第四百七十話 あるいはだった?本当に心配だ!?
一話目…は、書くのを止めた方がいいでしょうか。
何話目、と書くのは二話目以降だけで良い気がしたので、次回からしばらくは二話目以降だけ前書きに書かないようにしようと思います。
…最近一日二話以上を書けなくなってきましたからね。
「言っておくが、武器屋じゃなくて鍛冶屋だ。
それと、今あの鍛冶屋には誰もいないぞ。」
「なら、しばらく鍛冶屋にある剣でも見て待ってますよ。」
「ああ、先代の王と仲が良かったって言ってるのは先代の鍛冶師で、今は行方をくらませてるらしいぞ。」
「そ、そうなんですか…
なら、作った剣の出来栄えを見て、良ければ今の鍛冶師に作ってもらうことにしましょう。」
しばらく警戒しながら案内しているが、気付いた事がある。
俺はリセス、つまりこの国の王女と勘違いされているはずだ。
その割には全く緊張とかそういった類のものが無い。いくら地位があっても王女の前では緊張するはずだと言うのに。
「…本当に何者なんだ…?」
「…分かりませんか?」
聞こえないように言ったつもりだったが、聞こえてしまったらしい。
「分かるって…初対面だろ?」
「…分からないようですね。
昔、各国の王族が合同で行ったパーティで会ったのですが…」
…王族のパーティー?
というと、王族に関係する仕事に就いていて、それで同行したのか?
あるいは…
「分からないようなので、改めて自己紹介を。
僕は隣国の王子、リンスです。」
………あるいはだったか。
「…あれ?驚かないのですか?」
「いや、なんか今更な気がしてな。」
驚きは結構少なかった。
ある程度察していたというのもあるが、王女も旅に加わっているのだ。驚くなんて今更だろう。
リセスとの出会い方が出会い方だったからな。
村を歩いてたらエンカウント、みたいな。
…しかも完全に恩売ろうとしてたし。
「今更…ばらすのが遅れましたか。」
え?そっち?解釈そっち?
…まあ、どうでもいいか。
「それで、言われてみたら思い出したということは…」
「だから、俺は別人だって言ってるだろ?
だから知るよしも無い。ただのそっくりさんだよ。」
「またまた。
では、そのドレスはなんなのでしょうか?」
…………今更ながら、誤解されている理由が分かった。
今俺が着せられている白雪姫の衣装。衣装とはいえ見た目は本物の姫が使っていてもおかしくないようには作られているはずだ。ある程度は。
対して、リセスが着ているのはそんな大仰なものではない。
高そうではあるが、せいぜいそれだけ。遠目から見ればただ白いだけの服だ。
そんな2人の着ているものを見比べれば、俺の方が王女だと思われても仕方が無い。顔はほぼ同じだしな。
「図星ですか?黙り込んでいますが。」
「好きで着てるんじゃ…
………ああ、もうなんでもいいや…」
演劇用とはいえ、説明するために男がドレス着てるなんて言えない。
全てがどうでも良くなってきた俺は、力なくテキトーな言葉を返すしかなかった。
「って、一国の王子が護衛も無しに歩いてて良いのか?
誰も護衛らしき人間は居ないが…」
ふと疑問に思ったので訊いてみる。
リセスは家出だったので護衛なんているわけが無かったが、リンスはどうだ?
家出だったらまず鍛冶屋ではなく宿屋の場所を訊く筈。いや、既に宿屋を見つけた後なら…
…目的まだ訊いてなかった。だからこんなに悩む羽目に…
「ああ、護衛をつけた方がかえって目立ちますから。」
つけたほうが目立つ、という事は、護衛をつけることは出来たという事。
少なくとも家出では無さそうだ。またややこしい話にならずに済みそうだ。
「…護衛をつけたら、牽制にもなって良いんじゃないか?」
「確かに、そんな意見もありました。
ですが、僕自身結構鍛えているので。護衛なんていりませんよ。」
単なる自信過剰じゃなきゃ良いが…心配だ。
「あ、ちょっと待っててください。面白そうなので向こうの店行ってきます。すぐ戻るので!」
「あ、おい!安易に単独行動は…」
…本当に心配だ。
「お待たせしました~!」
「遅いぞ。時間かかりす…ええええええええええええ!?」
すぐ戻るといったくせに、結構時間が掛かったな…
と思いつつ振り向いてみると、リンスはなにやら大勢の人々に追われていた。
「こっちくんな!俺まで逃げなきゃならないだろ!?」
「いや、すぐに振り切れるので…」
「こんな格好じゃ走りづらいだろ!何言ってんだ!」
「あ、そうでした。」
「バカヤロオオオオオオオオオ!!」
俺、本当にリセスと誤解されてるんだよな?
実は分かってるのに気付いてないフリしてるんじゃないよな?一国の王女を走らせるか普通!?人違いだけど!!
「……は、速いですね…追いつくのがやっとでした…」
「こ…これでも走りづらかったんだぞ?全く…」
本当に鍛えてんのかコイツは…
なんとか路地裏に逃げ込んで追っ手を撒けた俺たちだが、足に衣装がまとわりついて走りづらかった。
だから映画とかではドレスの裾を少し上げて走ってたのか…
…もっと早くに思い出せよ俺。撒いた後に思い出しても…
「それで、さっきのはなんだったんだ?」
さっきまで息が切れていたが、ようやく落ち着いたところでリンスに訊く。
「ああ、さっきの会話が聞かれていたようで…
さっき行った建物に入ったところで、王子の僕を狙って襲ってきたんですよ。」
「おいおい、結構鍛えてるんじゃなかったのか?」
「いえ、ちょっと武器の持ち合わせが…」
「……他国から来ようとするのに武器が無いのか?」
「あ、いえ。実は道中落としてしまったらしく…」
「…そうか。
でも、これで安心か?一応撒けたらしいからな…」
「いえ、まだ追ってくるかも知れません。
ここは隠れながら目的地に向かうとしましょう。」
「ああ。」
俺たちは誰にも見つからないよう、路地裏を進み始めた。
…ん?案内してんの俺じゃなかったっけ?




