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第四百八十六話 今更とぼけない?いつものことだ!?

 光たちから聞いた話によると、ロボがリセスに隠している何かを探すという方針になったらしい。

 女神様の話は強引に逸らした。誰でもいきなり走り出せば、話を聞く事は出来なくなるだろう。追いつかれなければ。


『それで、今逃げている最中ですが…

 逃げ切れますか?能力持ち相手に。』


 だから現在絶賛後悔中だ。

 能力は制限が無いのに、魔法は魔力と言う限界がある。その2つを比べたらどっちが勝つかは明白だ。

 …ごく一部の例外を除く。

 普通に走って逃げていては確実に追いつかれるので、必死に隠れている。

 ついでに言い訳とかも考えている。改めて問い詰められるのがオチだろうからな。

 まさか、瑠間って言う訳にもいかないしな…


「…ん?アレは…」


 移動しつつ隠れながら考えていると、いつの間にか王城の前に着いていたらしい。

 王城に行けば、ロボの持ち主の動機などの手がかりがつかめるかもしれない。

 リセスにだけ関係あるのではなく、王族全員に関係ある理由かもしれない。

 しかし、どうやって王城に入るか…おじゃましまーすとか言って普通に入ったら、不法侵入とかで捕まりそうな気がするしな…


「リセス様?リセス様ではありませんか!」


 え?リセスはあのロボを避けてこれたのか?

 …なんてすっとぼけ、今更やらない。どうせあの兵士っぽいやつは俺のことを言ったのだろう。

 ってか、つい最近同じ間違いをされたばっかりなんだが…一応否定しておくか。無駄だろうけど。


「…人違いだ。」


「そんな冗談を言ってる場合ではありません!早く王城へ避難を!」


 やっぱりか…って、避難?

 なんだかよく分からないが、リセスに何かしらの危険が迫っている事が分かった。ついでにそっくりさんの俺にも。

 避難を呼びかけられるくらいだ。恐らく相当の事だろう。


「詳しい事は城で聞く。

 だから、担ぐのは止めてくれないか?」


 兵士っぽい奴は避難を呼びかけた直後、俺を担ぎ始めた。


「降ろしたら逃げることくらい、分かってますよ!」


「逃げないぞ。」


 むしろ、どうやって王城に入るか悩んでいたところだ。渡りに船としか言えないこの状況で、どうして逃げようか。







「済まなかった。」


「申し訳ありません!本当に申し訳ありません!」


 やや呆れた顔をして謝る王様と、その横で必死に頭を下げ続けている兵士(っぽい奴ではなく、普通の兵士だった)。

 どっちの謝罪も俺に向けられたものだ。正直、どんな顔をすれば良いのか分からない。

 多分、いつものことだと言ってるような顔になっているだろう。

 事情説明は簡潔。


「俺は守です。」


 その一言で終了。

 自分の娘のそっくりさんだ。さぞかしインパクトがあっただろう。

 だから覚えられたのだろうし、簡単に説明が終わった。こっちとしては楽で良いが、問題は兵士。

 脳震盪を起こすんじゃないかと思うくらい頭の上げ下げを繰り返している。もう止めろと言っても止まらない。


「まさか、そっくりさんの方だったとは!貴方のお噂はかねがね…」


 俺の噂とか聞いてなくてよかったのに。

 兵士には何を言っても無駄らしいので、ちゃっちゃと王様から話を聞くことにした。


「王様、リセスに何が?」


「おっと、そうであったな。

 実は、我が娘のリセスは今…ある人物に狙われておる。」


「狙われている?」


 なんで王女リセスなんだ?

 王族を狙うという事は、国家転覆などを狙っているのだと思っているのだが…狙うとしても、そこは王様や女王だろう。

 政治の実権を持ってるんだからな。

 なのに、王位の継承権しかない王女リセスを狙うとは…どういうことなんだ?


「そうだ。

 その人物は国家転覆を狙っているという噂が立っている人物でな…

 先日、リセスを攫うという趣旨の予告上が届いた。」


 マジモンの危険人物じゃねーか!


「そして、これがその予告状だ。」


 王様から渡された予告状に目を通し始める。


「…読めない。」


「すまない。確かお主は異世界人だったか。

 兵士よ、翻訳魔法を予告状に。」


「ハッ。」


 いつの間にか立ち直っていた兵士が、予告状に手をかざす。

 かざされた手と予告状はしばらくぼんやりと光っていたが、すぐにその光は消えた。

 再度予告状を見る。今度は読めるな。


「ありがとうございます。」


 と、一言お礼を言って予告状を読む。


 王族の諸君。

 貴方達の娘は、旅路の途中で悪いが我々が預かる。

 返して欲しくば我々の指示通りに国を動かすのだ。

 全ての指示を終えたとき、娘は返し、我々は消える。

 しかし、指示が通らなかった場合は…娘が帰ってくることは無いであろう。

 そうなった場合、継承者も無しに王政を続けられるか?


 リベル


 …ほぼ脅迫文だな。

 最後のリベルと言うのは、予告状の主。つまり国家転覆を狙う人物の名前だろう。


「…まずいな。」


 ギーナやタカミなどのチート勢がいるものの、リセスが心配だ。

 遠くからの狙撃は対処できるか分からないし、大量の魔物や、強力な魔物でも差し向けられたら…どうなるか分からない。

 数が多くて自分のことで精一杯になる可能性もある。


「王様。

 俺、リセスを迎えに行ってきます!」


「行くな!」


 王様の制止の声も聞かず、俺は城を飛び出して行った。

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