第四百六十八話 会ってすらいなかった?そんなに挑戦されてた!?
一話目。
「…良く分からん。」
これが説明を聞いたトーナの父親の感想だ。
確かに、一般人がこんな突拍子の無い話を聞いても訳が分からないだろう。
「重要なところだけを言うと、アンタの娘のトーナは別の世界に行って旅をしてるって訳だ。」
「何!?今すぐに迎えに」
「行けるのか?別の世界だぞ。」
「……く…」
悔しそうな様子のトーナの父親だが、俺にはどうすることも出来ない。
「まあ、あいつらなら問題無いだろ。
安心して任せても大丈夫なはずだ。」
あいつらと俺たちでは、強さはそう大して変わらないはずだ。
トーナを守ることくらい問題無くこなせるだろう。
「お前らは知ってるだろうが、俺はどんな奴かすら知らないんだよ…」
会ってすらいなかったか。
「まあ、俺達みたいな感じだ。」
「会ってそう時間も経ってないのに分かるか!」
それもそうか。
「とにかく、事情を聞いただけでは安心できない!」
「じゃあ…守がルソードの持ち主って言ったら?」
「……なに?」
トーナの父親が固まった。
そう言えば、この辺りにルソードが刺さってたんだっけな…
その辺の子供が知ってるくらいだし、この村では結構有名だったのだろう。
『ちなみに、この俺がそのルソードだぁー…』
「何?人間ではないか…」
『これでどうだ?』
ピカッ
ドスッ
「ま、間違いない…
これは親父が叩いた剣だ…」
「え?」
『なにぃ?』
『何だと?』
親父が叩いた?
このマッチョマンの親父がルソードを作ったってことか?
『では、お前が我等を作った者の息子と言うわけか?』
「我等?
ってことは、お前がデュアなのか!?」
『ああ、証拠を見せよう。』
ピカッ
ドスッ
「ああ、確かに2本とも俺の親父が打った剣だ…
まさか、お前等は守とか言う奴を持ち主に選んだと言うのか?」
『そうなるな。』
「そうか…なら、安心だな。
お前等に認められるくらいなら、よっぽどの強さなんだろうな。」
…あれ?
やけにあっさり認められたな。
「呆気に取られてるって顔してるが、こいつらに認められるってのは相当なことだ。
認められに行って失敗した奴は数知れない…俺も駄目だった。」
お前も行ったのか。
「せっかく本人が目の前にいるんだ訊いておこう。一体どんな基準で選んだんだ?」
「それは俺も聞きたいな。」
「あ、それは私も。」
「俺も気になる。」
この場に居る全員が興味津々だ。
『……その…なんだ。
説明は出来ない。』
『俺も同じだなぁー。』
「えぇ~?」
「がっかりだな。」
『我等も説明出来ないほど曖昧なものだからな。』
『あえて言うなら、なんとなくだなぁー?』
「なんとなくで数百人を超える猛者の肩を落とさせたのか…ついでに俺も。」
数百人!?そんなに挑戦されてたのか!?
『ルソード、お前は大変だったんだな。
数百人から選定するとは…』
『そう言うお前はどうなんだぁー?』
『ああ、我はずっと王の城の隠された地下室に居たからな。誰も来なかった。』
『ぬぁーにぃー!?ずるいぞデュア!』
「落ち着け。剣の状態のまま言い争うのは止めろ。」
『そ、それもそうか…』
ピカッ
さっきから今に至るまで、2人はずっと剣の姿でいた。
そのまま言い争うのは不気味と言うか奇妙と言うか…そんな感じだったので止めさせた。
…待てよ?
じゃあ、選定基準を訊いた時ははたから見れば大勢の人間が2本の剣を期待するような目で…
…まあいいか。誰も見てなかっただろう。
「今更だとは思うが、床が…」
「足刺さってるし。」
…あ。
床に刺さったまま人の姿になったので、足がめり込んでいる。デュアと出会った時を思い出すな。
あの時もデュアの足が床に刺さってたっけ…
「おっと、そうだ。
ちょっと訊きたいんだが…」
「なんだ?」
太郎がトーナの父親に何かを訊こうとしている。
「アンタの親父は、どうやってデュアとルソードを作ったんだ?
剣に意思を持たせて、持ち主を選ばせ、そして人の姿にもなれる。
そんなとんでもない剣、どうやって作ったんだ?」
確かに気になる。
デュアとルソードは太郎が言ったとおりかなり特殊な剣だ。
しかもそれだけでなく、食べ物があれば折れても直り、メンテナンスの手間も省ける。
更に、魔法まで使えると来た。こんな剣、どうやって作ったんだ?
「…それなんだが、実は親父にも分からないらしい。」
「分からない?製作者なのにか?」
「ああ。
確かに、名剣デュア、名剣ルソードは親父が作った。
だが、デュアとルソードの意思を作ったのは親父じゃない。
完成した後、勝手に意志を持ち始めたらしい。」
……なに?




