第四百四十六話 大きすぎる嘘?増えたタカミの真相!?
一話目。
『ひるむな!あんな言葉なんぞハッタリに決まっている!』
虚勢を張っているつもりなのか、タカミの発言を否定して底なし沼に潜る河童。
河童はああ言っているが、俺には嘘を付いているようには思えない。
確かに、河童達が無防備の消と麻里に向かっていくというのは推測できないわけでもない。3人のタカミは飛んでいて手出しが出来ないのだから。
だから選択肢を狭めて河童たちの行動を誘導したと考えられなくも無いが…
そうだとしても、全てを知っていると言うのは大きすぎる嘘だ。
動揺させるためとはいえ、ここまで大きな嘘をつく必要はあるのか…?
「全く、何度言わせれば分かるの?」
「アンタ達の行動は全部分かってる。何をやっても無駄…今ね。」
『ぐうっ!?』
『ぐあっ!?
バカな…』
…今タカミはとんでもないことをした。
河童は恐らく、新しく底なし沼を作ってそこから飛び出すつもりだったのだろう。
しかし、タカミはそれを“沼が出来る前に”沼ができる地点の上に行き、河童が出てきた瞬間を狙って蹴ったのだ。
もぐらたたきのように出てくる穴が決まっている訳ではないのに…タカミはそれを正確に予想してのけた。
しかも、出てきた河童は2匹。まさか出てくる河童の数も予想したのか?
『し、しかし…』
『何故2匹しか出なかったと思』
「それは、残った一匹の不意打ちを成功させるため。」
「後ろ。」
『ぐはっ!?』
2人のタカミは、後ろから出てきた河童の不意打ちをあっさり避けて反撃する。
「だから言ったじゃない。」
「“私達には全部分かる”ってね。」
『まさか本当に…』
『そ、そのような事があってたまるか!
こうなったら、戦い方を変えるぞ!』
河童は3匹とも沼から出てきて、タカミ達を見据える。
『クックック…
さすがのオマエも、まさか我々が沼から出ることは』
「分かってたわ。」
『まだそんな強がりを言うか…!
かかれ!』
河童は走り出す。
しかし、標的はタカミじゃない。消と麻里だ。
『ハッハッハ!
さすがに標的がその2人だとは思っていなかったようだな!!』
タカミは、二人が狙われたというのに全く動かない。
「何してんの!?早く助けに」
「その必要は無いわ。黙って見てて。」
「……」
「アンタ達に聞くけど、なんで全部知ってるはずの私達が先に動いて助けることをしなかったと思う?」
『フン!そんなの、予想できなかったからに決まっている!
そして、全て知っているというのは嘘だったのだ!!』
「…残念だけど。大ハズレ。
そんなにずれた回答が出来るなんて、呆れを通り越して尊敬すらできるわ。」
『何…?』
「答えは…」
その瞬間、河童は麻里を中心に広がる少し黄色がかった透明なドーム状の壁にぶつかり、弾かれる。
そこで消が白い光線を出し、光に飲み込まれた河童達3匹を消滅させた。
「助ける必要が無かったからよ。」
「正確に言うと、助けない必要があったから…じゃない?」
2人のタカミは、消えた3匹の河童にそう言った。
「…で、結局お前らは何なんだ?」
3人のタカミのおかげで底なし沼から脱出できた俺たちは、真っ先にそう訊いた。
そっくりさんか何かか?それとも、平行世界から来たタカミか?
どっちにしろ、あの迷いの無い動きに説明が付かない。何なんだ?
「それ以外にも質問がありそうだから、順に説明するわ。
まず、私の能力について。
私の能力は時間を渡る能力。過去にも行けるし、未来にも行ける。」
こいつの能力って、時間を渡るものなのか…
って、
「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!??」」」」
叫んだのは、俺、タカミ、消、麻里、の4人。
他のメンバーはピンと来なかったのか、キョトンとしている。
「うるさい。」
「うるさいじゃねえよ!?
お前そんなとんでもない能力持ってたのか!?」
「アンタ達が驚くのはともかく…
タカミ、これアンタの能力よ?自分の能力に驚いてどうすんの。」
「え?
えええええええええええ!?私のそっくりさんとかじゃないの!?」
「守とリセスの件もあるし、疑うのも分かるけど…
私達2人は正真正銘タカミ本人よ。」
……え?
じゃあ、なんで増えてるんだ?平行世界から来たのか?
「ここで追加の説明。
私は…いえ、私達は未来のタカミよ。」
……へ?
何言ってるんだ?タカミはそもそも未来からやって来て、この2人も未来からやって来て…
…どういうこっちゃ。
「説明が足りないみたいね。」
全然足りねえよ。
「正確に言うと、私は今から数分後のタカミ。
そこに居るのが更に数秒後のタカミよ。」
……はぁ?
「……とある猫型ロボットの話に、未来の自分を数人連れてきて宿題を終わらせるって言う話があったじゃない?要するにアレよ。」
………ああ、確かにそんな話があったような…
なるほど。原理はアレと同じってことか。
これならさっきの戦いの迷いの無い動きにも説明が付く。
河童がどう動くかも、自分達がどう動くかも、最初から知っていた状態であの戦いに臨んでいたのだ。
昨日の自分がどう動いて、どうなったか。今日の自分なら全部知ってる。そんな感じだ。
「まあ、そんなわけだから…4人はピンと来てない異世界組三人に説明しといて。それじゃ、元の時間に戻るから。」
「私はまたさっきの時間に戻らないと…」
と言って、2人のタカミは消えた。




