第三百九十三話 チートは更にチートに?絶対に何かある!?
三話目。
「守!こんなところにいたのか!」
「こんなところに居たのかじゃないだろ!なんだその後ろの魔物は!?」
「ちょっと壁を蹴ったら…な?」
「な?じゃねえよ!
まったく、世話が焼ける…」
俊太達の後ろに障壁を出す。
これで魔物は障壁によって隔てられた。障壁は床から天井まであるので、飛び越えてくる心配も無い。
「た、助かった…ありがとな。」
よほど疲れたのか、逃げてきた五人はへなへなと座り込む。
「座り込んでる暇は無いぞ。これは時間稼ぎにしかならない。」
「え?」
ドン!ドン!
魔物の攻撃によって変形していく障壁を見ながら言う。
いつ壊されてもおかしくない。空中固定なので障壁が押され、押しつぶされることは無いだろうが…
壊れた瞬間障壁は消え、魔物が押し寄せてくる。
ちらりと折れた二本の愛剣の柄を見る。
ここからあの二本は離れていて、取りに行ったら逃げるのが間に合うかどうか…
『…まも…る…』
「デュア!?生きてるのか!?」
弱々しい物だったが、確かにデュアの声が聞こえた。
『勝手に人…いや…剣を殺すのではない…
それより、我等のことは良い。早く逃げろ…』
「でも…!」
『甘ったれるんじゃねぇい!』
「!」
今度はルソードの声だ。
『…今ので少し無理したか…俺達なら心配…無いぜ…』
「何言ってんだよ!心配しかねえよ!」
『近寄るなぁ!』
思わず駆け出したが、ルソードのテレパシーで足が止まる。
『何…俺達は剣だ。あの魔物どもに取って食われるこたぁねえ…
それでも惜しけりゃ、後で拾いにでもきな…』
「ああ…!必ず戻ってくる!そしてお前らを拾って帰る!!」
「守!何してるの!?早くこっちに来て!!」
光の声に振り向いてみると、人一人分の大きさの出口があった。既に五人もそこにいるらしい。
この先なら魔物は追って来れないだろう。
『『行け!我が主!!』』
「分かった!踏み潰されるなよ!」
俺が出口に入ったところで障壁が壊され、魔物が押し寄せてくる。
急いでドアを閉めて、これで今度こそ一安心だ。
「はあ…大分危なかったわね。何してたの?」
「ってか、デュアとルソードがいねえぞ?あいつらは?」
「……その話は後にしてくれ。」
今言ってしまえば、脱出どころではなくなってしまうかもしれない。
二人も今まで一緒に旅してきた仲間だ。本当のことを言って悲しまれないわけが無い。
「あれ?守ってまだ男に戻ってなかったの?さっき障壁出してたよね?」
「ああ、さっきできるようになったんだ。」
どうせなので、今戻ることにしよう。
障壁を創って、それに触れると性別が変わる機能を付ける。それで触れれば終わりだ。
「……便利だな。」
「まったくだ。」
二つの能力を組み合わせると、今のように障壁を創ってその障壁に機能を付けることが出来る。
近くに機能を付ける対象が無くても、創りだせてしまう。チートが更にチートになった。
「しかし…この部屋に居ると腹減ってくるな。」
「なんで…なんて、聞くのも野暮ね。」
今俺たちが居る部屋は食べ物だらけだ。
肉、チーズ、野菜、色々ある。さっき戦った、人モドキの食糧だろう。戦う前も食ってたし。
ただ、魚などは無い。もしかしなくてもあの人モドキの好き嫌いだろう。野菜は食えるくせに…魚も食えよ。
「…なんか食ってくか?」
「罠かもしれないし、止めた方が…」
人モドキの食糧なので、毒が入っているとは思わない。
いくら策士だからといって、味方に毒を盛るような真似はさすがにしないだろう。
しかし、食べ物の山から離されているように配置された腐った生肉が気になる。
もしかすると、ここの食べ物は全てとっくのとうに賞味期限が切れたものばかりかもしれない。
これから戦うというときに腹を壊すのは全く笑えないので、腐った生肉を指差す。皆は察してくれたようで、食べ物の山の横にある扉に歩き始めた。
…人モドキはアレを平気で食ってたのか?
まあ、ただの人間とは思えないしな。
ひょっとしたら消化器官が強いのかもしれないし、もしくは腹痛を我慢しながら戦ってたのかもしれない。
……後者だったらドンマイ。
そんなことを考えながら、俺は食べ物だらけの部屋を出て行った。
階段を下りた俺達を待っていたのは、大きい広間だった。
照明は無く、暗い。
「何?ここ…」
津瑠が不安そうに呟く。
ここには絶対何かある。俺にはそんな揺ぎ無い確信があった。この塔を見てくれば誰でも思うだろう。
「レディ~スア~ンドジェントルメ~ン!」
ムカつく声が聞こえたと思ったら、スポットライトのようにその声の主とその周りだけ照らされる。
声の主は、先程タカミと消えたピエロだった。




