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第四百三十話 敵は自分の中に?こんな時に通じ合うな!?

一話目。

 翌日。

 俺たちは村を出発したのだが…


「一回食ってみろって。多分うまいからさ~。」


「やかましい!例えうまくてもそんなもん食えるか!」


 俺はあることでフレンともめていた。

 原因はさっき俺が見つけてしまい、フレンが手に持っている木の実だ。

 俺はかたくなにその木の実を食うことを拒んでいるのだが、それでもなおフレンは食え食えと言ってくる。

 なんでこんなところにあるんだよ…ティエスの実が。

 しばらく歩いていたら、偶然ティエスの実がなっている木を見つけた。

 レインがそれに気付き、記憶を失った経緯とティエスの実の効果を話すと…フレンがそれに食いついたと言うわけだ。


「いや、だって守は男なんだろ?男でその顔なんだろ?

 なら、女になればスゲー美人の出来上がりだぞ?」


「うるせーよ!」


 もう嫌なくらいなったからいいっての!

 性別が変わって最初の最初で美人になんてなりたくないって思ったんだぞ?能力を使ったりするわけでもないのになんでわざわざ…

 ちなみに、俺が男であることは俺とタカミをあったときの事を話していた時に消がさっき言った。

 それまで俺は女だと思われていたらしい。余計なことを言いやがって…

 …しかし、逆に考えれば消が言わなければ俺はずっと女だと思われてたんだよな。その辺は感謝したいところだが…

 タイミングが悪すぎるだろ!せめて次の町に着いたときとかさ…


『守、食べて。』


(え?

 お前もか!?)


 敵は自分の中に存在していたと言うわけか…


『たまには私も表に出たい。最近は守しか表に出てなかったじゃん。』


(まあ、それに関してはすまないとは思うが…

 二重人格の説明がメンドクサイし、そもそも信じるかどうかも分からないだろ?)


『説明が楽しいんじゃないの…?

 とにかく、その説明は私がするよ。

 それで、ティエスの実を食べて気絶した時に代わろう。

 寝たときに任意で変えられるなら、気絶でも変えられるって。』


 始めるまではメンドクサイと思うけど、始めてからは楽しい事ってあるじゃん。要はそれだ。

 瑠間が言ったとおり、最近は眠ったときに任意でどちらが表に出るかを決められるようになっていた。

 それを利用して、二度寝という裏技を使わずに表に出す人格を俺にしていたんだが…

 さっき俺が言った理由により、瑠間を表に出す事ができなかった。だから俺だってたまには瑠間を表に出したいとは思っていた。

 瑠間にとって、フレンの提案(悪ふざけ)は渡りに船だったということか。

 瑠間は女寄りの人格だから男の体より女の体の方がしっくり来るらしいし。


(…じゃあ、こっちも軽く説明してから食う。その後はまかせた。)


『了解。』


「フレン、その木の実を渡せ。お前の望みどおり食ってやる。」


「え?マジで?やったぜ!」


「だがその前に、一つだけ言っておく事がある。

 これを食って目が覚めたときの俺は俺じゃない。それを忘れるな。」


『…それが説明?

 なんかかっこつけただけな気が…』


(一応説明だろ?

 …確かに言ってみたかったってのもあるが。じゃあ食うぞ。)


 フレンからティエスの実を受け取り、それにかぶりつく。

 一個全て食べ終えると、俺の意識は無くなった。







「久々の外だね。」


(俺は久々の意識の中だな。)


 目を開けると、タカミを除く4人は驚いた顔になっていた。


「…確認するけど、アンタは瑠間だよね?」


「そう、私は瑠間。」


「「「「私!?」」」」


「雰囲気どころか一人称まで変わった!?」


「一体守に何が…」


「それについて説明するね。

 実は……」








「なんでそんなことを黙ってたんだよ…」


「理由はさっき言ったとおり、信じてくれるかどうか分からなかったから」

「違う。そうじゃない。」


「そうですよ、水臭い。」


「そうじゃない…」


「「「「「え?」」」」」


 他の理由があるの?


「なんで…なんで瑠間の人格を最初から出さなかったんだ!

 そっちの方が可愛いだろ!?」


「「「「「……」」」」」


 誰もが冷めた目でフレンを見つめている。

 そんな理由かい、と。


「な、なんだその目は…

 止めろ!俺をそんな目で見るな!!」


「いや、だって…な?」


「ああ…」


「何夫婦で通じ合ってんだよ!こんな時に通じ合うな!!」


「いや、だって…な?」


「ああ…」


「繰り返すな!」


「いや、だって」

「グルルルルル…」


「いくらそんな反応をされたからって、魔物みたいな声で遮らなくても…」


「今のは俺じゃねえよ!」


 無限ループになりそうだった夫婦の反応。

 それを断ち切ったのは、紛れも無く魔物の鳴き声だった。

 その鳴き声が聞こえてきた方向に障壁を伸ばしてどこか遠くに飛ばす。

 遠ざかっていく魔物を気配で確認して、念を入れて目視でも確認した。

 やはり、魔物はいない…あるのは、


「白い障壁…?」


 私の障壁は黒いはず…

 平行世界の私でもないのに、なんで?

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