第四十四話 ロボットは壊した?また幽霊が!?
バチ…バチ…
ロボットがバチバチと音を立てている。
ロボットは壊したのだ。踵を返し、皆のところに戻ろうとした、そのときだった。
「お…主…」
この声はロボットだ。俺は驚いて振り返ると、そこにはやはり壊れたロボットが転がっているだけだった。
俺に壊されたロボットは、口を開く。
「お…主の…名前は…なんだ?わらわは…機密保持…の…ため…大きな…損傷を受けたら…そこでメモリを全て削除し…機能を停止される…ようになっている…お主らを襲うことは無い…が、最後に…聞かせて欲しいのだ。わらわは…誰に破壊されたのかをな…」
ロボットは途切れ途切れになりつつも、俺に訊いてきた。
「守。俺の名前は、高壁守だ。」
俺は答える。断る理由なんて無い。
「守…か…ありが…とう……な………名乗って…くれて…………」
バチ…バチ……
ロボットは動かなくなった。ショートの音も止まった。完全に機能を停止したのだろう。
「「「「「「「『守!』」」」」」」」
皆が駆け寄ってきた。
「…おう。無事に終わったぜ…少し疲れたがな…」
「ああ!お前はよくやってくれたよ!」
俊太…お前が元凶なんだが…まあ、いいか。
「ええ!」
ギーナもよくやったよ。
「そうよ!」
…そういえば光どころか俺の親友は誰も…まあ、しょうがないか。
『全く、見ててハラハラしたぞ…』
ハラハラする要素ってあったっけ?そこまで危なくなかったんだが…
そのあとも皆がいろいろと激励してくれた。そんなときだった。
「おや?あのロボットは壊れてしもうたのかい?」
老婆の声が部屋に響いたのは。しかもその老婆は…
「透けてる…?」
透けている。先ほどのおじいさんの幽霊のように。そういえばあのおじいさんちょっと透けてたな。
「ええ、だって幽霊だもの。」
老婆は笑いながら言う。
「まさか、お前は太郎の…」
「太郎?なんでうちの孫の名前を知っているんだい?」
俺は太郎のおばあさんだと思っていたが、当たりだったらしい。
「それは守が俺の友達だからだよ、ばあちゃん。」
太郎が出てくる。
「太郎?お前が…大きくなったねぇ…」
「ばあちゃん、報復なんて止めてよ。俺はあの二人のおかげで…」
太郎がそう言うと同時に、老婆の雰囲気が変わる。
「お前になにがわかるってんだい!息子達が殺されて私は…私は!」
怒っている。老婆は自分の孫ですら容赦が無いほどに。
「お前もわからんのか!あの男もだったが、お前もなのか太郎!お前は両親を殺されたんだぞ!」
「…でも!その俺の両親を殺した奴らのおかげで!俺は今まで!何不自由なく!生きてこれたんだ!」
激しい怒りをむき出しにする老婆に、太郎が叫ぶ。
「…あやつらが育てた…?太郎を?今まで?嘘だろう太郎…」
「本当だ。」
間をおかずに太郎は答えた。
「…そうかい…なら…お前もさっきの男のように恐怖するといいわ!」
「!?」
さっきの男?恐怖?それってまさか…
「やめろ!」
俺の叫びもむなしく、老婆から出た黒いもやのようなものが、かなりの勢いで太郎に流れ込んだ。




