第四百六十九話 どうせならで?自信満々に人違い!?
一話目。
「詳しく話してもらっていいか?」
「ああ。
詳しく言うと長くなるが、それでいいなら。
俺の親父は、ある日散歩していたのだが…
その時、近くに隕石が落ちてきたらしい。
落ちてきた隕石は3つ。赤いもの、青いもの、緑色…っぽいものだ。」
『ぽいとはなんだぽいとは。エメラルドグリーンと言え。』
「エメラルドグリーンって…なげえよ。
とにかく、どれも透き通っていて綺麗だった。
それを気に入った親父は、直径2メートルくらいの隕石を3つ担いで家に持ち帰った。」
「化け物か!?化け物なのか!?」
「おっと訂正。赤いのだけ4メートルくらいだった。
2メートルの青と緑の隕石を運んだ後、赤い隕石を持ち帰った。」
「それでも充分化けもんだろ!?」
「俺もそう思う。
で、いくらなんでも置き場所に困るって理由でおふくろに怒られたらしい。」
まあ、直径2メートルの隕石を2つと4メートルの隕石なんて置いたら、普通邪魔になるよな。
「それで、せめてコンパクトにしようと、隕石を剣にしようと試みた。
当時から親父が作った剣は評判がよかったからな。」
コンパクトにしてあげるよって奴か。あっという間ではないが。
「幸い、鉄とかみたいに融かせたから剣の形にする事は出来た。
で、親父は凝り性の気があってな…どうせならとこれ以上に無い名剣を作ろうとしたらしい。
それで完成したのがその2人だ。」
「どうせならで作ろうとしたのかよ…」
『だが、我等は感謝するべきかもしれぬな。
せっかく意思があっても、なまくらでは格好がつかん。』
『それもそうだなぁー。』
「だが、その2本の剣を狙う輩が出てきてな…
デュアは親父と仲が良かった当時の王に頼んで隠して封印してもらい、ルソードは近くの森に封印した…」
「ルソードの扱い雑だな。デュアはちゃんと隠したくせに。」
『全くだぁー…』
「それは親父に言ってくれ。」
「その親父さんは?」
「追われて逃げている。」
「ってか、あの2人アレで封印されてたのか…随分とオープンな封印だな。むき出しだったぞ。」
「はたから見れば刺さってるだけだが、2つの台座はどっちも2人が選んだものしか抜けなくなるという封印が施されているんだ。」
なるほど、だから誰にも持ち逃げされなかったのか。
『それに、我等は守以外が使おうとすれば切れ味が大幅に劣化する。
それこそ、その辺の木すら切れないほどにな。』
そんな仕掛けがあったのか…初耳だ。
『だから、俺達は例え持ち逃げされようが無意味だぁー。』
「そうなのか。」
「…その台座、ちょっと見てきて良いか?
仕掛けを聞いたら見たくなってきたんだが。」
「ああ、俺も改めて見たくなってきた。
皆も行くか?」
満場一致により、ルソードが刺さっていた台座を見に行く事になった。
「ちょっと訊いても良いですか?」
なんか声を掛けられた。
「少し道案内してください。」
「え?俺?」
「君です。」
……まあ、台座は後で見に行けばいいか。
「すまん、皆は先に行っててくれ。急ぎの用事だったらまずそうだからな。」
「人が良いなお前は。
じゃあ、後で来いよ。」
俊太達は先に行かせ、俺は仕方なく道案内を始める事にする。
「…行きましたね。」
「じゃあ、道案内を始めるぞ…
…って、俺も来たばっかりだから良く分からん。」
「良いんですよ。
僕は君に用があったんですから…」
「え?俺に用?」
しまった、新手のナンパだったか…
こうなったら、今からでも…
「君、ここの王女のリセスさんですよね?」
「……え?」
自信満々だが、思いっきり人違いだ。
ってか、本物さっき行ったぞ。
「えっと、人違い…」
「分かってます。今周囲にばれて騒ぎになる事を心配しているだけでしょう?
言いふらすことはしないから安心して欲しい。」
「隠してなんてな」
「この辺りに、先代の王が懇意にしていた凄腕の武器屋があったはずです。案内してくれませんか?」
「……はぁ…」
言っても信じてくれないタイプか、これは。
一応否定はするが、後はテキトーに流しておこう。面倒だ。
しかし…こいつは何者なんだ?
間違えたとはいえ、そっくりさんの俺を選んだことを考えるとリセスの顔は知っているらしい。
リセスは普通に町中を歩いても特に騒ぎにはならない。だから、一般人には顔が割れているわけではないはずだ。
それなのに、この男は知っていた。
俺はこの男に対する警戒を高めながら、それを悟られないように道案内を始めた。




