第四百十九話 なんてなると思ったか?消の頼み事!?
二話目。
明日は数年ぶりのカラオケに行って来ます。
果たして、作者の声帯は無事で済むのか…
それ以前に何を歌えばいいのか分からない。ブランクがでかすぎる。
翌日。
俺たちはまた図書館に入り浸り、世界を渡る方法を探していた。
「守、一つ気付いたんだけど…」
「なんだ?」
ひたすら本のページをめくる作業に没頭していると、タカミが話しかけてきた。
何か書いてあったのか?
「記憶が無いって言った人だけど…あの人はティエスの実を2つ食べた結果ああなったんだよね?」
「そうだが…それが?」
やけにもったいぶるな。
「なら、あの近くにティエスの実があるってことじゃ…」
「……あ。
なんてなると思ったか?」
「え?」
「残念だが、あの近くではティエスの実なんて見つからなかった。
リカバの実を探してたときに探してたんだから間違いない。森中を探し回ったからな。」
そう。
アイツの近くに食べ残しが転がっていたというのに、ティエスの実は見つからなかった。
既に木の実が無くなったのか、元々無かったのかは分からないが…どちらにせよあの森では期待できない。
「じゃあ、あの木の実は…」
「あれが最後の2個とか、あの2個を取った後に誰かが取った、とかだろうな。
どの道、探すにしろ別のところじゃなきゃいけないってことだ。」
俺は作業を再開する。
魔法で体感時間を延ばして調べているが、なかなか情報が…
…ん~…ここで本を見てても状況は変わりそうに無いな…
「……守にいくつか訊きたいことがあるんだが…」
「なんだ?」
今度は消か。
「なんでそんなに早いんだ?読むスピードが尋常じゃないぞ?」
「魔法の力。」
「そ、そうか…
じゃあもう一つ。守は俺達の世界の人間なんだよな?」
「そうだが…」
「なら、なんで魔物の存在とか、魔法の存在とかを知ってたんだ?」
「そりゃ、一回異世界に行ったから…」
「ここからが本題だ。
一回異世界に行って、どうやって戻ってきた?」
…なるほど。
確かに良い線をいく考えだ。
しかし、俺は今使えない能力の産物によって行き来していた。
だからそれを考えてもどうしようもない。
そう、あれは思えば夏休みの初日。いきなりフォルフに追いかけられ…
『ちょっと待って、その時はどうやって帰ってきたんだっけ?』
……そうか。
あの時は機能と性質を付ける能力なんて無かった。
だからどうやって帰るかをモットーにして動いていたわけだし、その結果帰ることが出来た。
「ありがとな、消。
おかげで帰る手段が思いついた。」
「おお!本当か!?」
「本当かい!?」
夫婦は図書館だというのに大声を上げて喜ぶ。
あ、従業員が来た。怒られるなコリャ。
「…でも、そしたらこの人が…」
問題はそれだ。
記憶を無くし、誰に頼ればいいのかも分からないコイツをどうするか…
俺たちの世界に連れて行く、なんてしたら最悪一生故郷に帰れなくなってしまう。世界を移動する手段が無いからな。
一回目帰った時、ギーナ達も同じ方法を試したが帰る事は出来なかった。
その後世界の意思に頼ってなんとか帰れたが。
つまり、世界の意思の助力が無い以上、こちらの世界に連れて行くことは出来ても帰す事は出来ない。一方通行だ。
「まずいな…そのことも考えないと…
とはいえ、いつまでもこの世界にいたら仕事が…
あ、スイマセン。もう騒ぎません。」
消が従業員に怒られながら考える。器用だな。
それにしても…仕事?
まさか、今日も昨日も無断欠勤……
…オワタ。
「まさか、今日と昨日は無断欠勤?」
タカミも同じことを思ったらしく、消に訊いた。
「いや、俺達は一昨日から一週間旅行に行く予定だったから一週間の有給休暇をとっていたんだが…
だから謝ってるじゃないですか。反省もしてるのでお引取り下さい。
その準備中に世界の歪みとか言うのに吸い込まれてな。」
弁明しながら事情を話す。
弁明するか事情を話すかどっちかにしろよ。
「それは災難だったわね…せっかく旅行に行くところだったのに。」
となると、あと4日…今日を含めると5日か。
「どの道今更旅行なんて行けないし、休みもまだある。
だから、休みを取った日まではこいつの記憶を取り戻す旅を続けようと思う。麻里もいいか?」
「ええ、全く同じことを考えてたからね…むしろ、こっちから言おうと思ってたところだったよ。」
タカミと記憶を無くしたアイツは安堵の表情になる。
…マジで名前が聞きたい。いつぞやに3日も名前を知らずに過ごしてた事があったが。
「それで、守とタカミに一つ頼みたい事がある。」
「何?」
頼む?
何を頼むというんだ?
「俺と麻里を鍛えてくれ!!」
……鍛える?
俺たちが?2人を?




