第四百七話 総力戦開始?そろそろ来るか!?
二話目。
「守!障壁結晶で戦おう!」
「そうだな!」
ゆっくりと障壁結晶が現れる。
しかし、それは完全に剣の形を取った瞬間に消えた。
「俺の存在、忘れてないかな~?」
声の主はストーカー。
そう言えば、アイツの能力は認識した魔法と能力を打ち消すもの…
アレが居る限り、能力も魔法も…
「なら、アイツは俺が相手をする。」
「ルドが行くなら私も行くさ。
圧倒的にこっちの方が人数は上。なら、数の利の力を借りて複数人でかかっていっても文句は無いだろ。」
ルドとルーは魔法よりも肉弾戦の方が得意。
ストーカーにとっては相性が悪い事この上ない事だろう。
…あ、確かストーカーって短刀使ってなかったっけ?
まあその辺は2人がなんとかするだろう。あのストーカーが2対1をなんとかする技量を持ってるわけでもない。
それに、ストーカーが向こうの戦闘に集中すればこっちの魔法も能力も認識されることはない。
つまり、向こうが戦っている最中は魔法も能力も使えるということだ。
「…俺も忘れるな。」
「お前も加勢してくれるのか。ありがたい。」
二対二か…
悪くは無いけど、二人はタカミとの戦いで大分消耗している。
回復したとはいえ、全快している訳じゃない。私もだけど。
「俺達も手伝うぞ!」
「あまり期待はしないでね。私達は動けないから。」
俊太と光の声に頷く黄金人2人。
ルドとルーは魔法をあまり使わず、肉弾戦を得意としているためか皆より比較的回復が早い。
更に、他の皆より比較的ダメージは軽い。だから今戦おうとしている。
対して皆は、肉弾戦の経験が無いというわけでもないけど、二人に比べればやはり魔法などに頼っている。
ドン!
などと考えていると、ハリセンと大剣がぶつかる音がした。
「……さすが、ジュエリィツールとかって言う大層な名前で呼ばれてるだけあるわね。
アンタの力量はともかく、その剣が相手じゃ私1人じゃ厳しいかも。」
タカミもさっきの戦いで消耗している。
いくら強いと言っても、20人近くの相手をすれば疲れもするだろう。
「さりげなく俺をけなしているな。
それはともかく…一体あと何回俺の攻撃を耐えられるのだろうな?」
「くっ…」
「タカミ!」
タカミに駆け寄ったのはキャビだった。
キャビが魔法を使っているところを見た事は無いが、その身体能力は魔法の力が無くてもタカミと渡り合えるだけのものはある。
現にさっきの戦いでは、タカミ相手に守よりも時間を稼いでた。
「キャビ!?アンタもさっきのダメージが…」
「私の回復力、なめてもらっちゃ困る。」
キャビは既にお仕事モードになっている。
そんなキャビが頼もしく見えたのは、私だけじゃないはずだ。
「瑠間!早く戦ってくれ!
戦況を見るのもいいが、お前にも自分の戦いがあるだろ!!」
あ、そうだった。
守は私が回りを見ている間も、ずっと戦ってくれたらしい。
それも、2人を相手に1人で。
「ゴメン!じゃあ行くよ!」
私も守と戦っている2人と距離を縮め、今創った障壁結晶の剣で切りかかった。
「そこだ!」
「くっ!」
戦いが始まってしばらく。
私たちは劣勢を強いられていた。
「大丈夫か?瑠間?」
「うん、これくらいなんとも…うっ!」
負った傷は多い。
回復したとはいえ、戦いが始まって時点で体力は少ない状態だった。
唯一の救いは分身の術で守が片方の相手をしてくれてることだ。2対1だったらあっさり決着はついてた。
「無理をするな。
劣勢とはいえ、一応あいつらもダメージは負ってる。
ジリ貧は避けられないが、皆が居れば…」
その時、私達の体力は突然回復する。何故かと言うと…
「大丈夫ですか!?」
「負けるなよ!親友!なんか増えたけど!」
リセス達の魔法のおかげだ。
私たちには皆がついてる。これなら負けることは無い。
「厄介な…」
「どうする?
まずはあいつら倒すか?」
回復した私たちを見て、何も映っていない表情で物騒な相談をする2人。でも…
「俺たちが居るのにそんなことをさせると思うか?」
「そんなことをしようとした場合、皆に攻撃が届く前に、攻撃で無防備になってるあんた達の隙を突かせてもらうけど?」
「チッ…」
「無理ってことか…」
「サポートしてくれる皆には手出しさせない!」
「指一本触れることすら出来ないと思え!」
とはいえ、回復しても劣勢なのは変わらない。
手の障壁結晶の剣が消える。またストーカーか…
今までも、時折障壁結晶の剣が消えることがあった。ストーカーの意識は完全に戦闘に向かっているわけじゃない。
それがなければ受けなかったダメージもあった。それさえなんとかなれば…
「…!
気配を探ってみろ。そろそろだぞ。」
「…!
確かに。」
「じゃあ、戦闘再開といこうぜ!」
「うん!行くよ!」
私は障壁結晶をまた創り、守と全く同じ動作で切りかかった。
振り下ろした剣は受け止められ、滑らされる。
「もらった!」
私の剣を滑らせた剣は、無防備な背中に向かう。
しかし、後ろで開かれていた左手に何かが飛び込んできた。
飛び込んできた物の正体を知っている私は、前に倒れる勢いをそのままにして回り、その剣を迎撃した。
左手の物に迎撃さてた敵の剣は刀身の半分が無くなっていて、無くなった刀身は音を立てて落ちた。
「遅いよ…ルソード。」
私は振り切った左手を見ながら言った。




