第三百七十四話 忍術の秘密?ついに子供は!?
一話目。
俺たちの口論が収まった後、瑠間も加わった五人で話し合うことになった。
あの空気の後だ。皆戦う気が無くなったらしい。
「まずは説明からしてもらおうか。その分身は何なんだ?」
「私は瑠間。守のもう一つの人格。」
「守?」
「俺のことだ。まだ名乗ってなかったな。」
言われるまで気付かなかった。三人の名前も聞いてなかったな。
「しかし、分身の術でもう一つの人格が現れるとは…驚いたぞ。」
「というか、セッシャはお主が多重人格者と言う事に驚いた。」
「某もだ。」
多重人格者なんてそうそういないからな。
「それ以前にだ。お主が分身の術を使えたことに驚いた。」
「それはセッシャも…」
「某も。」
「気配を使うことを見破れたからな。
詳しい原理までは分からなかったが、まさか成功するとは俺も思わなかった。」
「そこまで気付くとは…」
「では、ついでに忍術について教えるとするかの。
忍術、と言うのは人間の秘術の一種と言ったところか。」
秘術…
吸血鬼の一件が脳裏で再生される。間違っても良い思い出ではないな…
「誰でも使える訳ではない。習いさえすれば出来るものもおるし、一生かけても出来ないものもいる。
そしてお主が見破ったように、気配を使うものじゃ。これで忍術の説明を終えるとしよう。」
ってことは、俺が出来ても俊太とか光とかはできるかどうかは分からないのか…
ギーナは…難なくこなしそうだな。あいつは何か出来ないというところを想像できない。何食わぬ顔で影分身の術とかしてても驚かなさそうだ。
「しかし…ワシらの教育方針としては、まずは気配を消す事を覚えさせ、気配を操るということを出来るようにしてから忍術の修行としていたのじゃが…
どういう訳か、お主とこやつは気配を消す事よりも先に忍術が使えるようになってしまった。これも天性というやつかのう。」
「まったく、どういうことなのか…」
つまり、基礎が出来なくて応用が出来るという状態になっているという訳か。
ってか、気配ってどうやって消すんだ?
「某は先程できるようになったぞ!」
「おっと、そうだったな。
長、この未熟者は先の戦闘でとうとう気配を消す事ができました。」
マジでか…分身の術を使うために集中しすぎて気付かなかったぞ。
「おお、おめでとう。これで未熟者卒業じゃな。」
「やった!」
子供は嬉しそうにはしゃぎまわる。
よほど鍛えていたのかとんでもないスピードだ。うっかりぶつかったら吹っ飛ばされてしまいそうだ。
なんで俺って人外扱いされるんだ?この子供の方がよっぽど人外だ…
「…忍者って、凄いんだね…」
「ああ…」
子供でも忍者。それを思い知った俺たちは、素の状態では目で追うのがやっとのスピードを出す子供を遠目から見ていた。
あの後、俺の口論が無ければ子供が一本取っていたということだったので、俺たちの勝ちという事で道を通してもらった。
今は里の外の森を歩いている。里を隠す結界はすでに抜けているとか。
ってことは、皆が俺の気配を探れるようになったという事だ。これでお互い気配探っていけばすぐにでも合流できるだろう。
「しかし、あの里は結構森の奥にあったんだな。まだ森を抜けないとは…」
既に森の中を歩き続けて結構時間は経っている。
日は暮れかけていて、空は赤くなってきた。
「それくらい奥になければ、すぐに見つかるぞ。」
「それもそうか。」
『まあ、隠れ里だしね。』
なお、俺の分身の術は数分と持たずに瑠間は消え、俺の意識の中に戻ってきた。
まだまだ精進が必要か…
「ところで、守…と言ったか。
待っていると言うお主の仲間の気配は近いか?」
「ああ。皆固まってるみたいで、全員こっちに近付いてる。」
あの中には戦えない奴もいる。だから機動性を犠牲にして安全性を取ったのだろう。
「そうか…なら、某の案内もこれまでか。」
「え?どうせなら最後まで送ってくれよ。」
「そうは行かない。里の場所を特定されてはまずい。」
それもそうか。
恐らく、もし誰かにつけられていたら…ということを考えたのだろう。まあ、そんなことをする奴らじゃないがな。
「ならしょうがない…と言いたいところだが、気付いてるよな?」
「もちろん。むしろ気付いてないとでも?」
と言った瞬間、子供は草むらに手裏剣のようなものを投げた。おお、容赦無いな。
手裏剣が草むらに到達する直前に草むらから一つの影が移動した。
「……ばれていたか。」
それはいつぞやの大男だった。よくもまああんな巨体で隠れられたものだ。
ってか、以前のダメージは回復してるのか…といっても、以前倒せたし、今回は子供もいる。
それに、時間が経てば皆も来る。もう負けようが無いな。これは。




