第四百六十二話 何を疑問に思う?取るんかい!?
一話目。
「「「「「「お邪魔しました!」」」」」
5人の学生の声が玄関で響く。移図離だけ黙って転移していったので、1人分少なくなっている。
俺は6人を見送らず、今日の授業の準備をしていた。
「早かったねぇ。
って、守だけかい?他は?」
「異世界に置いて来た!」
「はぁ?じゃあ早く迎えに…」
「今から学校だろ!そんな時間無いって!」
「…はぁ?」
なにを疑問に思うんだと思いつつ準備を進める。話の間にも手を止めていない。
これから走っても…いや、魔法も使って全力なら余裕か。一般人に見られたらやばい速度になるだろうけど。
「よし!行って来る!」
「…どこにだい?」
「だから学校だって言ってるだろ!!」
呆然としている母さんを避けて廊下に出ようとする。
「……守、それは本気で言ってるのか?」
が、ぬっと父さんが出てきたためそれは叶わなかった。
「父さん!?何してんだよ!!今日は仕事だろ!?」
「………守、カレンダーを見ろ。」
「カレンダーに何があるって…」
言われるがままにカレンダーを見る。
今日の日付は…確か、10月13日だったか。
「……」
ようやく母さんと父さんの言いたい事が分かった。
今日の日付は赤く書かれている。
その下には赤い文字で、“体育の日”とあった。
「……………って、ことは…さっきまでの焦りは無駄ってことか?」
2人は黙って静かに頷いた。
その後出て行った6人が戻ってきて、また異世界へ。
「良い?サーカス団の一件以外は、変装を解いてあんた達がやったって説明して。
あんた達のせいで無駄に騒がれて迷惑してるんだから、そのくらいはしなさい。」
「…分かった。」
戻ってきてみると、残っていたメンバーでなにやら話し合っている。どうやら交渉中らしい。
「あ、戻ってきたんだ。」
「いきなりどこかに行くから驚いたぞ?」
…なんて説明すれば良いんだ?
「い、いや、ちょっと急用がな…」
「どんな?」
太郎め…それは愚策だ。引き延ばしにしかならない。
「ひ、日付を確認しに…」
「はぁ?」
本気で何言ってんだこいつと言う目をされた。太郎が。
「あんなに慌てて?」
「学校の事もあるし、早くしないとな~と…」
「で、その学校は良いの?」
「いいんだ、今日は休みだからな。」
「…まあ、そういうことにしておいてあげるわ。」
全部ばれたなこりゃ。
「話を戻してもいいか?」
「ええ。」
なんの話かは聞いていないので分からないが、とりあえず戻すらしい。
「噂がどこまで広がったかは分からないから、完全にもみ消すのは無理だろうが…
とりあえず、俺達は俺達が助けた人にだけ本当の事を言う。そして噂をした人に真実を伝えろってな。」
「それでいいわ。
噂はもみ消す事は出来なくても、上書きする事はできるから。」
イルが言った通りに伝えれば、その内俺たちも騒がれることは無くなるだろう。
「じゃあ、私達は行くわ。」
「え?どこにだ?」
「あんた達が噂を広め直してる内に、異世界に避難するのよ。
あと、出来れば今日、長くても2日で終わらせて。」
「い、異世界?
分かった…一応訊くが、その期限は意味あってのことだよな?」
「私達は今日から5日間避難する。
噂の拡散を含めると、噂を流し終えてから拡散するまで待った方が良さそうだから。」
「なるほど。じゃあ出来るだけ早く終わらせる。
…あと…」
「あと?」
まだ何かあるのか?
「出来ればサインください!」
「あ、ずるいぞ俺も!」
「私も!」
偽者達は押し寄せるように俺たちにサインをねだってきた。
よくよく考えれば、この偽者達は俺たちに憧れてコスプレを始めたんだったな…
なんか、昨夜のドラゴンの気持ちが少しだけ分かった気がする。
さすがに背中に乗せて飛べとは言われないだろうが…騒々しい。後でドラゴンに謝っとくか。
……足型を一つ取ってから。
あの後、俺たちは偽者達が持っていた色紙に、これまた偽者達が持っていたペンでサインをさせられた。
こっちの文字で書いていたので読めなかっただろうが、喜んでたので良いだろう。
それはともかく。
俺は今、非情に危ない勧誘に遭っている。
下手すれば人生オワタ、下手しなくてもスリル満点過ぎるお出かけの勧誘だ。受ければの話だが。
「で、返事は?」
また訊いてきた。
俺は何度も断ると言っているのだが、それでも聞こえないフリをして追い詰めてくるギーナ。
他にも異世界組が勢ぞろい。ちなみに学生6人は帰った。
「断るって言ってるだろ。」
無駄だろうが、再度言う。
「え?なんて言ったの?聞こえな~い。」
嘘付け。
リアル目と鼻の先距離で耳を顔に近づけているのに聞こえない訳無いだろ。
更に下がって窓から華麗に脱出したいところだが…生憎後ろは壁。うまく誘導されてしまったようだ。さすが天才と言ったところか。
なんとか回避する方法は…




