第三百八十話 先に言われてた?相変わらずの好奇心!?
一話目。
ドン!ゴロゴロゴロゴロ…
落とし穴から少し進んだ道で大きな音が聞こえた。
後ろからだ。
「太郎、後ろ!早く逃げるよ!」
キャビがそう言いながら先に走っていく。
直接見ずとも音からして大体何が来ているか分かっているので、言われる前から走っていた。
「どうせ岩でも転がって来てんだろーーーー!!」
「大当たり!!」
やっぱりな!!
ってか、まさかこの塔罠だらけなのか!?
だとすると、これからも罠に注意しつつ守と地下への通路を捜さないといけないのか…
そうして走っているうちに分かれ道に当たった。
「T字路か…どっちに行くか」
ゴロゴロゴロ
「迷ってる場合じゃない!」
俺は急いで近かった右の道に飛び込む。
それから数人俺と同じように右の道に飛び込んできて、岩が壁に当たると目の前に柵が飛び出した。
そのせいで戻るどころか左の道には行けなくなってしまった。
「お~い!皆無事か~!?」
右の道に入ったのは俺、タカミ、火太郎、令音、デュア、ルソード、キャビの7人。
と言う事は、左の道にギーナ、フォルフ、光、移図離、リセス、ルー、タム、ルド、トーナ、レイ、津瑠の11人がいれば皆無事と言う事になる。
「あ、私がすり抜けて確認してくるからちょっと待ってて欲しいの。」
そう言えば令音はすり抜けが出来たな。
令音は申し出ると、岩をすり抜けて行く。こちらからは全く見えない。
「全員無事みたいだから安心して。向こうにも伝えてきた。」
岩からニュッと出てきた令音が言う。
「良し。ここから柵を破るのはきついし、もしかしたらこの道の先に地下への通路があるかもしれない。
向こうが地下に通じてる可能性もあるし、どこかで合流できる道があるかもしれない。だからこの道を進んでいこう。向こうにもそう伝えてくれ。」
「もうギーナがそう言って先に進んでたから、早くこっちも行こう?」
「お、おう…なんだ、先に言われてたのか。」
少し面食らいながらも、俺達は先に進み始めた。
待ってろよ、俊太、フラル、守。必ず助けるからな。
「はあ?二重人格?」
全ての事情を聞いた俊太の顔は、怪しいテレビショッピングでも見ていたような目だった。
『……お前、とうとう言っちまったか…』
(最初から言うつもりだったよ。そもそも、隠すのも無理があるんじゃない?)
『そりゃそうかも知れなかったが…分かった分かった。諦めればいいんだろ?』
(そうそう。)
「とうとう中二病にかかったのか?」
『俺が中二病だとしてもんな女々しい演技しねえよ!』
「だとしても、わざわざ女々しい演技しないだって。」
「……それを言われると言い返せねえな…」
「二重人格ってどんな感じ!?意思疎通とか意識の入れ替わりとかは!?」
フラルの好奇心が相変わらず凄い。
「詳しいことは後にしてもらって良い?こんな状況だしさ。」
と言って、まだ掛けられたままの手錠を見せる。
縄、目隠し、猿轡の三つは解けたけど、手錠と足枷はそのままになってる。
さすがにナイフで頑丈な手錠や足枷を切るのは無理だし、鍵があるわけでもない。
「確かにそれどころじゃないウサ…でも、ここから出られたら教えてくれるウサ?」
「もちろん、いくらでも。」
『……今の死亡フラグっぽいぞ。気をつけろ。』
(うるさい。)
確かに私もちょっとだけ思ったけど。
「死亡フラグっぽいな」
「死亡フラグって何ウサ!?」
あ~…俊太が余計なことを言ったから…
『俊太の自業自得だ。解説に加わる必要は無いから放っておけ。』
(…そうだね。それより、早く鉄格子を壊す手段を考えよう。)
『そうだな。今、魔法とか能力とかは使えるか?』
いつもと同じように魔法や能力を使ったものの、何も起きない。
(…ん?)
『どうした?』
(今、ちょっと風が吹いたような…)
かすかにだけど、魔法を使おうとした瞬間に風が吹いた気がした。
『地下なのにか?窓も無いだろ。』
(そうだけど…とにかく、まだ使えないみたい。)
気のせいだったのかもしれないので、気にしないことにした。
『そうか…なんでだろうな?
まさか、その手錠とか足枷とかに秘密があるのか?』
(なんでそう思ったの?)
『ああ…どっかの漫画で、海の力を宿した石で作った手錠をかけて、それで能力を使えなくしたって奴があっただろ?』
確かに、守の記憶の中にはそんな漫画を読んだものもあった。
(でも、だからと言って漫画を参考にするのは…)
『あのな、この世界自体が漫画とかみたいだろ。魔法とか能力とか…』
身も蓋もないことを言うね…確かにそうだけどさ。
(じゃあ、この手錠と足枷を外せば能力も魔法も使えるって事?)
『確証は無いけどな。』
確かにそれは考えられる。
(でも、手錠を足枷を外す手段が無いから魔法も能力も無しで鉄格子を壊す手段を考えないとね。)
『そうだな。』
私は守と相談しながら、また鉄格子を壊す手段を考えた。
「フラグって、なんでそう呼ばれ始めたウサ!?」
「そこまでは知らねえよ!」
…まだやってたんだ。あの二人。




