第四百二十七話 どっちも悪い言い方?脅威でもなんでもない!?
一話目。
何故だ…何故今回もなかなか話が思いつかなかった…
な心境です。
「…守、さっきからどうしたの?
ころころ表情変えてるけど…魔物の方もなんか喋ってるし。
それと何か関係があるの?」
起き上がった魔物の横からタカミ達が来た。
そう言えば、この魔物はずっと心を読んで話してたからタカミ達は俺が何を伝えたのかは分からないのか。
「なるほど。
というより、オマエが喋れば良かった話だろ。」
いや、だって心が読める相手とは考えて会話するのに慣れちまったし。
「とにかく、そっちにも色々とある事は分かった。」
「分かってくれて何よりだ。
それで、一つ訊きたいんだが…
お前と洞窟の外をうろつくやたらでかいカメレオンとはどんな関係があるんだ?」
「ムゥ?それは決まっているだろう。
部下とボスだ。」
………
え?
「ということは何か?
お前が部下のカメレオンに命令して人を攫わせて、攫った人間をその檻に閉じ込めたってことか?」
「何故分かった?」
カメレオンは、麻里やレイン、俺も捕まえようとはしたが、そのまま食うことも殺す事もしなかった。
そして、捕まったレインはそのまま攫われて目の前の檻の中に居る。もうここまで分かればあとはお察しと言ったところだろう。
「…なかなか鋭いようだな。
お前の推測どおり、部下に人攫いを頼んだのも、攫ってきた人間をその檻に入れるように行ったのもオイラだ。」
「何故そんなことをした?」
魔物は少し考える様子を見せ、話す。
「………それは言えない。
言ったらオイラ達は」
「ヨウ!元気にしてるかぁ?」
「!」
洞窟の入り口から声が聞こえた。
その声は明らかに人間のものではない。気配から考えても魔物だろう。
「さっき人間がここに入ってきたのを見てな…
部下も貸してやってってのに、まさか人間に助けを求めようなんざ考えてねえか…それをわざわざ見に来てやったぜぇ?」
やたら説明口調だな。
洞窟に入って来たのは人型のトカゲ。
その風貌は良く言えば小悪党、悪く言えば小物に見えた。
…どっちも悪く言ってる気がする。
「だ、誰が人間なんかと手を組むものか!
そんなことをしたところで、脆弱な人間がお前に適う訳が無い!!
それと、そんなに説明口調でなくとも分かっている!」
牛顔の魔物は、人トカゲに向かって無駄に威勢よく言い放つ。
「お前の察しの悪さはこれまでよっく見てきたからな…
こんくらいいわねえとわかんねえかと思ってわざわざ説明口調にしてんだよ。」
「なんだと!?」
…なんか空気になってきたな。
しかし、この二匹が口論している間に、こっそり檻から捕まってる奴を助ける事も出来そうだ。
「おい、ちゃっかり開放しようとすんなよ?」
ゲッ、ばれた。
「ハァ…
そりゃ、人間誰だって空気にされたら檻に捕まってる人たちを助けようとするだろ?」
「「しねえよ!」」
「えー?」
『そもそも状況が特殊すぎるって!』
だろうな。
「さてと、お前は特に何も画策してなかったみたいだな。
じゃーそこに居る人間を片付けるとするか…」
おっと、矛先がこっちに向いたか。
「そう簡単に勝てると思うなよ?
……タカミ、頼んだ。」
言い返してから小声でタカミに頼む。
普段なら1人でも戦いに行くのだが、チョップのダメージが大きい。
「えー?
頼むくらいなら、あんな大見得張らないでくれる?」
「言い返した直後に思い出したんだよ。悪いな。」
もっと早く思い出していればあんな事は言ってない。
「…今回は私も悪いからなんとかするけど、次は無いからね?」
「わかってる。」
タカミはチョップの件に引け目を感じているらしく、一応は了承してくれた。
…何かあって次も頼む必要が出たらどうしよう。
その時は後で埋め合わせを検討するか。検討してくれたら。
「まずはお前から行け!」
「オオォォォォ!!」
牛顔の魔物は、大声で叫びながら突進してくる。図体がでかいので迫力だけはあるな。
普通ならその突進も脅威になりえるのだろうが…
「はいよっと。」
バシィン!
「モォ!?」
ズゥゥン…
タカミにとっては脅威でもなんでもない。ただちょっと強い勢いでぶつかりに来た、それだけだ。
「………へ?」
「……手ごたえが無いわね~。
んで?アンタはどうなの?強いの?」
「………あ~…嘘だろ?」
打つ手無しかい。
その後、人トカゲと牛顔はあっさりと御用となった。
牛顔は人トカゲに部下を貸して人攫いをさせていて、牛顔はそれにしぶしぶ従っていたとか。
人トカゲの動機は…簡単に言えばなんとなくだな。
奴曰く、人間が魔物を見たら殺しに来るのと同じだとか。別に人間の方も魔物を見たら即駆除とか実際にしてる奴はごく一部らしいけどな。大体逃げる。
捕まっていた人々は解放され、レインも元の村へと戻っていった。
あんだけ人に無理させといてこんな終わり方かよ。何かあってほしかったわけじゃないが、これはこれでちょっとな~…




