第四百四話 理由も分からない焦り?トラウマを調べろ!?
一話目。
「そんなことが…」
世界の意思からの話を聞いた皆は、愕然とした様子を見せた。
「もしアイツが試験に合格したらまずくないか!?
これまでアイツがしてきたことを考えると、世界を滅ぼすとかしてきてもおかしくないぞ!!」
太郎が言った事はその通りかもしれない。
黒幕は、ジュエリィツールを集めるためならなんだってしてきた。
ある時は村を襲わせ、またある時はデュアを持つ私たちに刺客を向け、他人に大怪我させた事もあった。
そんな人間が神技なんて大きな力を手に入れたら何をしだすか。分かったものじゃない。
「どうする!?
とりあえず受験生に言ってはならない言葉を言いまくるか!?」
「止めろ!!
どうせいくら騒いでも聞こえるかどうかは分からないし、何より受験生の皆様に悪いだろ!!」
「誰もこの中に受験生なんて居ないだろ!!」
「それに、そんなことで騒いだだけで事態が好転するわけでもない!だから止めろ!!」
「……なんでそんなに必死になってるかは分からんが、とにかくお前の言い分は分かった。
とりあえず止めとく。」
「ふぅ~…多くの受験生を敵に回さずに済んだな…」
「だから、この場に受験生なんて居ないだろ。」
「そんな気がしただけだ。
それもかな~り強くな……」
「ハァ?」
意味不明な太郎の言動だけど、実を言うと私も内心ハラハラしてた。
『俺も実はかなり焦ってたんだよな…なんでだろうな?』
(まあ、こんなのことをいつまで考えても仕方ないことだし…忘れよう。
それより、いつまでも口を割らない2人だね。)
『そうだな…タカミのハリセンが駄目ってなると、拷問でも吐くかどうかって話になってくるぞ?』
(そうだね…せめて、トラウマとかが分かればいいんだけど…)
『トラウマ、か…無いなら作ればいいじゃない精神でなんとかならないか?』
(拷問でも厳しいってなると、トラウマ作るのも厳しいよ。
しかも、トラウマなんて調べようが…)
『…あった。』
(え?あるの?)
『よく考えてみれば、調べる事はできるんじゃないか?
瑠間、入れ替われるか?』
(ん~…入れ替わりの仕方が分からない。
寝てたり気絶したりしてる間にどうやって代わるんだろうね?)
『ならしょうがないか…
瑠間、俺の言う通りに動いてくれ。』
(それでなんとかなるの?)
『ああ。うまくいけばな。』
守との作戦会議が始まった。
「ストーカー、大男。」
私は守が言った通り、できるだけ笑顔を作って黒いオーラを出しているように魔法で演出している。
更に魔法で威圧感を出す事で、効果倍増。これなら…
「なんだ!?」
「……」
案の定と言うべきか、守が言った通りに2人は怯え始めた。
気配を調べれば、表情を隠してるつもりの大男でもバレバレだ。
「2人は本当に黒幕の目的を知らないんだよね…?」
「は、はい!」
ストーカーは大きな声で返事をし、大男も首を縦に振っている。
「なら、その2人は知ってると思う?」
無機質な表情の2人を見ながら言う。
「ボスの側近なので、知っているかと!!」
効果てきめんすぎる。
ストーカーは無駄に大きな声で正直に答える。気配で嘘をついてないことくらい分かる。
「じゃあ、その2人のトラウマ…あるいは弱点を知ってる?」
「ははははい!確か二人はピーマンと人参が嫌いだったかと!」
『子供か!!』
と、思わず守のように叫びそうになったのをこらえる。
ここで叫んでしまっては、せっかくの演出が台無しだ。
「ああ…昔、あの2人はピーマンと人参が嫌いで食べなかったのだが…
ボスが、好き嫌いはいけないということでピーマンと人参に良く似た魔物を大量に連れて来られて…
幼かった二人は大量の魔物に、物量で押し切られてしまい、それからは見ることも嫌になったとか。」
ストーカーの答えに大男が補足する。
……なんてことをしてるの?あの上司は。
子供相手に大量の魔物って…そりゃトラウマにもなるよ。
『敵ながら同情するぞ…』
(まったくだよ。)
黒幕に呆れを覚えつつ、無表情を貫いている2人に同情する。
「…余計なことを…!」
初めて無表情だった2人が憎らしげな表情を浮かべた。
ここまで続けてきたポーカーフェイスを崩すって…どれだけ嫌なんだろ?
『とにかく、それが分かればこっちのもんだ。
確か、人モドキのところに食料が大量にあったな。その中からピーマンと人参をありったけ持ってくるぞ。』
出口に向かって走る。
もちろん行き先は地下の食料庫。
(同情しておきながら…鬼だね。)
『そう言いつつそれを実行するお前が言えたことじゃないだろ。』
確かにね。
心の中でそう思いつつ、無表情に戻った2人に背を向けて走り出した。
…2人の縄が解かれていることも知らずに。
全国の受験生様、ごめんなさい。
話の内容はともかく、じりゅーは受験生の皆様を応援しています。
…今の今まで受験勉強シーズンということを忘れてました。はい。




