第四百三十六話 善行に隠れた矛盾?気を付けるものは!?
一話目。
教えられた道を歩いていると、すぐに霧が晴れて頂上に着いた。
「俺達はこれまでずっとあの場所を回ってたのか…」
「さっきまでの苦労は一体…」
頂上に着いたと言うのに、皆は意気消沈している。
無理も無い。散々歩いた結果、それが完全に無駄だったのだから。
『もっと早くアイツに会ってれば、こんなに歩く事も無かったってのに…』
(もっと早く会えてればね…
って、守は歩いてないでしょ!)
『その通り!俺だけ楽させてもらいました~!』
「守~!!
守ばっかり楽して!!」
『あ、馬鹿、声に出したら…』
「あ!そう言えば守だけ歩いてない!」
「ずるいぞ守!」
『…変な恨みみたいなもの買うだろ。』
(自業自得だよ。)
『その台詞、そのままそっくり返すぞ。
元はと言えば、お前が表に出たいなんて言うからだろ。
俺が表のままだったら、俺が歩いてたってのに。』
(そ、それは…守が私を表に出してくれなかったから…)
『…それに関してはスマン。
あと、もうこの話題は止めよう。自分同士で争っても不毛なだけだ…』
(…そうだね。)
納得しきれない部分もあるけど、守が言った事はもっともなところもあるので本格的な喧嘩に発展する前に止める。
『ところで、気付いてたか?
さっきの奴だが、迷ってたって言ってたよな?』
(確かに言ってたけど…あれ?)
『でも、あのループの正しい抜け道を知ってたよな?これって矛盾してないか?
ってか、絶対迷ってる訳無いよな?行くべき道がはっきりしてるのに。』
…なんでそんな単純な矛盾に気付かなかったんだろ。
『瑠間は疑って悪かったかもとか思ってたが、疑う余地は充分にあった。
だって、わざわざ初対面の奴に嘘を付いてまで近付いてきたんだからな。』
(なるほど…)
『それでも疑えなかったのは、アイツが正しい道を教えてくれたからだ。
良い事の影に、悪い事と矛盾が隠れてたってわけだ。』
(…よくそんなことに気付けたね。)
私は本気で感心した。
同じ自分なのに、守は気付けて私は気付けないなんて…
『多分、これは俺が冷静に第三者の視点から考えられたから気付けたんだ。
俺が瑠間の立場だったら気付けなかったし、瑠間が俺の立場だったら気付いてたはずだ。だから気にすんな。』
立場の違いか…
(どうする?皆にこのことを話してみる?)
『そうだな。実はアイツが悪い奴で、油断して近付いたところを…なんてなったらやばいしな。
一応話しておけ。』
(了解。)
その後、5人に矛盾のことを話した。
話が終わると、時間が時間なのでその場で休む事になった。
山の頂上から見る星が綺麗だった…って、こう言うと野宿みたいだね。障壁ハウスで眠ったのに。
翌朝になって、下山を始めた私たち。
残りは半分。この調子ならすぐに降りれるよ!
…あれ?そう言えば噂話も半分?
どっちも本当なら、今までの2つと同じくらい厄介そうな噂だけど…どっちも嘘っていうことは無いのかな?
次回、2つの噂の真相?下山の行方は!?
『…何考えてるんだ?』
(いつかの守の真似。
次回予告っぽいでしょ?)
『ってか、次回予告そのものだな。
なんで突然そんなことを?』
(頭の中が暇だから。
景色がほとんど変わらないし…)
『変わってるだろ。微々たるものかもしれないが。
もっと登山を楽しめよ、下りてるけど。』
(そんなこと言われても…
散々鍛えられたおかげで疲れはしないけど、ただの作業にしかなってないし。つまんないもん。)
『そこまで言うなら何も言えないな…
まあ、せめて魔物とか噂とかには気をつけて進めよ。さっき瑠間も言ったが、噂は2つも残ってるんだからな。』
(わかってるよ。)
守との会話を終え、更に進んでいく。その歩みに疲れは無い。
昨晩の睡眠で疲れは取れた。よっぽど良く眠ってたみたいで、目が覚めたのは一番最後になったけど。
「瑠間?ボーっとしてたら落ちるよ?」
「きゃあ!?」
足元を良く見ると、急な坂になっていた。
あと少し気付くのが遅れていたら、坂を転がっていく羽目になっていただろう。
「全く…気をつけてよ?」
「う、うん…」
魔物や噂以前に、山道に気をつけないと…
より一層気を引き締めつつ、坂道を下っていった。




