第三百九十二話 奇跡の蹴り?だからどうした!?
二話目。
守、デュア、ルソードの三人がいなくなり、てんやわんやになっている俺達。
しかしいつまでもそんな状態になっている俺達じゃない。
訳の分からない事態になるなんて日常茶飯事…日常チャーハン事か?まあどっちでもいい。
時間が経つに連れて混乱は落ち着いていった。
「そう言えば、三人とも消えた時には階段の絵を調べてなかった?」
俺は見てなかったから分からんが、光が言うんだからそうなんだろう。
他に手がかりがあるわけでもないし、早速調べてみる事に。
「まずは蹴ろうぜ!」
「真っ先にその選択肢が出てくるのはどうかと思います。」
「え?だってここの入り口は蹴ったら開いたじゃねえか。ここも同じかも知れねえだろ?」
「そうは言っても」
ドン!
「ちょっと!?」
俺は意見を言った後、絵に近付いて蹴る。
「……何も起きない?」
…いや、今少しだけ絵が動いた。回りそうだったな。
さっきは真ん中だったが、端っこならどうだ?
ドン!
グルッ
「「「「!?」」」」
「やっぱりな。」
端っこを蹴ってみると、絵が回って壁の向こう側に行く事ができた。
「皆も来いよ!端っこを蹴れば行けるぜ!!」
「うっそ~…」
「本当に蹴ればよかったとは…」
グルグルとドアが回り、その度に皆がこっちに来る。
「こんなところがあったなんて…ってことは、守達三人は消えたんじゃなくて、この通路に出たって事ウサ?」
魔法で通路を照らしたフラルが言う。
なるほど。それでこの通路を進んで行ったって訳か。
「そうだったとしても、戻ってきて一言言ってくれればよかったのに。」
まったくだ。水飴臭い奴らだな…ん?なんか違うような気がするな。
水臭いだったか?いや、水に匂いは無いから違うか。
「追いついたら説教だな。なんで俺達に知らせなかったんだってな。」
「そうね。
忘れてるかもしれないけど、罠には注意しながら進んでね。」
俺達は通路を進んでいく。
「なあ、ここって隠し通路とかねえのかな?」
「隠し通路?」
「さっきの光の話…罠で思ったことだが、もしかするとこの通路を進んでも罠だけかもしれない。
この塔で罠を仕掛けてる奴は頭が良いから、ひょっとすると牢から脱出することも考慮してるかもしれないだろ?」
ルドの話を聞いて、言われてみればそうかもしれないなと思う。
考えられない話じゃないな。
「じゃあ、まずはこの壁から蹴ってみるか!」
「ちょっとちょっと!闇雲に蹴っても罠のスイッチを押すことになるだけ」
バアン!
その辺の壁を蹴ってみたら壁が倒れて部屋が見つかった。
ってか、倒れた壁でかすぎだろ。五メートルはあんぞ。
「…信じられないウサ…」
実は俺も信じられない。テキトーに蹴ってみたら本当に部屋が見つかるとか全く思ってなかった。
「とにかく、調べようぜ。この部屋になんかあるかもしれねえし。」
と言って部屋に入る。
部屋には魔物の大群が居て、狼っぽい魔物、人型の魔物、猫っぽい魔物、色々混ざりすぎて訳の分からない魔物などが大量に居た。
そいつらのサイズはどれも俺達の背丈の二倍くらいはあって、反射的に黙って逃げてしまうくらいの迫力があった。
「どうしたの俊太?いきなり真顔で走り出して」
「お前等も逃げろ!」
多種多様な鳴き声を出しつつ俺を追ってくる魔物の大群。
4人も必死に逃げはじめ、魔物達は部屋から出ても俺達を追ってくる…
「そうか!」
「何!?なにか打開策が…」
「倒れた壁がでかかったのはこいつらが通るためだったのか!」
「だから何なの!?しかも打開策じゃないの!?」
「色々な意味で、俊太のバカーーーーーー!!」
「誰がバカだーーーーーーーー!!」
「「「「お前だーーーーーーーー!!」」」」
叫びによる会話が終わっても、俺達は必死に逃げた。
「ーーーーー!!」
「ん?なんだ?」
人モドキを倒して感傷に浸っていると、俺が来た道から叫び声が聞こえてきた。
気配を探ってみると、こちらに近付いてくる気配が五つ。恐らく牢で置いてけぼりになった五人だろう…悪かったとは思っている。
しかし、問題はその後ろの気配。人間にしては大きく、禍々しい。少なくとも人間ではないだろう。
『…嫌な予感しかしないね。』
(まったくだ。)
予感は的中し、叫び声が聞こえてしばらくすると予想通りの五人が出てきた。
その直後に大量の魔物が来る…
…何をしたんだお前らは。




