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第四百二十一話 視界はぶれぶれ?名前決定!?

二話目。

 消の表情と威圧が、俺のとあるトラウマを想起させる。

 震えが止まらない。味方のはずなのに、今にもこちらに飛び掛ってきそうだと思ってしまう。

 威圧を向けられていない俺ですらこれだ。当の巨大カメレオンは…


「………」


 ガタガタと震え、捕まえていた麻里を放した。


「消!」


 消の威圧をものともせず、麻里は消に抱きつく。

 得体の知れないものに捕まったんだ。その恐怖は小さくないだろう。


「俺の嫁を恐がらせたな?

 その罪は麻里を開放したくらいじゃ洗い流せねえぞ…?」


 消は手を前に出す。

 その手の少し前で白い光が集まり、巨大化していく。


「消えろ。」


 その声が聞こえた瞬間、カメレオンは消の手から放たれた光に飲み込まれた。

 光が収まると、そこにはカメレオンがいた形跡すらも無かった。







「麻里、大丈夫か?」


「もちろん…ちょっとつかまれただけだ。」


 俺の目の前では夫婦の心温まる場面が繰り広げられているようだが、俺にとっては他人事でしかない。

 さっきの消を見てから震えが止まらない。ろくに思考も出来ない。


「守、アンタ大丈夫?」


「そういうタカミこそ、かなり震えてるように見えるが?」


 タカミだけじゃなく、周りの風景ですら震えている。

 消の恐ろしさに空気すら震えたというわけか…


「アンタが震えてるから視界がぶれぶれなだけでしょ…」


 あ、俺が震えてるだけか。


「本当に大丈夫?」


「大丈夫じゃない。大問題だ。」


 ここで強がってもみっともないだけだ。

 実際、立ってるのが不思議なくらいで、今すぐにでも道の隅っこで体育座りしたい。


『じゃあすれば…?』


 瑠間の声も震えている。

 記憶を共有しているので、トラウマも共有しているらしい。

 …しかし。

 あの時の消の威圧感…まるで、


「まるで、父さんみたいだったな…」


 まさか。

 いや、そんなはずはない。父さんは今も現代で仕事をしているはず…

 …ちょっと待った。俺、いきなり居なくなったよな?

 なんか今までは事情を説明したら今回だけだぞの繰り返しで許してもらえたが…今度こそ駄目か?


「ちょ、守!?震えがますます…」


 うわ、なんだ?地震か?

 さっきよりも視界が揺れてやがる。ただでさえ震えてんのになんで更に揺らすんだよまったく。


「…あの夫婦、守の事は全く気にも留めてないですよね…」


「そんなことはどうでもいいから精神分析手伝って!

 こんなことなら、守の母さんから精神分析チョップを伝授してもらうんだったー!!」








「直った?」


「ああ、バッチリだ。」


 その後、2人きりモードが終わった夫婦が震える俺に気付き、麻里が放ったチョップが俺に落ち着きを取り戻させた。

 間違いなくあのチョップは精神分析チョップ…母さんが過去にしたものと全く同じだった。

 麻里は母さんの知り合いで、精神分析チョップを教えてもらったのか?それとも、単なる偶然か?

 消の威圧感といい、この夫婦は謎が多いな。


「そろそろ次の村か。」


 地図を見る消が言った。

 もう次の村か。

 ……


「なあ、思ったんだが…」


「何?」


「記憶を無くした人とか、あの人とかっていつまでも言うのは不便じゃないか?」


 仕方が無いとは言え、記憶を無くした奴の名前が分からないのは本当に不便だ。


「まあ、そうだけど…」


 だから俺は思った。

 本当の名前が分からないなら、せめて…


「なら、コイツに仮の名前をつけようぜ。」


「え?そんなことしてもいいの?」


「もちろん、コイツが反対するならやめる。

 ただ、便宜上で良いし、記憶が戻ったらそっちの名前で呼ぶって条件ならどうだ?」


「それならいいですよ。」


 よし、許可は取った。

 問題は、どう名前をつけるか…


「キオ、というのはどうでしょうか?

 “記憶”から取ったんですが、よっぽど変な名前を付けられるよりは良いかなと…」


 …本人から意見が来るとは思ってなかった。

 だが、悪くない。


「確かにそうだな。」


「いいんじゃないか?」


「いいと思う。」


「もちろん私もいいけど…

 私達が変な名前をつけると思ってたの?」


「え、あ、それは…」


 おおう、痛いところを突くな。見事に返答に困ってるじゃないか。


「まあまあ、言ってやるなって。」


「でも、なんか信用されてないみたいでさ~…」


 ふてくされた顔をするタカミ。

 その気持ちは分からんでもないが、向こうは記憶喪失。

 何を頼ればいいかも分からない状態なんだし、仕方ない。


「それより、もう村も近いぞ。今度こそお前…キオの故郷だったらいいな。」


「はい。」


 前の町…図書館があった町は、キオの故郷ではなかった。

 キオの顔に見覚えはないかと町人に聞いても、知らない以外の返答は無かった。

 だからこそこうしてまた次の村に向かっているわけだが…

 次の村には何が待ち受けるのか。そして、キオの記憶は無事戻るのか。

 俺は前者のことを考えつつ、後者のことは近い将来、そうなるように祈った。

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