第四百十五話 野宿と呼べるのか?仕様ですから!?
二話目。
「もう日が暮れてきたな…」
俺たちはまだ森を抜けていない。
しかし、辺りはだんだん暗くなってきている。
暗い中歩くのは危険。旅の基本中の基本だ。
ましてや、戦闘面では期待できない夫婦も居る。暗いせいで気が付くのが遅れ、その間に2人が危険な目に遭ったら目も当てられない。
「じゃあ、この辺で野宿だな。」
「そうね。
って、アレは野宿って言う?」
タカミが言ってる事はもっともかもしれない。
障壁ハウスを創って泊まるのは本当に野宿と言えるのか。否、言えないだろう。
「確かに野宿じゃないな。ほい。」
俺が気の抜けた声をかけると、障壁ハウスが創られる。
スペースがあまり無いので一つしか作れなかったが、寝泊りするだけなら充分だろう。仕切りもあるし。
「……家が出来た?」
「しかも真っ黒…」
「早く入ってくれ。明日は早いぞ。」
驚いている夫婦を置いて障壁ハウスに入る。更に魔法でその中を照らす。
タカミも入った時点で慌てて夫婦も入ってきて、その日は眠って終わった。
翌朝。
森の中をしばらく歩き続け、ようやく町に着いた。
ちなみに、夜中に目が覚めてまた寝たので、表に出ているのは俺だ。
「やっと町か…
長かった。」
町、というのはそこにいるだけでも安心する。飛び出してくる魔物を警戒しなくても良いのだから。
だが、安心するはずの町についても、俺は落ち着けなかった。
『町に着いたのはいいけど、どうやって元の世界に帰るか…
それをなんとかしないと、旅なんてしてても意味無いよ。』
そう、俺はずっとそのことを考えていたのだ。
こんな当ても無くふらつく旅にはなんの意味も無い。
どうにかして帰る術を見つけなければ、俺はもちろん、タカミもこの夫婦も帰れない。
「世界を渡る術…それをこの町で調べてみるか。
童話でも言い伝えでも、根拠が無いものでも良い。だからとにかくその情報を集めよう。」
「そうね。」
「情報収集はばらけけた方がいいよな。
なら、俺と麻里で探すから、守とタカミも」
「待った。」
消の提案に待ったをかける。
ばらけた方が良いのは事実だが、その分け方には問題がある。
「あのな、お前ら2人は戦えるのか?」
「いざとなれば、いくらでも戦って」
「意気込むのはいいが、さっきの俺みたいな奴を何人も相手に出来るか?」
「……」
「もしかしたら人と戦うことになるかもしれないんだ。
それも、魔法やら能力やらを使ってきてもおかしくない。そうなったらお手上げだろ?
お前らが魔法も能力も使えないからといって、それに合わせたり手加減する奴はいないんだよ。」
多少厳しい言い方かもしれないが、これも2人のためだ。
年上だし、このくらいもっともな意見を言わないと納得しない。
してもそれは上辺だけ。年下の意見というのは大抵ないがしろにされるものだ。
「って訳で、全員で調べるぞ。いいな?」
「分かった…」
「それならしょうがないか…」
渋々だが、納得してくれたらしい。
『まずは本屋だね。そこなら伝説とかが書いてある本でもあるかもしれないし。』
(そうだな。)
瑠間の意見にのっとり、本屋を探すべく歩き始めた。
本屋は駄目だ。
こう思ったのは、本屋についてすぐのことだった。
俺たちは本屋に到着し、本棚に置かれている様々な本を見たのだが…
…文字が読めなかった。
どうやら、売られている本には翻訳魔法が掛かっていないらしい。
となると、異世界ドタバタ騒動記はタムが…後でお礼でも言っておこうか。
いや、あの本は二度と読みたくない…そんなトラウマを植えつけられたしな。むしろ呪詛でも呟いておくか?
『間を取って何も言わないでおこう。』
(それがいい。)
「ねえ守、翻訳魔法とか掛けられないの?」
「イメージが湧かない。」
俺たちがこの世界の文字を読めないことを察したのか、タカミが訊いてくる。
翻訳魔法が使えれば読めるだろうが、イメージが出来なければ魔法は使えない。だから無理だ。
「じゃあ、読めるのは私だけってことね。」
そうそう、読めるのは…って、え?
「タカミ、読めんの?」
「ええ、アバターはそう言う仕様みたい。
よく考えたら、あのゲームの中も遺跡の中とかは訳が分からない文字ばっかりだったし、何故かそれが読めたし…」
……マジでか。
「とりあえず…この辺が異世界関連ね。
異世界人への手紙、異世界に渡る方法~都市伝説まとめ~、異世界渡航の儀式…」
タカミは本のタイトルを次々に言っていく。
ってか、この世界にも都市伝説あるのか。世界が変わっても、人は人ってことなのか?
「あ、性別を変える方法っていうのもあるわね。」
…なんだと?




