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第四百七十五話 やっぱり言い過ぎてた?一番の敗因とは!?

 

「ゴメン守…ちょっと油断しちゃって…」


「私も…」


 いやいやいや、お前等どんだけ油断したんだよ!?

 お前らだったら左手だけで戦っても勝てるだろ!?いやこれはちょっと言いすぎか!?


「左手だけで戦うなんて言ったから…

 さすがの私も調子に乗りすぎたわ…」


 マジで左手だけで戦ってた!?

 やっぱり言いすぎだったか…って、そっちじゃない。


「私の敗因は、家の中だから物を壊さないようにって気をつけすぎたことね…」


 壊れてもしょうがないだろ!緊急事態にそんなこと気にするな!?


「…だとよ。

 俺達をなめたらどうなるか…分かっただろ?」


 いや、自分で言うのもなんだけどさっき俺に翻弄されまくってたよな?完全に弄ばれてたよな?

 とは言えない。さっきから必死に口から飛び出そうとしている言葉を飲み下している。

 理由はゴロボ一味を刺激したくないから。油断していたとはいえ、結局のところ2人が捕まったことには何も変わらない。

 2人がどうなるか。それは完全にリーダー格に委ねられている。下手に刺激をすれば2人は…


「ああ、油断できない相手って事は分かった。」


 人質が2人も居るからな。


『居なかったらどうとでもなるんだろうけどね。』


 リーダー格1人だけなら隙を突いてなんとかできるんだろうが…

 この部屋の外には大勢の人間の気配がする。恐らく全員ゴロボ一味だろう。


「さぁて、さっきのお返しといくか…

 おっと、捕まってるお仲間は魔法が使えなくなる手錠をはめてんだ。だから人質が魔法で脱出すると思うなよ?」


 あの手錠か…厄介だな。

 その手錠は俺もはめられた事がある。大男に捕まった後だ。おかげで身体強化系の魔法が使えず、赤い大剣を持った人モドキに苦戦を強いられた。

 回想終わり。

 ここで、冷静に現状を確認しよう。

 2人が自分の力で脱出するのは不可能。

 外にゴロボ一味の仲間がいるので、俺には下手な動きは出来ない。

 …絶体絶命か。いや、まだ勝機はある。

 ゴロボ一味の仲間をなんとか隔離できれば、リーダー格を障壁で邪魔して人質となっている2人を救出できる…かもしれない。

 ただ、問題はどうやって隔離するのか。また、リーダー格はどれだけの時間邪魔できるか。

 外からの増援は期待できない。誰だって敵が湧いて来た所に戻りたくないからな。

 しかし、あまり時間もかけていられないだろう。

 集団ならまだ対抗できるかもしれないが、もし1人1人、バラバラに逃げていたら…

 …そのへんはどうしようもない。ただ捕まっていないことを祈るだけだ。


「まずは軽くパンチを一発お見舞いしてやる。

 その後はもう一発、更に一発、何度でも殴り続けてやるぜ。」


 リーダー格が近付いてくる。

 何か…何かいい考えは……


「…とりあえず、待ってやるか。」


「なにを言った?」


「気のせいじゃないのか?

 さあ来いよ。殴るんだろ?」


「ヘッ、言われなくてもだ。」


 一歩…二歩…遅い。

 わざとゆっくり歩いてるのか。


「随分とのんびりだな。

 早くしないと俺の仲間が来るかもしれないぞ?」


「フン、来ない事くらい分かる。」


 あと少し…あと少し…

 …よし、今だ!


「なにぃ!?」


 俺は部屋の扉を空中固定の障壁で塞ぎ、リーダー格も障壁で動けなくする。

 動けなくなったリーダー格を避け、人質となっていた2人の縄を解いた。


「守!」


「話は後だ!それより早く!」


 手錠を壊す事は叶わなかったが、窓から2人を連れて脱出した。







「…ここまで来れば大丈夫だろ。」


 鍛冶屋から走って逃げた俺たちは、迫り来る追っ手からどうにか振り切ることが出来た。


「まさか、私が捕まるとはね…タカミも。」


「ああ、2人だけは絶対に捕まってないと思ってたから驚いたぞ?」


 あんな油断の仕方をしていたとはいえ、それでも捕まるとは…ゴロボ一味は油断が出来ないな。


「ちょっと皆が逃げられる時間を稼ぐつもりだったんだけどね…

 なんであんなところに壺なんて置いたの?」


 …ひょっとして、ギーナの一番の敗因って壺か?

 ちょっと触れて落ちただけでも壊れるからな。それを壊さないようにとなると…


「それより、早く皆を捜しに行かないと…」


「あ、ちょっと待って。」


 逃げているであろう皆を捜しに行こうとしていた俺とギーナを、タカミが呼び止める。


「何?」


「2人は不思議だと思わない?

 守はすり替わった偽王子に気付けなかったんでしょ?」


「…そうだな。」


「それって、すり替わっても気付けないほどそっくりって事だよね?

 世の中にそんなそっくりな2人って、あんまりいないと思わない?」


「いや、俺とリセスはそっくりさんだろ。

 本物の王子が間違えるくらいだし、俺もリセスも認めてくるらいだしな。

 だから、そっくりさんなんて結構いるんじゃないか?」


「そ、そう言えばそうね…」


「…タカミ、さっきから口調がおかしいけど、どうかしたの?」


 そう言うギーナの表情は険しい。

 まるで今すぐに戦いを始めるような、そんな雰囲気もあった。


「…やっと気付いたの?

 私があんた達の仲間じゃないって。」


「なに?」


 俺たちの仲間じゃない?


「分からないの?

 そのタカミは偽者。恐らく…あいつらの仲間の、数多姿族。」


 数多姿族。

 自身の姿を思うままに変える事ができる者だ。

 まさか、数多姿族がゴロボ一族の仲間に居て、目の前のタカミがそうだと…


「ご名答。

 でも、よく数多姿族なんて知ってたわね。」


「ちょっと知る機会があったのよ。」


 偽タカミの腕が細くなり、手錠がするっと落ちる。

 手錠が地面に落ちて音を立てたとき、細くなった腕は元に戻った。


「さあ、あんた達はその数多姿族に勝てるの?

 言っとくけど、私は彼女の姿だけでなく、身体能力、魔力の量に至るまで完全にコピーしてる。

 能力持ちが居るとはいえ、片方は魔法が使えない。そんな状況で戦いになる?」


「それに関して、言える事はたった一つだけだ。

 やってみなきゃわかんねえ!」


 俺は走り出し、偽タカミに拳を突き出した。

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