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第四百八十二話 保険の役目?カタコトな片仮名!?

 第4の手段を思いつかないまま、一時間が過ぎた。

 このままでは確実に遅刻する…いや、それどころか帰ることすらできない。

 5日間ここに居ろと?学校もゲームも何も無いこの世界に?


『そう言えばさ。』


 焦りがピークに達しそうだったその時、突然瑠間が声を出し…ていないが出した。


(なんだ?)


『あの噂の事なんだけど…

 実は、あの不良の行いが悪かったからあんな事になったのであって、1、2回なら注意を受ける程度で済むかも知れないんじゃない?』


 確かに、その線もあるだろう。

 悪行ばかり行っていた不良だからあんな目にあったのであって、別に悪い事は何もしていない俺なら許されるかもしれない。多少の注意くらいはあるだろうが。


(でもな、そう言う保険は後に取っておくべきだろ?そもそも怒られない保証も無いんだからな。)


『……』


 正論だったからか、それとも、自分もそう思ってのか、瑠間は黙り込む。


『…守。』


(…なんだ?)


『保険って、なんのためにあるんだろうね…』


(いきなり哲学か。

 まあ、取っとくためじゃないのか?失敗しても良いように…)


『使うためじゃないなら、無いも同然じゃない?』


(…なるほど。)


 つまり、瑠間はこう言いたいのだ。

 今保険を使うべきだと。

 確かに、保険があるからと油断して失敗する事例は少なくない。

 いざと言う時は保険があるから、保険があるから大丈夫、いつまでもそんな考えで居られるほど、世の中は甘くない。

 保険をかけることは恥ではないが、保険に頼りすぎるのは紛れもない恥…そう言うことか。


『なんか、とんでもないほど深読みをされた気がするけど…

 言いたいことが伝わってれば充分。もっとも、』


(使うのは全てが終わってから…そうだろ?)


『そうそう。』


 注:遅刻云々の会話です。


 …なんか、今テロップが流れそうだったな。これが小説とかテレビとかだったら。






 そして…


『あと10分も無いね…』


(帰れないな…)


 ラスト10分。時間は偶然部屋においてあった時計(日本製。多分誰かが持ち込んだ。)で分かった。

 時計がずれてたらアウトとか、そんなこと気にしない。どうせ終わりなんだからな…


「…あー、とけーをわすれてたー。」


 と、そこに移図離が転移してきた。

 ………


「って、すげえチャンスじゃないか!」


「…あ、守いたの?リセスも。」


 …遅刻の事で頭がいっぱいで、今の今までリセスのことを忘れていたことは忘れよう。


「あ、戻ってきたのですね。

 一度守さんの家に送って行って貰ってもよろしいですか?」


「…もち。」


「俺も頼む!遅刻ギリギリなんだ!」


「…わかってる。ちゃんとにもつもよーいしてる。」


 おおおおお!!素晴らしい!最後まで諦め…

 …なかった俺の勝利だ!


 注:25行くらい前をもう一度お読みください。


「とにかく、俺はもう学校に直接送ってくれ!リセスの後でいいから!」


「…了解。」


 移図離の転移が始まる。

 よし、これで遅刻には…






 …遅刻した方が良かった。

 いや、気付くべきだったんだ。移図離の棒読みに。一旦家に帰れたことに。

 後悔先に立たず。クラス全体から好奇の目を浴びながら、そんなことわざが思い浮かんだ。


「おい、なんなんだあのお姫様?」


「もしかして、新手の異世界転移じゃないか?

 異界の姫君が高校の教室に突然…いや、無いな。」


「どんな妄想してんだお前は。」


「なんかあの姫君さん、見たこと無い?」


「私もそんな気はしてた。でもどこで…」


 ざわつく教室。

 無理も無い。白雪姫の衣装を着たまま教室に現れたらそうもなるだろう。


「以前どこかでお会いしませんでしたか?」


「ナンパすんな!会ったことも無いくせに!」


 半年以上も顔を合わせてるが。


「それより、お名前をお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか!?」


「……」


 ……ここで高壁守と言えたらどれほど楽な事か。


「おい、喋らないぞ。」


「くぅるびゅうてぃとやらか?」


「なんで片仮名がカタコトなんだよ…カタコトな片仮名って何だ?」


「ああ!」


「答えになってねえ!」


「いい加減にしろ!それより、名前を聞くのが最優先だろ!」


 ざわめきは時間が経つほど大きくなっていく。

 どっかの4人はニヤニヤしながらこちらを見ている。どうりでそこだけ静かだと思った。

 とりあえず、この場を切り抜けるには…


「私は…」


 し~ん…


 なんでそこで静まる!?

 だが、ここで引き返しては男ではない!


 注:服は白雪姫の衣装です。


「私は…ヒメギミと言います!」


 自分の名前を言いたくない俺は、やけになって深夜テンションという激流すぎる世の流れに身を任せることにした。

 数分後、そこには俊太達に正体をばらされ、燃え尽きた俺の姿があった。

 後悔の役立たず。

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