第四百五話 転機を待て?ついに終わった!?
一話目。
間に合わなかった…だと…
「動くな。」
「え!?」
部屋を出て行こうとしたら首に剣を2本突きつけられた。
横を見てみると、さっきまで確かに捕まえていたはずの2人の無表情の顔が映った。
なんで?
この2人だけでなく、ストーカーと大男も手の足を縄で縛っていたはず。
なのに、この2人は自由に動けてる。
「縄が解かれてる…!」
後ろからギーナの声が聞こえた。
縄を縛られたまま解いたってこと?そんなことができたなんて…
「「……」」
2人は皆を見ている。全員動くな、とでも訴えてるのかな。
形勢逆転、か…まずい。誰も動けない。
『……心配するな。俺がいい案を考える。
それまでなんとか持ちこたえてくれ。』
(守?なにか考えがあるの?)
『今は無い。
だが、絶対に思いつく。思いついてみせる。だから不安になるな。』
…なんとなくわかる。
守もこの状況を逆転する手立ては思いつかない。
でも、何故そんな事を言ったか。
それは多分、私を不安がらせないためだと思う。
きっと強がりを言って、勇気付けようとしてるんだ…
「妙な動きをするなよ。少しでも動けば…」
2人は更に剣を近づける。
あと少しで肌に当たると言うところで剣を止め、また辺りを見る。
誰も動く様子は無い。動いたら私が…
『大丈夫だ。転機はある。お前はそれまで待ってればいい。』
守が優しく諭すように言う。
守だって不安なはずだ。少し間違えれば死ぬかも知れない状況で全く何も感じないような心は持ち合わせてないから。
それなのに、同じ自分の私が慌ててどうなる。
冷静に、作戦を考えるんだ…
とりあえず、状況を整理していこう。
剣を突きつけているのは2人。
周りには動けない皆。
他にも縛られているのが2人…
何か、もっと何か無いの?
駄目もとで気配を探る……
この2人の気配、さっき人モドキと戦った部屋に居たものと全く同じだ。
となると、この2人はさっき、デュアとルソードの刀身を取りに来てたってことになる…
…そう言えば、あの人モドキってどうなってるんだろ?
この場に乱入してきて、更に状況が悪くなることも考えられる……
………!
この気配は…どんどん近くに来る。
その気配が来るまでに、早くこの状況をなんとかしないと…
「…くそっ…俺はまた無力で何もできないのか…」
必死に考えていると、太郎の声が聞こえてきた。
誰も喋っていないので、よく声が聞こえる。
「くそ…俺にこの状況を逆転できるような力があれば…」
「…フン、貴様がなんの能力も持っていないことなど、知っている。」
「ボスがいつまでも邪魔してくる敵の情報を調べずにいると思うか?」
私に剣を突きつける2人は、太郎に向かってそんなことを言う。
「…分かってるさ。俺にそんな圧倒的な力が無いことくらい。
でもな…でもな………」
バチッ、バチ…
「太郎…?」
「俺の親友をそんな目に遭わせて、ただで済むと思うなああああああああああああああああ!!」
ピシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
太郎の咆哮と同時に、太郎から雷が放たれる。
その雷は私に剣を突きつける2人に向かい、防御するつもりだったのか私から剣を離して刀身に手を当てる。
しかし、2人にとってそれがまずかった。
自由になった私はその場から飛びのく。
太郎が放った電撃は刀に当たり、2人を感電させた。
「「ぐっ、がああああああああああああああああ!!」」
刀から伝わった電撃を受けた2人は、黒い煙を出して倒れた。
シーン…
誰も動かなかった。
誰も喋らなかった。
いや、そうしないんじゃなくて、できなかった。
この時間、空間は静かで、物音一つしなかった。
「……これが、俺の能力…」
太郎がポツリと呟く。
「………やった…やったぞ!俺はついに能力に目覚めたんだ!!」
「能力!?本当に!?」
「マジか!こんなところで目覚めるとは思ってなかったぞ!!」
「当たり前だ!俺ですら思ってなかったんだからな!!」
静けさは消えて、この空間は歓声に包まれた。
敵の4人は唖然としたままだったけど、皆は太郎の能力が目覚めた事を自分のことのように祝い、喜んだ。
「騒がしいな。なんの騒ぎだ?」
この声で、皆の歓声は一気に無くなった。
この声の主は黒幕。
そう、ついに黒幕は試験を終え、目覚めてしまった…




