第四百五十二話 乗せた覚えは無い?いつになく長そうだ!?
三話目。
「俺のターンだ!」
次の土曜日。
平日を特に何事も無く過ごした俺たちは、また異世界へと行くために俺の家に集まっていた。
「何してるんだ?」
俊太と太郎が向かい合って何かをしている。
よく見ると俊太と太郎の間にはきれいに重ねられた紙の山があり、俊太は手前の山から一枚その紙を引いたようだ。
「見て分からないか?昔やってた“魔闘劇”だよ。」
「ああ、アレか!
随分懐かしいものをやってるな。」
「本棚にあったのが目に入ってな。
まだ捨ててなかったのか。俺も捨ててなかったけどさ。」
“魔闘劇”とは、俗に言うTCGの一種だ。
俺たちが小学生の頃、魔闘劇のアニメを見て始めたものの、本棚に設けられた小物置き場に置いたままで今に至るまで完全に忘れていた。
「それが終わったら俺ともやってみるか?
デッキは崩してなかったはずだから、昔の戦い方さえ覚えていればすぐに戦えるぞ。」
と、小物置き場に置いてあったデッキを手に取って言う。
デッキとは、ゲームをするために必要な枚数のカードの集まりのことだ。
「「おう!」」
俊太と太郎は、魔闘劇に集中しながらも同時に返事をする。
『魔闘劇って、今考えてみるとあのカードゲームみたいだよね。
ルールとか、漢字三文字のところとか…』
(一応、公式でも兄弟作品って言われてるからな。
もっとも、魔闘劇のほうがパクリっぽいけど。)
魔闘劇の方が後から出たしな。要は弟の方だ。
兄弟作品という設定のせいか、2つのゲームは似ている。弟の方が兄に似せたみたいな感じだが。
『でも、アレは酷かったよね。』
(ああ、アレか…
他の奴から見ればそうなんだろうが、俺はそのカードを当てて自慢しまくった立場だからな…)
アレとは、とあるレアカードのこと。
そのカードは兄の方の作品で有名なカードに似ていて、強力なカード。
当時は著作権について、ネットでかなり議論されたらしい。
「これ、本当に大丈夫なのか?」
と言った感じで。
だが、幸か不幸か俺は周りで誰も持っていないそのレアカードを見事カードパックで当て、魔闘劇を知っている奴らに自慢した…
…という立場なので、それに関しては強く言う事がためらわれる。なんだかんだで一番好きなカードだしな。
『って、確か守のデッキには…』
(もちろん入ってますとも。
あのカードで2人をボコボコに…フッフッフ…)
「ちょっと、何してるの?
そろそろ出発よ。」
2人が勝負に熱中していると、ギーナがやってきた。
「一度始めた勝負を中断なんて出来るか!」
「珍しく意見が合ったな俊太!
そう言うわけだ。これが終わるまで待ってろ!」
2人は完全に何か良く分からないスイッチが入っている。
「何をしてるの?」
「魔闘劇っていうカードゲームだ。」
「…面白そうね。ルールを教えてくれない?」
「いいぞ」
「ちょっと!何乗せられてるんですか。早く行きましょう!」
乗せた覚えは無い。質問に答えただけだ。
濡れ衣を着せられた気分になりながらも、待っているであろう他の皆の元へと向かった。
「で?どうやったの?」
「そ、それは…」
俺は今、異世界でタカミと一緒に問い詰められている。
理由は一週間前の瞬間移動。移図離も居なかったのにどうやって消えたのかということだ。
実は、タカミの能力の事だが…まだ皆には言っていない。
何故なら、それを言うと一緒に過去の世界で父さんたちと旅をしたことを言わなければならないからだ。
…別にまずい事でもないって?めんどくさいだろ。
「別に気にしなくてもいいことだろ。」
「…気になる。」
「な、なんでだよ?」
「…もしタカミが私と同系統の能力なら…
…キャラが被る。」
そういう心配かよ!
「ほら、移図離もこう言ってるんだから白状したら!?」
「断る。」
…別にそこまでここで言う必要は無いだろ。
もっとも、能力が絡んでるからいつかは言うつもりだったしな。面倒だから後回しにしていただけで。
「高壁君!私に秘密を作るの!?
私はこんなにも高壁君のことを想ってたのに…」
津瑠の目は若干濡れている。半泣きだ。
……大して隠す気があるわけじゃないから、涙目は止めてくれませんかね~…
「そうだぞ守!
お前はこんなにもお前を想ってくれている1人の女の子を見ても言わないのか!!」
おい、便乗するな。罪悪感が加速したじゃないか。
「……分かった、分かったから。泣くな津瑠。」
「じゃあ、教えてくれる?」
「もちろんだ。」
津瑠の涙(出かけ)とルーの便乗により、結局白状することになった。
説明が面倒とか、今はそんなことを言ってる場合じゃない。
ここで黙っていた方がよっぽど面倒なことになると思った俺は、仕方なく説明を始めた。
……いつになく長い説明になりそうだ…




