第四百十八話 決心は固い?突然の次回予告!?
一話目。
「止めた方が良い。危険だ。」
町の外には魔物がいるし、そもそも町の中も安全じゃない。
記憶が無い今、魔物と遭遇しても、悪い奴に絡まれても対抗手段が無い。
危険すぎる。
「危険なんて承知の上。ここで寝ていても記憶が戻るわけじゃない。」
確かにそれもそうかもしれないし、その気持ちも分かる。
とは言っても…
「…分かった。アンタを連れて行く。
せっかく助けたのに、変なところで野垂れ死になんてされたら気分が悪いからね。」
「いいのか?タカミもお前も。」
「もちろん。駄目だったら最初から連れて行けとは言いません。」
「私も良い。
この人が記憶を取り戻すのを手伝おうと思う。
その代わり、絶対取り戻すのよ?」
「わかってます。」
2人の決心は固いようだ。
なら、俺もこいつの動向を認めて、記憶を取り戻すのを手伝おう。
「なら、俺も認める。
消も麻里も良いな?」
「ああ、麻里も同じだ。」
「…それより、良いのかい?」
「……何がだ?」
「あの2人、良い感じになっちゃってるけど。
嫉妬とかはしないのかい?」
「………は?
なんで俺がタカミに嫉妬しなきゃいけないんだ?」
「捉えた嫉妬の対象を間違えているが…
まあ、ストレートに言うとタカミが取られて良いのかって話だ。」
……え?
つまり、どういうことだ?
『守って鈍感だっけ?
まあ、そんな鈍感のために説明させてもらうと、守はタカミの彼氏だと思われてるってこと。』
……俺はタカミをそういう対象として見たこと無いんだが。
なるほど、だから気付けなかったのか…って、なんでやねん!?
「勝手に誤解すんな!
男と女が一緒にいるからといって必ずしも恋仲だというのは大間違いだ!!
実際タカミとは友達ってだけだし、そこから先は何も無いからな!?」
「…へー。」
何だその反応。
「必死だねぇ~。」
なんかスゲーニヤニヤしてる。
これ絶対誤解が深まったよな?なんであんなに焦ったし。
『あ~あ…』
(あ~あ、じゃねーよ。)
もうどうでも良いや…こんな誤解なんて勝手に解けるだろうしな。
…更に誤解が深まるような事が無ければ。
そんなこんなで、記憶を失った人もついてくる事になった。名前が分かればいいのにな。
とりあえず、俺たちはさっき引き返してきた道へ戻り、次の町へ進んでいた。
戻るのに進むとはこれいかに。
「そこがアンタが倒れてた場所なんだけど…何か思い出さない?」
いつの間にかアイツが倒れていた場所に着いたようだ。
「……何も…」
必死に思い出そうとしているようだが、思い出せないらしい。
「駄目か…」
「もしかして、とは思ったんだけどねえ…」
町から出発する前、コイツが倒れていた場所に行ってみようという話になっていた。
だからわざわざ全く同じ道を引き返してみたんだが…
「まあ、記憶なんてゆっくり取り戻していけばいいさ。
そう難しく考えるな。」
「はい…」
これで記憶が戻らないなら、別の手段を探せば良い。
今コイツの記憶を取り戻すために出来る事は、故郷を探すために旅をすることだろう。
そう思った俺は、次の町へと足を進めた。
次の町に付いた俺たちは、町人からの情報収集により図書館があることを聞いた。
図書館には壁を覆いつくさんばかりの本があり、圧倒される俺たち。
果たして、俺たちはあの大量の本を攻略できるのか?
次回、本の攻略?鍵はタカミにあり!?お楽しみに。
『…何考えてるの?』
(いや、ちょっと次回予告風に振り返ってみただけだ。)
俺たちは今、第一町人から聞いた図書館に居る。
とある事情から異世界を渡る方法を探している、と記憶の無いアイツにも既に言ってある。
それはともかく…なんだこの本の量。どこから探せばいいのかさえわかんねーよ。
本には翻訳魔法が掛けられているので誰でも読める…と聞いたが、こっちは5人。この本の山を攻略するには少なすぎる人数だ。
せめて太郎達を連れてくる事ができれば…
『無いものねだりしても仕方ないし、早く探そう?
ほら、そのページは読み終わったんだから次のページ。』
瑠間の言うとおりなので、次のページをめくる。
現在進行形で本の攻略中。多すぎるからといって立ち止まっているわけにもいかないので、早速5人皆で調べている。
しかし、なかなか見つからないな…もう10冊目だって言うのに。
「そろそろ閉館の時間です。」
そんな中、図書館の従業員が俺たちに声を掛ける。
外を見ると既に暗くなっていた。どうやら今日はここまでらしい。
「誰か、良いのは見つかったか?俺は無い。」
「私も無いね…」
「私も。」
「同じく。」
「俺もだ。」
誰も良さそうなものは見つからなかったらしい。
仕方ないので、俺たちは速やかに図書館から出て行って障壁ハウスで眠った。




