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第四百二十二話 誰に声を掛けた?恐るべき俊太の力!?

一話目。

「…!」


 村についた瞬間、キオの様子に変化が起きた。


「どうした?」


「以前この風景を見ていたような気が…」


 やっとキオの記憶の手がかりを見つけられそうだ。

 記憶喪失の状態になった時、こういった引っかかりが重要なことを過去の経験で知っている俺はそう思った。

 俺の場合は結構サクサク取り戻していたが…それは皆が居てくれたおかげだろう。

 記憶喪失前にも会っていた人物が、複数人そばに居てくれたから。

 しかし、キオは1人だけだった。だから俺のときよりも記憶が戻るのが遅い。個人差もあるだろうが。


「おーい!レインー!」


 誰かがレインとか言う奴に呼びかけている。

 普通なら聞き流すところだが、気配で声の主の注意はこちらに向いている事が分かったので気に留めていた。

 俺たちの向こうには誰も居ないしな。


「探したんだぞ?一体どこに行ってたんだよ…」


「え!?」


 呼びかけた奴が肩に手を置いたのは、キオだった。


「なんでそんなに驚く。見つかったとか言っても驚きすぎだろ?

 お前、数日前に何があったんだよ。いきなり何も言わずに居なくなるから心配したんだぞ?」


「え?え?」


 キオは次々と発せられる言葉に戸惑ってばかりだ。


「……本当にどうしたんだ?」


 ここで、キオの知り合いがキオの様子がおかしいことに気付く。


「アンタとこの人がどんな関係かは知らないけど、この人は今記憶が無いんだ。

 だからアンタの事は…」


「…嘘だ。

 嘘だよな?なあレイン、嘘だろ?」


「すいません…」


「……」


 申し訳なさそうなキオ。

 その様子を見たキオの知り合いは、泣きそうな表情でうなだれた。

 その様子を見ていた俺たちもまた、雰囲気が暗くなった。






 キオの元の名前は、レインと言うらしい。

 あと、さっき声を掛けてきたのはフレン。レインの友達だとか。


「で、レインはティエスの実とか言うやつを2つ食べたせいで記憶喪失になった…そう言うわけだな?」


「そうだ。本人はそれすら覚えてないらしいがな…」


 キオ…改めレインの顔を見て言う。その表情はまだ暗いままだ。

 レインだけじゃない。俺たち4人も、フレンを始めとするレインの知り合いもだ。

 ここはレインの故郷で間違いない。レインが記憶喪失になって帰ってきたと聞いて、レインを知っている者が少なくない数集まってきたからな。

 そして今、レインを知っているものはここ…フレンの家に集まっている。


「なあ、この部屋を見て何も思い出さないか?

 よくここには来てたんだ。だから…」


「…いえ、何も…」


 フレンが訊くが、レインは何も思い出せないらしい。


「そうか…本当に、何も思い出せないのか?」


「……」


 沈黙は肯定の意を表していた。


「そうか…」


 これほど俊太が居て欲しいと思ったことはあっただろうか。

 もし俊太がいたら、こんな重苦しい雰囲気でもぶち壊すような一言でこの場を和ませてくれるだろうに…

 俺にもシリアスブレイカーの力があれば…


『あんなのが二人も居たら困るよ。』


 言われてみればそうだ。

 もし俊太が二人居たら、迷惑どころではなかっただろう。

 想像するだけでも大変そうだ。


「…フッ。」


「守?なんでこんな状況で笑ってるの?」


 …あ。

 しまった。噴出してた。

 周りを見ると、皆ジト目で俺を見ていた。


「悪い悪い、不謹慎な事は分かってるんだが…

 もし俊太が2人いたら大変そうだな~と。」


「はあ?

 そりゃ大変そうだけど…なんでそんな考えに至ったの?」


「この場に俊太が居たら、この重苦しい雰囲気なんて壊されてたのにな~と…」


「俊太のことを知ってて俊太のことを期待するなんてね…」


 ある意味アイツの長所だしな。


「なあ、その俊太って奴は何なんだ?この雰囲気をなんとかするなんて…」


「ああ、俊太ってのは俺の親友の1人で…」


 その後は俊太の説明が始まった。

 今まであった俊太関連の事件、武勇伝(笑)を話している内に、この場に漂っていた重苦しさが払拭されていった。

 その場に居なくても場を盛り上げるとは…シリアスブレイカー俊太、恐るべし。

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