第四百話 解かれた洗脳?津瑠の一声!?
一話目。
四百話記念のアウトオブ本編は、活動報告にて上げます。
もし良ければ、じりゅーのユーザーページから活動報告をご覧下さい。
鉄格子の棒がタカミに触れた瞬間、タカミの目に光が戻った。
「うっ…まだ頭がズキズキと…」
「タカミ…正気に戻ったのか…?」
「え?正気?
何を言って…あれ?なんでこんなことになってるの?」
タカミは広間を見回して戸惑っている。
恐らく、洗脳されていた時の記憶が無いのだろう。
「大丈夫か?」
「え?
う、うん……」
洗脳の影響か、ぼんやりしている様子だ。
「良かった…」
「守?」
「良かった…無事で良かった…!!」
「!?
父…さん…?」
…え?
“父さん”?
「父さん!父さん!!」
タカミは叫んで俺に抱きつき、泣きじゃくる。
全く意味が分からない。
確か、“父さん”…とか言ってたよな。
どういうことだ?
俺は呆然とし、もう少しで結論に達しようとしたところで疲れが限界に達して意識を失った。
「キィ~!まさか洗脳が解けるとは!!」
ピエロは、洗脳が解けたタカミと守を見て悔しがっている。
「こうなったら、今のうちに2人を…」
「させない!」
タカミは突然守に抱きついて泣き始めた。
守は気絶していて、どちらも戦える状態じゃない。
2人のやり取りの意味は全く分からなかったけど、それを邪魔させてはいけない気がする。
だから私はピエロに魔法をぶつけることによって、ピエロの注意をこちらに引くことにした。
タカミの洗脳が解ければ、洗脳が解けたタカミに攻撃する事くらい予想済みだ。
「ぐっ…!
貴様…!!」
思っていた通り、ピエロの注意はこちらに向く。
「ギーナ、すまない。
俺達は見ての通り戦えない。
だから、お前がピエロをなんとかしてくれ。」
近くで倒れていた太郎が私に言う。
分かってる。と、頷いて答える。
タカミとの戦いで、私以外の皆が戦えなくなった。
特に守は重傷。魔力切れ寸前で、その上疲労が大きい。
あんなに素早い動きをしたんだ。きっと魔力を全力で使ったんだと思う。
私は魔法を作るために戦わなかったため、体力も魔力も全開。まあ、魔力は無制限に使えるんだけどね。
「アンタの名前は分からないけど、アンタの性格が最低って事は分かったわ。」
「なんとでも言うがいいでしゅよ。
ただ、私は傷つきもしましぇんがね~。」
「本当に最低ね…
アンタには誰一人指一本触れさせない。
そして、私が皆の分アンタと戦う。」
「ひょ?大した自信でしゅね?
この私に勝てるとでも?」
「もちろん。」
あんな奴、私1人で充分倒せる。
「オマエなんか、攻撃を当てることもできずに終わりでしゅよ~。」
ピエロの前に突然ボールが現れ、それに乗るピエロ。
ボールは縦横無尽に動き、私の狙いを狂わせる。
「ハッハッハ!これでも本当に攻撃を当てられましゅか~?」
「……余裕。」
手を上にかざし、その上に魔力をひたすら注ぐ。
その魔力は巨大な火の玉となって、魔力が注がれるごとに更に大きくなっていった。
「ひょ!?」
「アンタに一つ言わせて貰うわ。
アンタにこれを避けられる?」
ピエロが動ける範囲を計算し、火の玉を発射する。
その火の玉は広間の上を覆い、天井の少し前で着弾する。
「ひょ、ひょおおおおおおぉぉぉぉぉぉ……」
だんだんピエロの叫び声が小さくなっていく。
そして聞こえなくなった時、火の玉は消え、そこにピエロの姿は無かった。
「……終わった?」
誰かがポツリと呟く。
返ってきたのは静寂。誰もその問いに返すものは居なかった。
しかし、その静寂はすぐに終わりを告げた。
「って、タカミ!何どさくさに紛れていつまでも高壁君に抱きついてるの!?」
…津瑠の一声によって。
津瑠は守に告白したことがあると聞いたことがある。
だから、洗脳が解けてから今に至るまでずっと抱きついていたタカミに思うところがあるんだろう。
「津瑠、ストップ。」
ただ、タカミは恋愛感情で動いているのではない。
そして、それを邪魔してはならない。例え守に恋愛感情を持っている津瑠でも。
そんな気がしたから津瑠を止めた。
「なんで止めるの!?」
「いいから。そっとしてあげて。」
私の真剣さが伝わったのか、津瑠は納得いかない表情をしながらも足を止めた。
タカミは、一体何故突然守に抱きついたのか。
津瑠のためにも、しっかり理由を訊いておかないと…




