第四百四十九話 矛盾した認識?真実の推測!?
一話目。
消達の家の表札を見た俺たちは驚愕に見舞われた。
しかし、それと同時に疑問がわいてきた。俺は何を驚いているんだ?
あの物置の部屋が俺の部屋だと言う事は分かっていたではないか。
と言う事は、この家が俺の家だということだろ?なんで今更表札を見て戸惑っているんだ?
頭の中がぐちゃぐちゃだ。もう訳が分からない。
『守、落ち着いて。』
ただでさえ色々考えてるのに喋らないでくれ。情報の処理量が増える。
『多分だけど…守が表札を見て驚いたのは麻里と消の存在のせいだと思う。』
なんでそこで消と麻里が出てくる。あいつらは何もしてないだろ。
『2人は何もしてないよ。
守は、この家に居た麻里と消を見て無意識にここは自分の家じゃないって言う前提をたてちゃったんじゃないかな。
そして、それが今認識したことと矛盾したせいで驚いて、戸惑った。』
……ますます訳が分からなくなってきた。
今の俺に難しい話は止めてくれ。もう脳が限界なんだ…
『……気付かぬ間に矛盾した認識を作ってて、その矛盾に今更気付いた。』
分かりやすく要約してくれたようだが、全く分からない。
『脳の処理を全部矛盾に持っていかれてるんだね…』
なんだか分からんが瑠間が正しい事を言った気がする。
「守、これってどういう…」
更に処理量を増やすなあああああああ!?
『!
そうだ!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』
あ、頭が………意識が…………
「守?守!?」
……計画通り。
頭の処理量を急激に増やして守を気絶させ、入れ替わる…完璧な計画だった。
原理は以前女神様のテレパシーと守の声で気絶したときと同じ。
テレパシーや心の中の声は脳の処理量が多くなるから、普通の状態でさえ何度も叫べば気絶してしまう。あの時の私みたいに。
矛盾を必死に処理しようとしている守の脳なら、一回叫んだだけで気絶する…思ったとおりだ。
まあ、あの状態の守ならほっとけば同じ結果になってただろうけど…その間ずっとタカミを無視し続けることになるしね。
これから色々と推測を説明するのに、あんな状態じゃ何も話せないよね…だから入れ替わったんだけど。
「守!?守!!」
おっと、そろそろ起きないと。
タカミからすれば前触れも無く倒れたんだから、早くなんともないって教えないと。
「大丈夫、ちょっと気絶しただけだから。」
「…その言葉のどこに大丈夫な要素があるか、数時間問いただしても良い?」
「言葉だけ聞くとそうかもしれないけど、実際大丈夫だから。
一から説明すると…」
「…つまり、私はなんともないってわけ。」
気絶した原理と理由だけ話したけど…タカミはどうも納得がいかないらしい。
どこに説明不足があったんだろう?
「一つ思ったんだけど…
二重人格って、体を共有してるんだよね?」
「そうだけど…」
「じゃあ、守の脳が限界なら瑠間の脳も限界ってことじゃないの?」
……確かに、その理論は間違ってない。
体を共有していると言う事は、もちろん脳も共有しているということ。
なら、一方が限界になればもう一方も限界なのでは?ということだ。
…どういう理屈かは知らないけど、実はそうじゃないんだよね。
体の疲労は共有するくせに、何故か脳に関しては違う…考える事に対する精神的な疲労にでも含まれてるのかな?
守が焦っていても私が平気なように、精神は共有してないからね。二重人格ってそう言うものだし。
という説明をしたけど、やっぱりタカミは腑に落ちないらしい。
「う~ん…二重人格って謎が多いわね。」
「そうだね。
当事者が言うのもなんだけど、本当に不思議だよ…
って、そんなこと話してる場合じゃなかった。」
危ない危ない、入れ替わった目的を忘れるところだったよ。
「どうしたの?」
「話を戻すけど、この家…
いや、この世界の話に。」
「世界?」
何故、この家の表札が高壁だったのか。
何故、あの物置部屋は私の部屋だと思ったのか。
何故、あの壁に掛けてあったのは…
「タカミ。一つ思い出して欲しいんだけど、あの物置部屋に来る前に何が起きた?」
「え?何って、私が光って…」
「それだよ。実はあの時、
タカミの能力が暴走してたんだ。」
「…え?」
それなら、タカミが光った事も、あの壁に掛けてあった“十数年前”のカレンダーにも説明が付く。
今あんなカレンダーを壁に掛けるわけが無いし、普通ならとっくに捨てられているだろう。捨てていなかったとしても壁に掛ける事は無いはず。
消や麻里がカレンダーのコレクターだからと線も無い。
もしそうだったら使わずに取っておくはず。だけど、あのカレンダーは既に10月まで破られている。
しかし…もしタカミの能力の暴走でタイムスリップしていたとしたら?
これならつじつまが合う。
「じゃあ、この家は数十年前の…」
「そう、私の家。」
玄関に来る途中に見た、家の外観や廊下、部屋の配置からするに間違いない。
この家は数十年前の私の家。そして…
「この家は、“高壁消”、“高壁麻里”の家…
つまり、私の両親の家でもある。」
次の瞬間のタカミの目は、大きく見開かれていた。




