第三百九十九話 三人目のチート?矛盾した戦況!?
二話目。
タカミとの戦いが始まった。
タカミは低空飛行でこちらに向かってくる。
「皆、俺も少し準備がある。
少しで済むから、その間の時間稼ぎは頼む。」
「お前もか…まあ良いけどさ。」
タカミは俊太達に任せ、俺は準備に入る。
障壁に触れて性別を変え、何の機能も無い鉄格子の棒に機能と性質を付けて性別を戻す。
付けた機能は“触れた者に掛かる術を打ち消す機能”。性質は“衝撃が発生しない”。どんなものかは名前の通りだ。
タカミはダメージが発生しない速さで攻撃したら確実に防がれる。だからこの性質を付けた。
準備完了。この間三秒。
「よし!良いぞ!」
と言って皆に視線を戻すと、俊太が吹っ飛んできてぶつかった。
「俊太!?どうした!!」
「守…すまん、タカミを取り押さえようとしたんだが、一撃もらってこのざまだ…ゲホッ。」
俊太は咳き込んで目を瞑る。
一撃でこれって…タカミのステータス高すぎだろ。
VRMMOって、現実換算でこんなに力が無いといけないのか?
…チートすぎる。
「俊太…お前の犠牲は無駄にしない。絶対にタカミを元に戻す。」
俊太を床に置いて、タカミに向かっていく。
「いや、死んでないんだが…ってか、まだ行け」
何かを言いかけている俊太をスルーし、戦場を見る。
飛び掛った皆は、一撃で数メートル吹っ飛んでいった。
吹っ飛んだ奴を避けつつ、なんとかタカミに近付いていく。
「目を覚ませええええええええええええええ!!」
魔法で最大限まで強化し、俺ができる最速のスピードで棒を振る。
その攻撃はあっさり避けられ、俺も一撃を受ける。
「ぐっ…!」
パワーが違いすぎる。
それだけじゃない。スピードも、技術も、全てにおいてタカミが上だ。
魔法で最大限まで強化してこれだ。もし強化無しで掛かって行ったら話にならないだろう。
「ハッハッハ、それじゃあタカミはたおせましぇんよ~?」
いくら掛かって行っても歯が立たない俺たちを嘲笑うピエロ。
ムカつくが、アイツに八つ当たりしても…
…待った。
あらゆる術は術を掛けた奴を倒せば解けることが多いよな…
つまり、ピエロをまた倒せばタカミに掛かった術が解けるかもしれない。
よし。
俺はピエロの前に移動する。
それは一瞬の出来事。魔法で最大まで強化した俺にとって、一瞬で十数メートル移動するなど容易なこと。
「ひょ?」
「終わりだ。」
ピエロに拳を振り下ろす。
しかし、いつの間にか移動してきたタカミに受け止められ、一撃を受けて吹っ飛ぶ。
「ぐうっ…」
なんとか着地するが、タカミをなんとかしないとピエロに近付く事もできない事が分かった。
「ギーナ!まだなのか!?」
「もう少し…もうちょっとだけ持ちこたえて!」
まだか…ギーナの魔法が完成するまで、俺たちは持ちこたえられるのか?
「無駄無駄!タカミに全く歯が立ってないじゃないでしゅか!
諦めて君達も“処理”されれば、生かしておきましゅよ~?」
「何を寝ぼけた事を…!
俺たちは絶対にそんな決断は下さない!
タカミをなんとしてでも元に戻す!!」
少しぼんやりしてきた頭に喝を入れつつ叫ぶ。
疲労とタカミから受けたダメージ、そして魔法を全力で使用したことにより、意識が朦朧としてきていた。
時間稼ぎをしなければならないのに、長期戦はできない。なんて矛盾した戦況だ。
俺を動かしているのはピエロに対する怒りと、タカミの洗脳を絶対に解くと言う決意だ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
思いっきり叫び、強化魔法を使ったままタカミに向かっていく。
更に、能力を使って障壁を俺の後ろから進行方向に伸ばし、その障壁に足を付ける。
障壁が伸びきったところで足をつけていた障壁を蹴り、スピードを上げる。
今のスピードは、さっきの物よりも上のはずだ。
短期決戦を決めるなら、これしかない。
「タカミいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
全力で叫び、鉄格子の棒を振る。
「……とう…さん…?」
「な…」
今まで喋らなかったタカミが、突然喋った。その瞬間だけ目に光が戻っていた。
それに驚いた俺は振られた棒を止め、タカミを通り過ぎてそのまま壁に向かう。
しかし、障壁を何重にも創ることによってなんとか勢いを殺し、止まれた。
「できた!いくよ!!」
それと同時にギーナの魔法が発動する。
ギーナの手から白い霧が出て、タカミを覆う。
「タカミ!霧を吹き飛ばすんでしゅ!」
ピエロの指示と同時に、白い霧が吹き飛ぶ。
「そんな…!」
「ハッハッハ!そんな物が通用するとでも思ったんでしゅか!?」
「今だ!」
だが、その隙を俺が逃すはずが無い。
強化魔法を全開にし、タカミに近付いて棒を振る。
さすがに霧を吹き飛ばした直後のタカミは反応できず、鉄格子の棒が当たった。




