第四百三十五話 大事だから三回被せた?2つ目の噂話!?
一話目。
「…ん?」
目を開けてみると、視界が揺れていた。
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
休憩中、障壁を敷いてその上で横になっていた。
少しだけ休む気だったんだけど…私は自分が思っていた以上に疲れていたらしい。
「おお、目が覚めたか。」
その声は上から聞こえた。
って、そう言えば宙に浮いてたような…
と思って上を見ると、
「よっ!」
「うわあ!?」
フレンの顔がドアップで映った。
これどういう状況なの!?
「おっと、お姫様のお目覚めね。」
「お姫様…?」
『まさか…』
(まさか…)
まさかと思って周りを良く見ると…
…俗に言うお姫様抱っこと言うものをされていた。
『おい瑠間!
至急早く下りろ!大至急だ!!』
(意味が3回も被ってるよ…)
とはいえ、早く降りたいのは私も同じだ。恥ずかしいことこの上ない。
「フレン、降ろして。」
「……断る、と言ったら?」
「『え?』」
何故断るし。
『その時は、一回眠ってくれ。
そうしたら、俺が表に出てフレンを殴る。』
(分かった。そのまま伝えるね。)
「もし断ったら、守が表に出てフレンを殴るって。」
「うえぇ、マジかよ…
分かった分かった、断るってのは冗談だからそこまで気にすんな。」
と言って、フレンは私を降ろす。
「冗談、か…
本当かな~?」
あまり嘘をついていたような様子は無かったけど、ちゃんと降ろしてくれたから不問にしておこう。
「ほ、本当だから守に代わって殴るのは止めてくれ。マジで。」
「はいはい。」
と返事をして、その場で数回ジャンプしてみる。
一度眠っただけあって、体力は回復している。
「私はもう大丈夫、早く行こう。」
一泊していると言うのに、まだこの山の頂上には着いていない。よほど高い山らしい。
今日頂上に着いたとしても、下山で更に一泊しなきゃならないことを考えると、急がないといけないかもしれない。
この山を上り始める前にフレンが言った噂話…1つはあの鬼だとしても、まだ3つも残ってる。
私は気を引き締めて、また先頭を歩き始めた。
おかしい…
頂上が全く見えてこない。しかも霧も出てきた。
「ここ、さっきも通った気がするんですが…」
「言われてみればそうかもしれないな…」
しかも、さっきから同じような道しか通っていない。まるで同じ風景がループしているような…
「人か?」
「「「「「「!?」」」」」」
そんな時、後ろから人の声がした。
「誰!?」
「そんなに警戒するな、オイラも迷ってるんだ。」
とは言われても、怪しさが完全に払拭されるわけじゃない。
こんな山の中に1人で歩いてるなんてありえない。危険な魔物が居る上、怪しい噂話もあると言うのに。
「それより、俺達に何の用だ?
何か用があって話しかけてきたんだろ?」
「いや~、オイラ以外にも人が居るなんて珍しいな~って思ってな。」
「そりゃ、こんな山の中にわざわざ来る奴なんてそうそういないだろ。」
「だから珍しいって言ってるんだよ。」
「む…」
調子崩されるね…
「で、あんたらはこんな山の中に何の用だ?」
「山を越えて次の町に行こうと思ってな。」
「へぇ~、それは大変だな。
でも、その道を通ってちゃ一生山を越えられないぞ?」
と言って、突然出てきた人が指を指したのはこれから行こうとしていた道。
その道には見覚えがあった。
「何?それはどういうことだ?」
「実はこの山、その道を通ると戻されるんだ。
ちょうどこの場所に。
だから、あんたらは今ちょうど戻ってきたって所じゃないのか?」
戻される…これで2つ目の本当の噂話が分かった。となると、私たちはずっと戻され続けてたってことか…
この道を通ると、また戻される。でも…
「他の道なんてあるの?
見たところ、それ以外に道が無いけど…」
「まあ、初見で気付くのは難しいからしゃーない。
よく周りを見てくれよ。他のところとはちょっと違うところがあるはずだからさ。」
言われるままに皆でその場所を探す。
すると、少しだけ草むらの草が低くなっている場所があることに気付いた。
周りより低い草むらは、道のように先へ先へと続いていた。
「もしかしてあれ?」
「そうそう、その道!」
「へぇ~…本当にわかりずらいわね。」
「じゃあ、オイラはこれで。」
「教えてくれてありがとな!」
「いいっていいって!」
と言って、その人は名乗りもせずにどこかへ行った。
怪しいと思ってたけど、良い人だったらしい。疑って悪かったかな…




