第四百十七話 他人事とは思えない?決意の発言!?
一話目。
タイトルを
考えるのが
難しい
あと卒業式
近いと忙しい
…字余り過ぎる。
「あの倒れている人のそばに木の実の種と芯が残ってるだろ?
あれはさっき話したティエスの実のものだ。」
倒れているの人のそばにあったなら、それを食べた結果気絶したと考えるのが妥当だ。
外傷が無いというのも決め手の一つだが。
「…この人はまずいんじゃない?」
「何がだ?」
ティエスの実による気絶は一時的なもので、健康状態を損なう事はないはずだ。
だからまずいことは何も……いや、待った。
倒れているのは一人。落ちているティエスの実(食べ残し)は2つ。その他には何も…
……あ。
「そういうことか!
タカミはコイツを町まで連れて行ってくれ!俺たちは3人でリカバの実を探す!」
「了解!」
倒れているのは一人、落ちている食べ残しは2つ。その他には何も無い。
と言う事は、1人で2つ食べたと言う事になる。それもリカバの実無しで。
ティエスの実は感覚を空けて2つ目を食べなければ、体が持たないと以前聞いた。もし連続で食べたとなれば…!
「え?何?何が起きたんだい?」
「よく分からんが、とりあえずやばい事は分かった!
守、リカバの実って何だ!?」
「探しながら状況もあわせて説明する!
だからとりあえずついて来てくれ!」
指示されたタカミは倒れていた人を背負って町へと走り出し、俺たちはリカバの実を探すべく森の中へと入る。
リカバの実の特徴と、さっきタカミに運ばれた人の状況を説明しつつ探したものの、リカバの実が見つかる事は無かった。
「……」
「どうだ?状況は…!」
俺たちはタカミの気配を辿って病院に来た。
タカミが居る病室に行くと、そこにはさっき倒れていた人が居た。
上半身を起こしている事から目が覚めているのはわかる。しかし、その目に光は無かった。
俺は直感的に察した。まさかこいつは…
「守達も来たみたいね。
この人の容態だけど…あること以外は異常は無いし、至って健康。でも…」
一瞬表情を明るくしかけた俺たちだが、タカミが口に出した接続詞は逆接だった。
「…一切の記憶が無い。
話す事も出来たし、歩く事もできた。
けど、今目を覚ました以前の記憶が全く…」
予想は出来ていた。
俺が記憶を失ったとき、一度だけ鏡を見たことがある。
父さんに言われたとおりその目には光が無く、その死んだような表情はこの人間に通ずるものがあった。
原因は一つしかない。
「ティエスの実、か…」
体が持たないとは聞いていたが、実際に何が起こるかは聞いた事が無かった。
もしかすると記憶を失ったのは別の原因かもしれないが、他に異常が見られないならこれしか考えられない。
「……あの、あなたたちは誰ですか?」
記憶を失ったと言う人が聞いてくる。
「もしかして、記憶を無くす前の僕を知っているんですか?」
「俺達は森の中で気絶してるアンタを見つけただけだ。
いや、見つけたのは守だったから、何もしてなかったのかもな…」
「そんなことはないだろ。そいつを助けるためにリカバの実を探してくれたんだからな。」
「そうだよ、そんなに気を落とすんじゃないよ。」
「…そうだな。」
俯き始めた消の肩に手を置く麻里。
冷めているとは言っていたが、夫婦仲は完全に切れているわけではないらしいな。
「……皆、話があるんだけど…」
タカミが何かを決意したような表情で言う。
「なんだ?」
「3人は先に次の街に行ってて。
私はこの町に残る。」
……なんだって?
「何故だ?
そいつはこの町の人間かもしれないんだぞ?探せばそいつの知人に」
「この人、この町の人間じゃないらしいわ。
この病院の医者が言ってた。
「長年この町の医者をしてて、この町の人は皆顔なじみなんだが…
この人は見たことが無い。この町の人間ではないな。」
って。」
小さな地方の医者は、その地域の人との関わりが深いという話は聞いたことがある。全く怪我や病気にならない人間は居ないのだから。
その医者が言っているなら間違いは無いだろう。コイツは俺たちが向かっていた町の人間か、もしくは旅人の可能性が高い。
「それに、この人の記憶を取り戻すまで見てないと安心できない。
何も知らない状況で、何も知らない町に放り出されてる状況よ?気にならないわけが無いじゃない。
ましてや、そんな何も知らない町に連れてきたのは私。だったらなおさら放っておける訳ないじゃない…」
タカミの言葉はだんだん勢いがなくなっていった。
よほど自分を責めているらしい。
「…タカミが残るなら、俺も残る。」
「え?」
「タカミにコイツを連れて行けと指示したのは俺だ。
タカミが言った理論で行くと、俺にも責任がある。
それに、他人事に思えないんだよ。俺もこの前記憶が無くなってただろ?」
「あ…」
え?記憶なくなってたの?と騒いでいる夫婦をスルーし、じっとタカミを見据える。
「そこまで言われたら拒む事は出来ないわね。
そう言うことだから、しばらく旅は」
「なら、僕も行きます。」
「「「「え?」」」」
タカミの言葉を遮って、決意が感じられる声が聞こえた。
その声の主は…
「僕もその旅に同行します。」
記憶を無くした人だった。




