第三百六十八話 納得しきれない?何故その単語が!?
一話目。
なかなか筆…キーボード?指?が進まず遅れました。
…どれが正しいんだ?
もう一人の私は、落ち着いたと思ったら考え事を始めたみたいだ。
言ってる私も良く分からない超理論だから、理解に時間がかかるのは仕方ない。
「……なあ、名前を決めないか?」
…何の?
「あ、悪い悪い、説明不足だったな。便宜上でも良いから、俺たちの名前を決めておこうと思ったんだ。」
なるほど。
私ももう一人の私も高壁守。同一人物だからね。呼び名が無いと色々と不便そう。
「俺が守で、お前が瑠間な。」
……納得しきれない…
こうなるのはなんとなく分かってたけど、今まで使ってた名前が使えなくなることに抵抗がある。
「…納得しきれないのは分かるが、俺は瑠間なんて名乗りたくないんだ。思いっきり女の名前じゃねーか。」
確かにもう一人の私が瑠間って名乗るのも変かも…
なら仕方ないね。
「分かった。それで良いよ。」
「あと…一つ思ったんだが、皆にこのことを話したほうが良いか?
俺は話したほうがデメリットは無いと思うんだが…」
まあ、黙ってた場合めんどくさいことが起きそうだもんね。
「そうだね。色々と訊かれそうだけど」
「それは致命的なデメリットだ。やっぱ止めとこう。」
「え~…確かにそれはめんどくさいけど、一回で済むんだし…」
「甘い、甘すぎるぞ。その一回がどれほどの地獄か、瑠間も知ってるだろ。」
「そりゃ知ってるけど…いずればれるんじゃない?」
どうやら私と守の間には考え方の違いがあるらしい。
同一人物なのに精神的な性別が違うだけでもここまで差があるんだ…
「なに、演技力が高いってことでごまかせば良いだろ。」
「そんなテキトーな…」
「ごまかせることができればどうと言う事は無い。」
「そりゃそうだろうけど…」
…決めた。人格が私に入れ替わったら速攻ばらそう。皆はいつまでもごまかす事ができる程甘くないからね。
「とにかく、俺は言わないぞ。」
「…わかった。で、そろそろ目覚める時間じゃない?」
「え?あ、そうか。ここ夢の中だったな。」
そう、ここは夢の中。
守は気を失う、または眠って夢を見たからここに居る。
…そのタイミングで私がここに呼んだからね。
「そう言えば、気絶した時の事だが…」
気絶だったらしい。でもなんで…
「あの時は全く気配が無かったんだよな。一体なんで…」
気配が無かった…
「って、気配は消せるんじゃないの?漫画とかみたく。」
「…………その発想は無かった。
確かに気絶する前にアイツは…だとすると、もう一人居て…」
私と守の記憶の自動共有は無いから、守が何を言っているのかが分からない。
ぶつぶつと何かを言っている守の姿はどんどん薄れていって、消えた。
…眠った時に呼んで、守が表に出てる時の事を訊こうかな?
「つまり、俺はに…アレ!?ここどこだ!?」
考え事をしている最中に目が覚めた。
どこかの屋内で、床は石。
そして…間の前には木の格子があった。
牢獄…なのか?
「気が付いてみたいだな。」
突然した声の方向を見ると、畳部屋で座布団に座っている男が居た。恐らく見張りだろう。
畳と言い、木の格子と言い、随分と和風だな…
「例の者の目が覚めたと伝えて来い。拙者はここに残って見張る。」
「承知。」
畳部屋に突然忍者のような服装の男が現れ、一言喋ったと思ったら消えた。
その間気配を探っていたが、今消えた奴どころか今畳部屋に座っている見張りでさえ気配が感じられない。
瑠間が言っていた通り、こいつらは皆気配を消しているのか?
…いや、この建物の外からは少し気配がする。少し小さい気配だが。
「ようやく目が覚めたようだな。」
気配を探っていると、さっきの忍者モドキのように突然老人が現れた。
その隣には二十代くらいと思われる男と、気絶する前まで話していた子供も居た。
二十代くらいの男と老人は気配が無いが、子供は僅かに気配があった。
三人を見ていると、老人が訊いてきた。
「単刀直入に訊こう。お主は密偵か?」
密偵?なんでそんな単語が出てくるんだ?
疑問符しか出てこない。一体俺が何をしたと?




