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第四百五十九話 あっさり見極めた?大混乱!?

一話目。

「荷物はこれで全部か!?」


「早く逃げるぞ!」


「おい!肝心の荷物を忘れてるぞ!」


 お互いに事情説明しながら村に戻ると、村中大騒ぎになっていた。

 今は朝方。大騒ぎするような時間帯じゃないはずだが…


「こんな時に噂の偽者が…!」


 俺たちに話しかけてきたのは、この町の町長だった。


「偽者?」


「多分、あの偽者がそう言ったんでしょ。気にする必要は無いわ。

 それより、これはなんの騒ぎ?」


「お前らなんぞに話すわけが無い!

 他人のフリまでして名声を手に入れようとするような輩にはのう!」


 その台詞は偽者に聞かせてやりたいところだ。


「なら、勝手に推測するわ。

 ちょっと前にさっきドラゴンから逃げてきた偽者達がドラゴンの目覚めを町に知らせた。

 その情報が知れ渡った結果、町の人達は大慌てでドラゴンから逃げようとしている…と言ったところかしら?」


「な、何故分かった…」


 さすが天才ギーナ、あっさり状況を見極めやがった。しかも当たり。


「なるほどな。

 …じゃあ、その件は片付いたことについてさっさと言っといた方が良いか。」


「なに?」


「ドラゴンは消え、ここに来る脅威は去った。

 だから、この町の人々はわざわざ避難する必要が無い。」


「自らを偽る者の言葉なんぞ信じられん!」


 どうやら偽者達のせいで俺たちの信頼がなくなってしまったらしい。元から見ず知らずという事で無かったといえば無かったのだが。

 しかし…これはまずい。

 さっき起きたことを証明する物…つまり、証拠が何も無いのだ。

 悪魔は跡形も無く消え、ドラゴンも光となって消えた。

 残ったのはドラゴンが封印されていた場所の近くに残った戦いの跡のみ。それを見せようとして連れて行こうとしても、付いて来てくれないだろう。

 こりゃ詰んだか…


「…守、ポケットが光ってるぞ?」


「は?」


 俊太がなんの脈絡も無く訳の分からないことを言うので、一応ポケットを見てみる。

 するとどうしたことか、俊太が言ったとおりポケットが光っていた。

 光っているポケットをあさってみると、魔闘劇のカードが入っていた。

 どうやら無意識に魔闘劇のカードをポケットに入れていたらしい…って、なんかカードが一枚光ってるな…

 光っているカード以外は全てポケットに戻し、光っているカードを確認する。

 光っていたのはミラーアイズセイントドラゴン。さっき俺たちと共闘してくれたドラゴンだ。


「その紙に描かれてるのって、さっきの…」


「ああ、そうだ。

 あと、これは紙じゃない。カードだ。」


「どっちも紙には変わらないと思うけど…」


「って、守?何してんだ?」


 気がつくと、俺はドラゴンのカードを掲げていた。

 自分の意思では無く、見えない何かに動かされたような感じだった。


「いでよ、ミラーアイズセイントドラゴン!」


 掲げた時と同じように、半ば操られたかのように叫ぶ。

 するとカードから何かが飛び出し、その何かはズシンと音を立てて地面に着く。


「えぇ!?」


「な、何が…」


「どうなってんだ!?」


「すげぇ!」


 カードから飛び出したのは、やはりというべきかあのドラゴン。まあおもいっきり叫んでたしな。

 それを見て三者三様の反応をしている皆だが、町人はというと…


「逃げろーーーー!!もう来たぞーーーー!!」


「うわあああああああああああああああ!!」


 大混乱。

 町長も口をあんぐりと開け、腰が抜けたかのように座っている。


「…戻れ。」


 また操られたようにそう言うと、ドラゴンはカードの中へ戻った。


「……どうやら、ドラゴンはその紙に封印されてるみたいね。」


 普通なら他のメンバーのように驚くだろうところで、冷静に分析したギーナが言う。


「封印の札…ってところか。」


 思わず頭に浮かんできた言葉を口に出した。


「な…なんて者じゃ…かのドラゴンをも封印する札を作るとは…」


 …あれ?なんか俺が封印の札を一から作ったと思われてる?

 確かに、名前っぽいのを付けた(というか呟いただけ)のは俺だが…ドラゴンが勝手にカードに封印されただけだぞ?俺が作ったんじゃないぞ?


「まあ、とにかくこの件はこれで終わりってことで。

 あ、もう逃げなくても良いわよー。」


 呆気に取られている町人達に呼びかけるタカミ。

 この騒動は、そんな気の抜けた声で終了した。

 …町人からすればさぞ訳が分からなかったことだろう。

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