第三百八十四話 あまり変わらない?皆勘違い!?
二話目。
『なあ、今のはどういうことなんだ?』
(……無意識に歩き出してた。戻ろうにも真っ暗で何も見えない。)
早く脱出しようと思っていたせいか、勝手に足を動かしてたみたいだ。
『………それ、詰んでないか?』
(こういう時は壁伝いで行けば)
『止めとけ、ここのことだ。どうせそれを読んで壁に罠を仕掛けてるに違いない。』
「……はあ…」
思わずため息がこぼれる。
完全に八方ふさがりだ。
『大丈夫だ。俺もいるだろ?』
(いないよりはマシだけど…結局自分だからあんまり変わらないような…)
もう一つの人格とはいえ、元は私と同じ。今の状況下では、精々話し相手が増えるくらいだ。
『それを言うなよ。こうなったら、視覚に頼るな作戦だ!』
(ナニソレ?)
『要するにどうせ見えないなら目に頼らずに、他のものに頼れって事だ!』
(…例えば?)
『え~と……味覚とか、触覚とか嗅覚とか…』
(味覚は使えないし、触覚は結局壁伝いになるからパス。嗅覚って…そんなに鼻良かったっけ?)
五感の中で今使えないものばっかりあげられても…
『じゃああれだ!聴覚だ!あと気配!』
(!)
それは使えるかもしれない。
気配察知を強くし、耳を澄ませる。
「守が居なくなったぞ!?」
「どうなってるの!?これも罠の一つ!?」
「フラルと解説聞いてたから全く見てなかった!!」
『確か、守はさっき絵を調べていたはず…ルソード、手伝ってくれ。』
『よぉかろう。』
バン!
グルン
『うお!?』
『何!?』
バタン!
「って、あれ?デュアとルソードまで消えた?」
「まさか、こうやって一人ずつ消していくつもりなのか!?」
「敵は恐ろしいウサ…!」
「なんてことだ…じゃあ、俺達もいずれ…
やばい!消される前に、早くここから脱出するぞ!!」
「「「「おーー!」」」」
聞こえてきたのは、鉄格子があった部屋の話し声だった。
なんか皆勘違いしてるみたい。
『(…ナニコレ?)』
守と私の感想は、一字違わず一致した。
『(我ながらなんて小並感だ。)』
その直後に思ったこともだった。
(じゃあ、次は気配だね。)
『後は何も聞こえないしな。』
気配を探ると、こっちに向かってくるデュアとルソードの気配、急に部屋から三人もいなくなって戸惑う俊太達の気配を察知した。
また、上の方から十三人…恐らく落ちてきていない太郎達の気配がある。
他には…まばらにいる敵らしき気配がある。皆何かに警戒してるみたい。
更に、この先にも一つ敵らしき気配がする。まるで何かを待っているような…
『どうする?進むにも、壁に当たったら何があるか分からない。
壁伝い作戦でなくてもそれは同じだ。壁にぶつかっただけで罠が発動するかもしれない。』
確かに、闇雲に進んだら罠が発動するかもしれない。それは壁に当たらなくても同じこと。
敵は策士。床に落とし穴でもあるかもしれないし、なにかのスイッチを踏んでしまうかもしれない。でも…
(……それなんだけど、物の気配って探れると思う?)
『何?』
その気配を探れてしまえば、いくらでも避けられる。
感じるんだ。
物体が放つ気配を。
限界まで感覚を研ぎ澄ませて。
(………)
『………どうだ?』
駄目でした。
さすがに物は気配なんて放ってなかった。
『…………どうすんだ?』
…どうしよう。
進む手段が無く、完全に詰んでるとしか言いようの無い状況に立たされて目の前が真っ暗になりそう…とっくになってたね。
そんな時、後ろから光が差した。比喩ではなく、本当に。
『そこにいるのは守か!?』
間違いない。このテレパシーはデュアのものだ。
振り返ると、デュアとルソードがいた。心強い。
『突然居なくなったのは絵が回ったせいか?』
「うん、絵を叩いてみたら回って」
「おい!いつまで待たせる気だ!早く来い!」
私の言葉を遮った声に驚いたのは、私だけじゃなかった。デュアもルソードも驚いている。
それもそうだ。今の声を聞いた覚えは無い。つまり、この建物に来た二十一人の誰でもない。
恐らく、この声の主はこの通路の先にあった気配だ。戦うことも考えておかなければならないだろう。
『瑠間、戦うことになったら俺と代われ。お前はどう考えても戦闘向きの性格じゃない。』
守は、私は戦いが好きじゃないことを知っていたらしい。戦うことになったら守と交代しようと思う。
…代わる事が出来れば。
「二人はこの通路を抜けるまで明かりをつけておいて。」
『分かった。』
私はデュアとルソードを連れて、通路の先へと進んだ。




