第四百五十一話 …なにこれ?すでに実行寸前!?
二話目。
麻里は年齢のことを言いかけた後から、今もなおずっと良い笑顔で消の隣に居る。
「麻里は年齢の事になるといつもこうなんだ。
まだまだ若いってのに、年れ」
「消?」
「…あの言葉のれの字を口にした辺りで、こんな状態になるんだ。
きっと昔、照れ隠しで言ったバ」
「消…?」
「…あんなことを言ったからこんなことに…」
………
麻里の気配がどんどん禍々しく…
「なるほど、自業自得だね。」
「私達には関係無いわね。早く行くわよ。」
「置いていかないでくれ!手伝ってくれ!!」
叫ぶ消を置いて、私たちは居間を出る。
ここで外に出るのではなく、何故か自分の部屋に向かってしまったのは帰巣本能というもののせいだろうか。タカミも私についてきてしまった。
そして物置部屋の前まで来た私が振り返ると、廊下に出てきた消が…
「タカミ!ここで能力!!」
「え!?」
驚きながらも、タカミは能力を使った。
タカミから発せられた白い光は周りの光景を飲み込み、いずれ消の姿も見えなくなった。
……帰って…来れた?
光が収まっても、周りの景色はほとんど変わっていなかった。
壁や柱が少し古くなったような気がするだけで、後は…
「おい、押すなよ!」
「しっ!
大きな声出さないで、ばれるわよ。」
何故か私の部屋の前に皆が群がっていることくらいだ。なにやら必死に隠れて覗いている。
…なにこれ?
「タカミの奴、早く言えよ…この意気地無し。」
「な…!」
「そんなに言いづらいことなの?まさか…!」
「待て待て!突入するのは止めろ!」
「これ以上恋敵を増やしてたまるもんですか!」
「守狙ってるのなんてアンタくらいしかいないけど…」
「だが、ここまで言いよどむくらいだ。そういった種類の告白である可能性も高い。」
「まったく、いつまで待たせるんだろうな。
守も守だ。言いやすいような空気を作ってやれよ。」
……そこにいる一団の話をまとめよう。
まず、ルーの証言から、タカミが何かを言おうとしている。
しかし、津瑠とタム、太郎の証言も合わせて、タカミはよほど長い時間それを言いよどんでいたらしい。
そして最後に太郎の証言から、それを聞こうとしているのは守…もしくは私。
これらのことを考えると…私たちはタイムスリップする直前に戻ってきたらしい。
『んで、皆はタカミの告白を覗こうとしてるってわけだ。
…ここまで深く考える必要ってあったのか?大体察せるだろ。』
(ちょこっと情報を整理したかったんだ。
でも、大丈夫かな?)
『…何がだなんて訊かないぞ。分かってるんだからな。』
さっきからタカミが笑顔で震えている。
拳は固く握り締められていて、今にも獲物に向かって飛んでいこうとしている。
『ロケットパンチみたいな言い方だな。』
本当にロケットパンチ並の威力がありそうだから笑えない。
「えっ!?」
「なに!?」
「消えた…!?」
『俺たちが消えたみたいだな。』
過去に行ったって言ってよ。
「守!?」
「あ、ちょっと津瑠!?」
津瑠が部屋に飛び込んだのを合図に、皆が部屋になだれ込んでいく。
誰も私とタカミに気付かなかったらしい。
『なあ、覗こうとした皆に罰を与えないか?
後ろから本人登場というドッキリで。』
(ごめん、それもう実行寸前。
…タカミが。)
『え?あ。』
すぐそこに居たはずのタカミが居なくなっている。
それは皆の後に付いて行ったから。そして…
「皆、覚悟は出来てる?」
「なに!?」
「バカな!?さっきタカミはこの部屋で消えたはず…」
「…残像よ。」
その後、しばらく私の部屋から大人数の叫び声が断続的に聞こえてきた。
「どうしたんだい守?
部屋が騒がしいけど…」
居間に来てみると、母さんがテレビを見ていた。
そう言えば、私がタイムスリップしたのは情報交換会の後だっけ…もう昔の事のように思える。
『実際に過去で数日過ごしてたからな。
そういや、今日は平日だったな…だから父さんが居ないのか。』
父さんは今日の情報交換会に出ることができなかったので、帰ってきてから全ての情報を話す事になる。
その役割は他の人に任せよう。私にとっては数日前のことだし。
「気にしなくても良いよ。」
と言って、ちらりと壁を見る。
「…どうしたんだい、守?」
「ちょっとね。」
私の視線の先には、壁に掛けられている2014年のカレンダーがあった。
帰って来れたんだね…やっと。




