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第四百七十二話 何か良い案は?簡潔かつ親切!?

 崩れたメイクを拭いて、話しやすい場所へと移動していく。その場所と言ったら一つしかない。

 トーナの父親が経営している鍛冶屋だ。それ以外に知ってる場所も無いしな。

 と言うわけで、そこまで偽王子を引きずっているわけだが…


「ねえ。

 あたし、リセスが言ってること、良く分からなかった。」


「俺もだ。」


 キャビと俊太はリセスが話した王族の決まりの説明を理解しきれていないらしい。


「簡単に言うと…そうね。

 2人は、嘘つきの上司の部下に付きたいと思う?

 それも、他人を思いやるいい嘘じゃなくて、自分の都合しか考えてない嘘しかつかない上司の。」


「んなの誰もつきたくないだろ…」


「それの延長上って言ったところかしら?」


「なるほど…」


 さすがギーナ。

 キャビだけでなく、馬鹿しゅんたでも分かる簡単な説明をあっさり考えてのける。

 そこにしびれる憧れる。


「さて、じゃあ質問を始めるか。

 まず、もしくはお前らの目的は何だ?

 本物の王子はどこだ?」


「…言うと思うか?」


 まあ、捕まえて訊いただけでは何も答えないだろう。


「解決できないと、深刻な国際問題になりますからね…

 多少強引でも、この事件はどうにかして解決しなければなりません。」


 他国に行った王子がこの国で捕まれば、この国と隣の国の関係が気まずくなるのは回避できない。

 そして、もし王子の身に何かあれば…なおさらまずい事になる。


「こういう場合、どうやって吐かせれば…」


「無駄だ、俺は一言たりとも答えない。

 答えたら殺されるのは俺だからな。」


 仲間から消されるってことか…なら、意地でも言わないだろう。

 例え拷問されたとしても、後で殺されるよりその場の苦痛を凌いだ方が良いからな。

 …まあ、それが簡単に出来れば拷問なんて意味を成さないんだろうが。


「言っとくが、俺は無駄に我慢強いんでね。

 何をしてこようが時間を食って終わりさ。」


 口だけだとは思うが、話してもらえなければただ無意味に時間を浪費することは間違いないだろう。

 何かいい案は……

 …待てよ。

 なんでコイツは王子に化けていたんだ?

 ただ王子を攫うだけだったら、わざわざ偽者を用意する必要は無いはず。ということは…


「おい。」


「なんだ?」


「俺をお前らのアジトに連れて行け。」


「何?そんなことをするわけが…」


「皆、警戒されるのもまずいから俺一人で行くぞ。」


「ま、守!それは危険よ!

 もしアジトに行って、逆に捕まえられたら…」


「なに、チンピラ数人程度なら相手くらいできるさ。さすがにあまり多すぎるとまずいけどな…」


 ちらりと偽王子を見ると、一瞬にやりと笑ったのが見えた。

 これでは人数をばらしているも同然。数は相当いる事が分かった。


「よし、良いだろう。お前1人、という条件なら案内してもいい。」


 次の瞬間には普通の表情に戻っていたものの、アジトに連れて行って大勢の仲間と一緒に俺を捕まえるという魂胆はみえみえだ。ギーナがわざわざそれを言ってくれたからな。

 どうやらギーナにはお見通しだったらしく、手助けもされたが…今回の作戦はおとり作戦。

 あ、おとり作戦と言って仲間を盾にするわけじゃないぞ?どこぞのトナカイじゃあるまいし。

 まずは偽王子にアジトまで案内してもらい、返り討ちにしようとした大勢の偽王子の仲間を全員捕まえる。

 大勢なら勝てると思わせるように一人で行くように言ったし、リードもした。

 あとはアジトで偽王子の仲間を捕まえ、王子の居場所と目的を訊くだけ…完璧だ。


「そうそう、コレは俺1人での作戦だ。

 皆は絶対に付いて来るなよ?」


 と、一応念押し(押すなよじゃない方)してから偽王子を連れて鍛冶屋を出ていった。


「あ、そうそう、一応メイクはしなおしていきなさい?さっきと顔が違うって怪しまれるかもしれないから。」


 …メイクの後で。







「…ここだ。」


 先ほど迷い込んだ路地裏を進み続けて数分。大きな空き地のようなところに出た。

 この場所は建物で囲われているので、外からは見えないだろう。


「遅かったな!!」


 空き地にはゴロツキのような格好をした男やら女やらが大勢待っていた。

 良く見ると、さっき偽王子と逃げていたときに追っかけてきた奴も見受けられた。あいつらも偽王子の仲間だったか。


「ちゃんと王女様は連れてきたみてぇだな。

 王子様もいるし、脅迫を始めるとするか!!」


「脅迫?」


「何も聞かされてねぇみてぇだな。

 せっかくだし教えといてやるか。

 俺達の計画は至極単純!お前らを人質にして王家から財産を巻き上げるんだよぉ!」


 簡潔かつ親切な説明ご苦労。

 やはり、リンスだけでなくリセスも誘拐するつもりだったのか。生憎誘拐したのはリセスではなく俺だが。


「リンスは…王子は無事なのか!?」


「ああ、そこに転がってるだろ?」


 リンスはぐったりとして、地面に横たわっていた。

 人質にするつもりのようなので、死んだということはないだろう。気絶でもさせられたのだろうか。


「リンス!」


 心配して駆け寄る演技をして、リンスが本物かを確かめる。

 間違いなく本物だ。分かっていたが、ちゃんと息もある。


「さぁて、王女様は手足が自由らしいな?

 逃げられたら面倒だ、しっかり縛っておけ!」


 さっきから説明やらリンスの場所やらを言ってくれていたボスらしき人物が声をあげると、ゴロツキの数人が縄を持って俺に向かってくる。

 …そろそろ頃合だな、反撃を始めようじゃないか。

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