第三百八十三話 ついて来れてない?完成度たけーなオイ!?
一話目。
マニアワナカッタ…
五人から聞いた話を整理する。
光、ルド、トーナの三人は、通路の途中にあった部屋を調べていたら閉じ込められ、部屋の床が抜けて滑り台のような管の中を滑ってここに来たらしい。
デュアとルソードは、岩からなんとか逃げて安心して座り込んでいたら、穴が開いて二人とも落ちたらしい。そして滑り台のような管の中を滑ってきたとか。
「でも、皆が来てくれたのは心強いよ。デュア、ちょっと剣になって。」
『分かった。』
『何故俺じゃないんだぁ~…』
悪いとは思ってるけど、なんとなくとしか言い様が無い。
まずは分身の術を使って、私を増やす。
「「「「「『『増えた!?』』」」」」」
「これが分身の術。」
「俺がいつもの方の守、そして、そっちがもう一つの人格の瑠間だ。」
説明もそこそこに、デュアを持って守の手錠と足枷の鎖を切る。分身すると手錠や足枷も増えるんだ…
更に、守にデュアを持たせて私の手錠と足枷の鎖を切った。
「よし、これで手と足は自由に使えるな。一応、魔法が使えるかを試してみてくれ。俺は能力を試す。」
能力の方は守に任せ、魔法をイメージして使う。
しかし、力が湧き上がることは無いし、火の玉も出てくる様子も無い。
「こっちは駄目みたい。」
「俺もだ。残った手錠と足枷を切るしかないのか?」
この部屋で魔法が使えないわけではない事は分かってる。さっき吹っ飛ばされたからね…
…フラルには後で仕返ししようかな?
「それはともかく、早いところここから脱出しようぜ。
デュアもルソードもいるんだし、お前らなら軽~く切れるだろ?」
『もちろんだ。』
『まかせろよぉ~う。』
分身の術を解き、左手でルソードの顔をつかむ。
両手にデュアとルソードを持ち、鉄格子をこれでもかと言わんばかりに切る。
捕まったり縛られたり吹っ飛ばされたりと、自分でも気付かぬ間に鬱憤が溜まっていたらしい。
あっという間に鉄格子は切り刻まれ、仕切りの役目も成さないものとなった。
「皆、切った鉄格子はちょうど良い長さに切ったから、もし良かったら武器として持っておいて。」
私は別に考え無しに切ってたわけじゃない。
皆に切れた鉄格子を持たせ、私も一応二本持っておく。
念のため、デュアとルソードも人の姿に戻して持たせておいた。
長さは八十センチくらい。少し長い気もするけど、リーチは長くした方が良い。短くするのは後でも出来る。
「さあ、さっさと行くよ。」
私は鉄格子の外にあった階段へ歩く。
皆は少し呆けていたけど、すぐに我に帰って鉄の棒を拾って来た。
七人の話もあったし、罠には気をつけていかないと。
ドン
「いてっ。」
階段を上がろうとしたら壁にぶつかった。
『何を言ってるかわからねーと思うが、瑠間本人も分かってない。』
うるさい。
上がろうとした階段をよく見てみる。
「どうしたの?」
「………これ、よくできてるよね…」
「え?何が?」
階段だと思っていたものは絵だった。
これだけを言えばなんで間違えたのとか思われるかもしれない。
けど、この絵は光の当たり具合、質感、それをとっても素晴らしいとしか言えない出来だった。本物そっくりだ。
「あれ?進めない。」
「ん?これ絵かよ!完成度たけーなオイ!」
「トリックアートみた」
「トリックアートって何ウサ!?」
光…そんな単語を言ったらフラルに訊かれることくらい予想してよ…
『そんなの予想できるか!』
(え?)
『いや、ちょっと言ってみたかっただけだ。
光はフラルに質問されたことが無かったからな。予想できなくても仕方ないさ。』
(まあそうだろうけど…)
しかし…これが違うとなれば、本当の出口はどこなんだろう。
今は部屋全体が魔法で照らされているけど、ドアの一つも見当たらない。
壁、壁、壁、壁、絵。あるのはこれだけで…
『…待った。その絵、ちょっと調べてみないか?』
(私も思った。)
とりあえず絵を調べてみる。
触ってみても何も無い。
叩いてみると…
「わっ!?」
回転扉のように絵が回った。
『やっぱりか…まさか回るとは思ってなかったが。』
(そうだね…)
五人の話を聞く限り、この場所の罠はやたら凝っている。
この絵は、ここに階段があると見せかけて実はただの絵で、何も無い。と思わせるのが目的。
しかし実はそこが唯一の出口で、何も無いと思っているわけだから調べるわけも無い。故にここに閉じ込められれば誰も出られないとなるわけだ。
…これは後付け的分析だけど。
ただ、私も守もこの絵が怪しいと思っただけだった。まさか回転扉になってるとは夢にも思わなかった。
『精々手がかりが見つかればいいな程度の期待だったんだけどな。』
(まさか正解とは…)
でも、回転扉の先は真っ暗で何も見えない。
今の私は魔法が使えないし、早く戻って…
…回転扉を押そうとした手が空を切った。




