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第四百四十八話 こんな時に限って?書かれていたものは!?

一話目。

「…なんでこんな時に限って早く町に着くのか。」


 いつもは早く町に着かないかな~とか思っているものの、今だけは早く町に付いて欲しくなかった。

 町に着く、と言う事は3人…いや、5人との別れを意味する。安全に異世界に通じる穴を作り出す場所が確保できてしまったからな。

 心なしか、他の皆の雰囲気もしんみりとしている。俺と同じことを考えていたんだろう。


『なんか嫌だったみたいだね。』


 意地の悪い事を言うな。

 誰だって別れは辛いし、来て欲しいと思わない。

 しかし、このままでは元の世界に居る皆と別れるも同然…

 天秤に掛けたくはないが、どちらがかと言うと元の世界に居る皆とは別れたくない。あいつらとこいつらでは過ごした時間も友情も違う。

 それに、俺はまたこいつらと会える気がする。

 いや、会えるはずだ。世界を渡る手段もあるしな。ナイフの鞘とか。


「なんかしんみりしてるところ悪いが…

 別れるのは明日だぞ?今日はまだ居るんだぞ?」


 ……

 アーアーキコエナーイ。






 ついにこの時がやってきた。やってきてしまった。


「…真っ暗で先が見えないが、本当にこれが…」


「ああ、元の世界に通じる穴だ。」


 俺たちの目の前には真っ黒な穴がある。ちょうど一日前に魔力を注ぎ込んだ丸だ。


「本当にこれでお別れなんですね…」


「また会えるさ。いつかな。」


「慰めのつもりか?根拠が無ければ気休めでしかないぞ。」


「根拠なんて作れば良いのさ。」


「かっこつけないで…って言いたいけど、本当に作っちゃいそうだから困るわね。」


 能力が能力だからな。


「って訳で、多分また来るからその時はよろしくな。」


「別れの直前だってのに軽いな…」


「って訳で、先に行くぞ。またな!」


 と言って穴に飛び込む。

 そして、俺の視界は真っ黒に染まった。






 しばらく落ちていると、景色が変わった。

 ここは消達の家…俺たちが世界の歪みに吸い込まれた場所だ。


「危ない!」


「え」

 ドスン!


 声が聞こえたと思ったら、突然上から降ってきた何かにぶつかった。

 前にも似たようなことがあった気がする。


「守!ちゃんと避けて!」


「タカミか…無茶言うなよ。」


 いきなり降って来られても避けられる訳無いだろ…

 …そうか、そう言えば、タカミと出会った時も上から降ってきたんだよな。だからデジャヴが…


「守!早くそこからどいた方が…」


「へ?」


「「あ。」」


 ドスン!ドスン!


「……あ~…大丈夫か?」


「………とてつもなく痛い。」


「悪いねぇ。」


 また2人降って来た。消と麻里だ。

 なんだよ皆して。最近は上から降ってくるのがはやりなのか?


「出口が上だったから仕方ないって。

 それより、いつまでもその下に居た守も悪いと思うけど?」


「少しボケッとしてただけでこれは酷くないか?

 人3人の下敷きだぜ?」


「…まあ、災難だな。」


「そう?

 交差点の真ん中でボケッとしてるのと同じだと思うけど。」


「その例えはオーバーだろ。

 それより、いつまで乗ってるつもりだ。早くどいてくれ。」


「おっと、悪い悪い。」


「悪いねぇ。」


 消と麻里は降りる。


「…タカミも降りろよ。」


「もし嫌だと言ったら?」


「無理にでも立ち上がる。例えタカミを振り落とそうとも。」


「もちろん冗談よ、だから振り落とすのは止めてくれない?」


 と言って、タカミは心なしかそそくさと降りる。

 じゃああんな冗談言うなよ。


「ったく…」


「まあまあ、良いじゃないかい。

 無事に帰ってこられたんだからさ。」


「…無事に帰ってこれた、か…」


 …俺たちは本当に帰ってこられたのか?

 確かにこの世界は俺たちの世界だ、それはなんとなく分かる。心のそこから落ち着ける世界なんて他には無いからな。

 しかし、同時に違和感を覚える。

 本当に俺たちの世界だったら、この家には皆が居るはずだ。

 だが、この家には消と麻里の2人だけ。しかも俺の部屋は物置と化している。

 一体どういう……!?

 あ、あれは……


「守!?」


 壁にかかっているものを見てまさかと思った俺は、消の家から出る。

 キッチンから玄関に出るまでの道は分かっていた。この事実も俺の推測を確かなものに近づけていく。


「……!」


 外から消達の家を見た俺は、自身の推測が正しいことを知った。


「守、なんでいきなり…!?」


 タカミも追いついてきた。そして、俺と同じものを見て固まった。

 それは家の表札。そして書いてあったのは…


「“高壁”…?」


 見間違えるはずも無い、俺の家の表札だった。

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