第三百八十六話 壁に向かって進め?かなり久しぶり!?
二話目。
色々とありすぎて遅れました。
なんで一日で食べ放題を二回も行かなければならなかったんでしょう。
「待て、タカミ!」
ただでさえイライラさせてきた上に、あんな罠を仕掛けた張本人となれば攻撃しない理由は無い。
俺も、なんとか殴りかかるのを理性が抑えているところだ。少しでも抑えを緩めれば、俺は間違いなくピエロに殴りかかるだろう。
しかし、あんな罠を仕掛けた策士だ。無鉄砲に向かっていくのは愚策としか言いようが無い。
「これまでの罠の恨み…!」
「トラップ発動!スイッチオン!」
ピエロはどこからかスイッチを取り出し、押す。
すると、下から壁がせり上がってきた。あのスピードでぶつかったら…!
「邪魔!」
しかし、壁はタカミが一発殴っただけで粉々に砕かれた。
「ひょ!?まさかそこまでとは…!う、うわーーーーーー!!」
「勝った!」
タカミは勝利を確信している。
しかし、俺は妙な胸騒ぎがした。このまま進んでしまえば何かが起きる…
「タカミ!止まって!」
「え?」
ギーナが必死に叫ぶが、タカミは止まれない。
「…なんちゃって。更にトラップ発動!」
「な…!」
ピエロがまたスイッチを取り出し、押す。
すると、上から網が落ちてきた。避ける間も無くタカミが引っかかる。
「くっ!でもこんな物…!」
網の端にある錘のせいか、タカミはなかなか脱出できない。よほど身動きが取りにくいらしい。
「もちろん、それではおわりましぇ~ん。あ、ポチッと!」
「きゃあああああああああ!!」
タカミが突然叫び始める。
「さすがに、天使でも高出力の電気は通用するみたいでしゅね~。」
よく見ると、網は一つの糸で天井につながっていた。そこから電気を送っているのだろう。
つまり、アレさえ切れれば…
「誰でもいいから、網の上の糸を切ってくれ!多分それが電気を送っているんだ!」
「まかせて。」
キャビは腰の剣を抜き、糸に切りかかる。
「よく見破りました~。でも、黙って切らせるわけないよね~?」
タカミが壊したものと同じ壁がせり上がってくる。
「キャビ!そのまま進んで!」
「な…!?」
ギーナがいきなり訳の分からない事を言う。キャビを壁にぶつける気か!?
…いや、ギーナのことだ。何か考えがあるのかもしれない。
「ギーナの指示に従え!何か考えがあるのかもしれない!」
「…分かった。」
このままでは、あと一秒も経たずにキャビは壁に激突する。それもかなりのスピードでだ。
しかし、そんな高速で動いているキャビを抜かし、壁を壊した影があった。
「今よ!」
その影の正体はギーナだった。
「これなら!」
壁が無くなったため、そのまま激突せずに猛スピードで進むキャビ。
狙いはタカミを苦しめる糸。キャビは壁が壊される前から振られていた剣を振りきった。
しかし…
「……居ない?」
剣が切ったのは、糸ではなく空気だった。
そこにあった網、タカミ、ピエロの姿も無くなっていて、残っていたのは沈黙だけだった。
モシャモシャ…
「……」
あれからどれだけ待っただろう。
太った人はなお食事に没頭していた。
『なあ、もう素通りで良いんじゃないか?』
待ちくたびれてきた守が言う。私も待ちくたびれていて、そんな気もしてくる。
『……誰かトランプでも持ってないか?さっき光達とやったババ抜きが面白かったのでな。』
「そんな物持ってないよ!」
『あ、さっき光に返しそびれたのがあるぜぇ~?』
「あるの!?」
『よし!じゃあ、ババ抜き開始だな。ルソード、トランプをシャッフルして配ってくれ。』
『合点承知だぁ~!』
………太っている三メートルくらいの人モドキが食い散らかし、子供二人と高校生がババ抜きをする。
そんな異様過ぎる光景を作り出しながら、私たちはそれぞれの時間を過ごしていた。
『あ!デュアの奴ババ持ってたのかよ!』
でも、そのババはルソードに流させてもらったよ。
ルールを覚えたばっかりの素人二人には絶対に負けない!
『大人気無いですね…』
…え?守?
『いや、今のは俺じゃないことぐらい分かるだろ。』
あ、女神様か。かな~り久しぶりじゃない?
『そうですね。記憶を取り戻す前に話しかけたら混乱するだけだと思ってたので、意図的に話しかけませんでした。
記憶を取り戻した後も、二重人格になって精神が不安定になってたので混乱を避けるために話しかけなかったのですが…
今、ようやく精神が落ち着いてきたので話しかけました。あ、話半分でババ抜きなんてしてたら素人でも最下位に蹴り落とされますよ?』
え?何言って…あ!よく見たら私が一番枚数多い!!
『おっと!だが今引いたカードで10が捨てられる!』
あ、本当だ。
この調子でいけば逆転も狙える。まだまだ勝負はこれからだね!




