第三百六十九話 まさかの故障?辛辣な長!?
一話目。
「答えろ!お前は我々を狙う”奴ら”の一員なのか!?」
”奴ら”?何の話をしているんだ?
……まさか、またあの三人組じゃないだろうな。いや、あの三人にはこいつらの気配を見破る実力が到底あるとは思えないしな…
俺ですら分からない気配だ。気迫で逃げていく程度の連中に分かるものか。
「……」
「まさか図星か?図星だから答えられぬのだろう!!そうだろう!!」
いや、何言ってんのか分からないから喋れないだけだ。むしろ図星とはかけ離れている。
「…もうよい。これ以上言ってもこの者を混乱させるだけじゃろう。」
「しかし!
では、何故この者が私の弟子に近付いてきたのですか!?」
「良いと言っておる。
この者が何も分かっていない様子なのは、お主も気配で分かるじゃろう。」
「む…失礼致しました。少し頭に血が上っていたようです。」
気配?こいつらも気配察知が出来るのか?
「その者を開放せよ。」
………?
何がしたいんだ?
「……格子が消えぬのう。故障かの?」
「………そのようで…」
故障?
「しょうがないな二人とも。某がなんとかするぞ。」
と言って子供は木の格子を殴る。
が、木の格子は少し揺れただけだった。
「くぅ~!いってぇ~!」
あ、やっぱ壊す気だったのか。
おぅ…手が真っ赤になっていて痛そうだ。
「この未熟者。素の力では我らが長でも簡単には壊せぬのだぞ。
それをお前が壊せるものか。」
「なあ、これ、壊して良いのか?」
「ん?ああ、どうせ壊れたものじゃ。こうなっては直せんし、どうなっても壊されるのがオチじゃが…
お主にこれが壊せるかの?このワシですら…」
老人の話を聞かずに、格子の硬さを調べるためにノックの要領で叩く。
木の格子だしそこまで硬くないかな~とか、こいつらは忍者モドキの癖に木を素手で壊す事もできないのかとか思っていたが、そんな見た目とは裏腹に格子は滅茶苦茶硬かった。この硬さだと魔法がいるな…
よし。硬さも分かったし…
バキィン!
魔法も使って思いっきり殴ると、大きな音を立てて格子が壊れた。
もはや話が逸れて長々と喋っていた老人も残りの二人も固まり、辺りは静まり返った。
「…女子だと言うのに、なんて力じゃ…」
女子言うな…あ、まだ戻ってなかったんだった。
無事牢屋から抜け出せた俺は、半ば化け物のような扱いをされながら自らを長だと言う老人の家に来ていた。
別に素の力で打ち破ったわけでもないのに、ひどくね?
「一応問おう。お主はこの里に危害を加える気は無いな?」
「そりゃあ無いが、なんの理由も無しに牢屋に入れるのは少しばかり酷いんじゃないか?」
「それに関しては詫びる。こちらの事情で迷惑をかけてしまい、すまなかった。
ワシ等の立場上、まずは全てを疑わなくてはならないからのう。」
なかなか難儀な立場にいるらしいな…
「で、説明はあるんだよな?」
「もちろん。
ワシらは忍びの一族でのう。人はワシらを”忍者”と呼ぶ。」
マジで忍者だったのか。異世界って何でもアリだな…
「そして、この里はそんな忍びの一族が住まい、鍛錬もする場所なのじゃが…
世の中の者はワシらを良く思っていないものが多い。言わば密偵、スパイのようなものじゃからな。
そんなワシらが住む場所が見つかったら非常にまずい事になる。
じゃから簡単に見つからぬよう、術で結界を張っておるんじゃ。
この場所の気配はしない上、外から目視する事は不可能。まさに隠れ里じゃな。」
やたら手が込んだ結界だな…
だが、逆に言えばそれほどまでしないといけないって事だろう。大変だな。
「この里に住んでいるものは皆忍者だぞ!もちろん某もな!!」
「でしゃばるな。まだ未熟者だろうに…」
「それより、お主はこの子を気遣って近付いてきたのじゃろう?
気配が小さければ、よほどの重傷を負ってるときもあるからのう。
そして、近付いたところをそこの未熟者二号が気絶させたと。」
「二号…返す言葉もありませぬ。」
未熟者二号…なかなか辛辣な長だな。
しかし、本当に忍者だったとはな…待てよ?
「なあ、お前等は忍術とかは使えるのか?」
”忍術”という単語を聞いた三人は、ピタリと動きを止めてこちらを凝視し始めた。
…あれ?ひょっとして地雷だったか?




