こんな事が知れたところで、俺の優位には変わらない。
俺は数年前…」
…まあ、とりあえず聞くか。




