第三百七十話 どことなくコレジャナイ?なんで俺が!?
二話目。
最近は難産続き。
「何故忍術のことを知っている!?」
「某ですらその存在を聞いたのはつい最近の事だと言うのに!?」
あ~…知ってちゃやばいパターンでしたか。
「……どこで忍術の存在を知った?」
ごまかさない方が良いな。多分。
「故郷の創作物でちょっとな…」
だってばよとか。
「何!?創作物で忍術が!?
まずい…セッシャ達の企業秘密が駄々漏れではないか!!」
企業秘密だったのか。そりゃ焦るわな…
…一応安心はさせとくか。俺に飛び火したら敵わない。
「とは言っても、俺の故郷は別の世界でだし、その世界ではある訳が無いって考えられてるから大丈夫だと思うぞ?
あの世界では、魔法の存在も架空のものだしな。」
俺の言葉を聞いた三人の様子は、焦ったものから一変。安堵したものになった。
「って、お前は異世界の住人だったのか?」
「ああ、そうだが…なんで目が輝いてるんだ?」
「ワシ等のご先祖様は異世界人と聞いているからのう。
ひょっとしたら、お主はご先祖様の世界の住人なのかもしれぬと思ったんじゃ。」
そう言えば、ここは異世界だと言うのに昔の日本を彷彿とさせるようなものがある。
今座っている部屋も畳が張られているし、俺は座布団の上で座っている。
昔の日本にタイムスリップした、と言われても違和感を感じなかったかもしれない。
「確かに、ここには昔の俺の故郷にあるものに似たものがたくさんあるが…」
しかし、微妙な違和感がある。
畳は使っている植物が違うのか、触ってみると微妙に違和感があるし、座布団はクッションのようにふかふかすぎる。
なんと言うか、コレジャナイ。
「なんというか…微妙に違うんだよな~…
まるで洋風の物を見よう見まねで和風っぽくしました、みたいな感じがして…」
「ふむ…では、違う可能性もある…と。」
「まあそうなるな。」
異世界から来たって言うご先祖様は、日本の物の作り方がうろ覚えだったことも考えられる。
しかし、違う可能性が無い訳でも無い。
『…あー、あー、もしもし。聞こえる?』
と考えていると、どこからか声がした。
女神様ではない。瑠間だ。
(聞こえるぞ。こっちも聞こえるか?)
『うん、聞こえる。』
伝えたい事を考えるだけでも伝わるらしい。
『皆が待ってるから、そろそろ帰らないとまずいと思うんだけど…』
(…あ。)
完全に忘れてた。俺は元々男に戻るためにその場を離れていたことを。
戻るのは一瞬だと言うのに、まだ戻っていないので捜しているかもしれない。
早く戻らないと。
「もうこの話は終わりにしないか?俺、仲間を待たせてるからさ。」
「む…それなら仕方あるまい。その者を出口に案内しろ。」
「それなら某がやる!それくらいの事で先生が出てくる必要も無い!!」
「だが、最近はセッシャ達を狙う輩がいる。安全と言うわけでもないのだぞ。」
「それも修行の一環!いつまでも未熟でいるわけにはいかない!!」
「……そこまで言うなら、良いだろう。
ただし、この里を出られればな…」
里を出られれば?
…ものすごく嫌な予感がするな…
「それはどういうことなんだ?」
「何、簡単な試験だ。
この里の忍者全員が、お前を捕まえようとする。
それを客人を連れてうまく突破し、無事に里から出られれば合格。
出られなければその時点で他の者が客人を案内する。気配を消す事が重要になってくるぞ。
…客人もな。」
俺もかよ!
なんで俺が隠密術なんて鍛えなきゃならんのだ。俺は忍者でもなんでもないのに…
「そりによって某が一番不得意とする気配隠し…狙ってはいないか!?」
「もちろん狙っている。この機会に習得してもらいたいものだ。」
俺、気配隠すとか出来ないんだけど。
うまくこいつが隠せたとしても俺の気配で見つかりそうなんだけど。
「そういうことだ。精々頑張れよ。未熟者。」
「くっ…未熟者扱いできるのも今の内だぞ!
今回、先生達をぎゃふんと言わせてやるからな!!」
「…その意気だ。頑張れよ。」
「何か言ったか!?」
「ああ。その程度で大声を上げるとは、やはり未熟者かと言った。」
「くぅ~!」
小声で言ったので子供には聞こえなかったようだが、俺にはバッチリ聞こえていた。
良い先生だ。しっかり生徒を思いやる事ができている。
…もっとも、その生徒は気付いてないようだがな。
「では、準備があるので少し待って頂けないか?」
「出来るだけ早く帰りたいんだがな…まあいいか。」
俺が了承の返事を出すのと同時に、男は消える。
毎回思うんだが、どうやって消えたり現れてたりしてるんだ?




