第三百七十五話 フラグ建設中?合流か!?
一話目。
大男は俺に見向きもせずに子供に向かっていった。今回の狙いは子供か。
やはり奴は早い。しかし、子供は難なく攻撃を避けて攻撃する。
「でかい図体してるくせに早いんだな!余裕だけど!」
子供に馬鹿にされ、大男は大人気無いことに向きになっているようだ。気配で分かる。
しかも攻撃が全然当たらないので、だんだんいらだっているように見える。その内俺にとばっちりが来なければ良いが…
「ぬう…!」
一瞬見えた大男の顔がものすごい事になっていた。あいつあんなに目つき悪かったっけ?
まだまだ余裕の表情の子供が後ろに下がった。
「さ~て、そろそろ本気出そうかな!」
明らかに調子に乗り始めている。
一見すると勝ち確定の状況、油断。だんだん負けフラグが増えてきたような…
…そう言えば、コイツは以前より少し遅くないか?前のダメージが残っているのか?
「「「分身の術!」」」
子供は三人に分身し、大男に三方向から切りかかる。
分身の術は持っているものも増えるらしい。刀も増えている。
大男は避けられない。これで勝負ありか。
フッ
「「「え?」」」
分身した子供が刀を同時に振った瞬間、大男の姿が消えた。
…何が起きたんだ?
俺にも子供にも何が起きたか分からない。
「ここだ。のろまめ。」
声がしたのは子供の真上。そこには大男が空中にいるのが見えた。
「「「い、いつの間に!うわああああ!!」」」
落ちてきた大男は、子供を落下した勢いのままに踏みつけた。
分身が消えて子供は一人になり、その一人は倒れて動かない。
「ふん、まんまとひっかかったな。ガキめ。」
大男はわざと全力よりも遅いスピードで戦っていたんだ。
子供の油断を誘い、隙を作るために。
以前のダメージが残っていると勘違いし、俺も油断していた。
大男は子供に手を伸ばす…捕まえようとしている?
…まさか、忍者を狙っている輩と言うのは…
いや、考えるのは後だ。それより、なんとしてでも子供を助けなければ。
魔法で強化し、大男に近付いて手を蹴って払う。
だがその攻撃は空を切り、気が付けば大男の気配は後ろにあった。
まずい!焦って強化を少なくしすぎたか…
「ぐあっ!」
首筋に一撃加えられ、俺は意識を手放した。
その直前に皆の姿が見えた気がした。
守がいなくなって数時間経った。
男に戻ってくると言って町から出て行き、そのまま帰ってこなかった。
気配察知がずば抜けているギーナやキャビが気配を探っても守の気配が見つからなかったので、守に何かあったのでは?と皆心配して森の中を探しているのだが…いまだに守は見つからない。
「皆、朗報よ。」
そんな中、ギーナが俺達に言う。
「見つかったのか!?どこだ!?」
「いえ、見つかったのは本人じゃなくて気配よ。今いきなり出てきた。」
台詞の前半でがっかりしたが、後半でおお、と歓声が上がる。
気配さえ見つけてしまえばこちらのもの。後はそれを辿っていけばいい。
まったく、見つけたら説教だな。他の皆からも色々言われるだろうから、半泣きぐらいは覚悟しとけよ?
「割と近いわね。もうすぐ着く。」
早いな。覚悟する時間が短くなったが、文句は言わせねえぞ?元々お前が悪いからな。
「あ、いたいた。守!どこに行って…!」
守を発見したと思われるギーナが、台詞の途中で表情が一変する。
まさか、何かあったのか!?
「あ、太郎!」
光が呼び止めるが、俺は止まらずに走る。
そこにいたのは守…だが、守は黒い服装をした子供と一緒に大男の肩に担がれていた。
あの大男は守が撃退した奴と同じだった。もう回復していたのか!
大男はこちらを一瞥し、フン、と軽く鼻を鳴らして踵を返す。
「待て!」
魔法を無意識に使っていたのか、いつもより速く走ることが出来た。
しかし、突然強い風が吹いて脚を止めてしまい、大男は森の暗がりに消えた。
大男が消えた場所を見ても、誰もいない。
「どこだ…!アイツはどこに消えた!?」
あたりを探し回っても大男はいない。
「落ち着いて!気配は消えてないわ!!」
ギーナの一声により足が止まる。
気配はさっきのように消えているわけではない。なら、探しようはあるということだ。
その事実を知った俺は落ち着き、皆のところに戻っていった。
この展開に一番驚いているのは作者だと言える自信があります。
構想段階とは全く違う展開に…やはりノリは恐ろしいですね…




