第四百五十八話 ドラゴンとの共闘?まずは作戦!?
一話目。
「食らえ!」
俺に意識を少しでも向けさせ、ドラゴンを後ろに下がらせるために障壁の剣を創って投げる。
悪魔に投げた剣はなんとか当たり、意識を俺に向けることに成功した。
「…来いよ、俺も相手だ!」
俺がまともに闘っても、負けることは分かっている。
正直怖いし、威勢を張っているくせにその足は震えている。
だが…その言葉を理解してか、悪魔は後ろに下がるドラゴンを追わずに俺に向かってくる。
「コイツが避けられるか?」
猛スピードで突っ込んでくる悪魔の前に障壁を創り、正面衝突させる。
空中に他の障壁を創り、そこから追撃を…
「何!?」
障壁は粉々に砕かれ、全く衰えていないスピードでこちらに向かってくる。
横に障壁を創って飛び移り、その突進をなんとか避ける。
…しかし、今ガクッと速度が落ちたような…
「守!間一髪だったな!!」
「俊太!」
そうか、今のは俊太が能力で…
アレがなければ俺はあのまま突進を食らっていた。俊太には感謝しないとな。
「守!来てるわ!」
悪魔は更に突進してきた。
ただ、今回は爪で攻撃するらしい。構えで分かる。
「障壁が駄目なら、障壁結晶でどうだ!」
ゆっくりと、今出来る中で最高に硬い障壁結晶を創る。
力では勝てる気がしないので、空中固定にする。これなら…
ガキン!
「なっ…」
創った障壁結晶が、一瞬で半分まで切られた。
もう半分が切られるのもすぐだろう。それこそ、逃げる時間が無いほどに…
正直、壊されるものだとは思っていた。だが、それでも逃げる時間くらいはあると思っていた。
だからあらかじめ足場を創っておくようなことをせず、硬い障壁結晶を創ることに集中したのだが…それが裏目に出た。
爪が迫る。
「…無用心。」
だが、爪に触れるか否かと言うタイミングで突然景色が変わる。
今の声は…
「居図離!?」
「…危なかった。」
なんでこんなところに…寝てたんじゃなかったのか?
「事情説明は後だ、お互いにな。」
「太郎!?皆も居たのか!?」
そこには、居図離だけでなく障壁ハウスで寝ていたはずの皆までいた。
「かっこつけようとしてるとこ悪いけど。」
「守だけじゃあんなの相手にならないよ。」
「さ、散々言ってくれるな…
そこまで言うなら、手伝ってくれるんだろうな?」
「それは愚問ってやつだよ。」
「さあ…行こう!」
まずは作戦を立てよう。
さっきは最大の硬さの障壁結晶を単純な力だけで壊されてしまった。
だが、それは正面からの話。
関節ならあのバカ力を封じる事ができるだろう。その上動きまで完全に止めることが出来る。
ただ、それにも隙が必要だ。それにはどうすれば…
タカミ、ギーナ…チートの2人でもおそらく抑えられない。
かと言って、何もしなければせっかく後ろに下がらせたドラゴンが…
上空を見ると、まだ俺を捜している悪魔と、さっき後ろに下がったドラゴンが月明かりに照らされて神々しい。ただ佇んでいるだけだと言うのに。
…ちょっと待った。そう言えばさっき…
「光!居るか!?」
「居るわよ!居ないと思った!?」
「少し頼みがある。あのな…」
光に作戦を伝え、全員に待機するように言った。
しばらく隠れていると、悪魔は狙い通りドラゴンに近付いていった。
「よし、今だ!
光を放て!セイントドラゴン!!」
ドラゴンは俺の指示に従い、先ほどのように全身から光を放つ。
悪魔は聖なる閃光に怯む。
「光!」
「ええ!」
そして、その光を光の能力で集約し、怯んだ悪魔に集約した聖なる閃光をぶつける。
悪魔はその苦しみからか、もがきながら落ちていった。
ディープダークデーモンは闇そのもの。なので、光に弱い。特に聖なる力を持った光には。
これで大きな隙が生まれた。ここで俺は空中固定の障壁で悪魔の関節を覆い、障壁結晶で更にその上を覆う。
「闇ごと切り裂け!
セイントストリーム!!」
動けない悪魔に、溜めに溜めた聖なるドラゴンの一撃がぶつかる。
聖なる一撃は悪魔を飲み込み、跡形も残さず悪魔を消し去った。
「夜明けだな。」
悪魔を倒すのとほぼ同時に、朝日が出てきた。
まるで朝日が悪魔の消滅を待っていたかのように…
「もしかすると、あの悪魔がここに来ることを知って封印を自力で解いたのかもね…」
昇っている朝日からドラゴンに視線を向け、ギーナが言う。
「自力で?」
「ええ。
あの封印、実は自分で自分にかけてたみたい。歩いてただけで大騒ぎになるから、人間や他の生き物に迷惑をかけないようにって。」
他の生き物の為に自分で自分を封印してたのか…やっぱり良いドラゴンだったんだな。
人間に無理矢理封印されてなくて良かった。もしそうだったらこうして協力もしてくれなかっただろうからな。
ズン…ズン…
ドラゴンが俺たちから離れると、ドラゴンの全身から丸い光が漏れ出すように出てくる。
丸い光は出てくる量が徐々に増え、それに比例してドラゴンは透明になってゆく。
やがてドラゴンの姿は消え、出てきた全ての丸い光が俺たちに俺たちに降り注いだ。
「…ありがとう。」
丸い光が全て無くなると、消えたドラゴンに礼を言って俺たちは町へと戻った。




