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第三百八十五話 通路の先には?聞いてるだけでもムカつく!?

一話目。

またマニアワナカッタ…

「やっと来たか…」


 罠に一つも掛からずに通路を抜けた私たちを待っていたのは、太ってる大きい人…としか良いようが無い人だった。

 全体的に丸く、慎重は三メートルほどあるように見える。本当に人間なの?


『いや、人っぽいだけの魔物じゃないか?』


 確かにそう見えなくも無い。

 待っていたと言っているのに食事中で、わき目も振らず椅子に座ってバクバクとテーブルに置かれた料理を食べ散らかしている。

 テーブルの周辺には食べかすと思われるものが散らばっていて、はっきり言って近寄りたくないくらい汚い。


『しっかし本当に汚いな。子供でももっと綺麗に食べられるぞ…

 それはともかく、見てないのにこっちに気付いたって事は、少なくとも気配察知はできるってことだよな。』


 守が今言ったとおり、太った人はこちらに気付いているにもかかわらず全く私たちを見ていない。

 部屋は広く、太った人とはかなり距離があるけど、離れているからと言って油断は出来ない。魔法で遠距離攻撃をしてくるかもしれない。


『…今思ったんだが、アイツの後ろにある赤い奴は剣か?』


 言われて良く見ると、太った人の後ろに赤い剣のようなものがある。

 赤い剣は大きく、どこかのゲームの大剣のようだ。


『あの剣は…!何故あんな奴が持っているんだ!?』


『マジかよぉ~…もし戦うことになれば、とんでもなく厄介な事になるぜぇ~…』


 二人はあの剣を知っているらしい。


「どうしたの?」


『ああ、あの剣は我とルソードとともに作られた剣だ…』


『あの剣の硬さと重さ、そして鋭さは俺達一つ一つよりも上なんだぁ~…』


 デュアとルソードを上回る剣があったんだ…


「でも、二つで戦えばどう?

 一つが駄目でも、二つなら大丈夫かもしれないよ?」


『…そうだな。我ら二つで戦えば勝機はある。何を恐れるか。』


『それもそうだな。』


 ルソードが珍しく語尾を伸ばさなかった事に少し驚きつつ、また太った人を見る。

 今も食事中で、こちらを見る気すら無さそうだ。


『…どうする?今行くか?』


(一応話し合いに持ち込んで、戦わないように交渉するよ。)


『……無駄だと分かっていてもか?』


(うん。)


『まあ、好きにしてくれ。俺も戦闘狂じゃないから、できれば戦いたくないしな。』


 人が傷つくところを見ていい気はしない。

 この世界において、それは命取りになるかもしれない。それを分かっていても捨てることはできない。

 なんて決心を固めるものの、太った人の食事は終わらない。いつになったら終わるんだろう。

 話し合いをしようとする私は、ただ待つことしか出来なかった。






 デュアとルソードが居なくなってから数分。俺達は入って来た扉とは逆の位置にある扉の先にあった通路を進んでいた。

 入ってきたほうの扉は、岩が塞いでいる。つまり、ここからでは戻れない。

 だから別の出口も探さなければならない。することが増えてきた。

 守の捜索、落ちた俊太とフラル、閉じ込められた光、ルド、トーナ、いなくなったデュアとルソードの救出。そして、出口の捜索。

 例え全員合流できても、出口が見つからなければ脱出は出来ない。今の俺達も、実質この塔に閉じ込められているようなものだ。


「おやおや、これまた大勢でしゅね~?」


 突然聞いてるだけでもムカつく声が聞こえてきた。

 言い方だけでもそれなのに、赤ちゃん言葉が更にイライラさせる。

 声の主は白く塗られた顔、赤く丸い鼻、道化師のような服。その姿はピエロを連想させる。


「ねえ、あいつ殴っていい?なんかムカつく。」


 タカミがハリセンを取り出して物騒な事を呟く。


「気持ちはよく分かるが落ち着け。下手に動けば何が飛び出してくるか分かったもんじゃない。」


 そうしてムカつかせるのはピエロの罠かもしれない。迂闊に手を出すのは危険だろう。

 …喋ってるところがイライラするから殴るって言うのも理不尽な話だしな。

 ムカつく敵とは言え、そこまでするとどちらが悪者なのか分からなくなる。


「そうカッカしないの。確かに、ここの罠は僕が仕掛けたんでしゅがね~。」


「よし!今すぐ殴る!速攻で殴る!!」


 タカミは青筋を浮かべながら、走るより速いのか低空飛行でピエロに向かって猛スピードで飛んでいった。

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