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第三百六十話 お前が求める俺じゃない?そりゃわかる!?

一日またいで一話目。

なんかやたらと書きあがっていきますね…

 ってことは、この人が外道な私…!せっかくの機会だし、説教でもくらわせて…!!


「でも、お前が求める俺じゃない。」


 …どういうこと?


「お前、実は記憶喪失になったのは一回だけじゃないんだ。」


「……記憶喪失なんて、そうポンポン起こるものなの?」


「違う違う。記憶喪失になったのは二回だけだ。

 ただし、”連続”でな。」


 二回連続で記憶喪失…?


「…ここまで言っても察せ無いか。

 つまり、俺も記憶喪失なんだよ。だから、お前が望んでいる全ての記憶は持ってないんだ。

 ……少ししかな。」


 なるほど。分かってきた。

 つまり、私は一度記憶喪失になって、記憶を全て取り戻す前にまた記憶喪失になってしまった。

 そして、一回記憶喪失になって記憶を取り戻しかけていた私が、今目の前に居る私という訳。納得はいった。


「でも、なんで記憶を失う前の私がここに?」


「夢だからな。」


「…簡潔な回答、ありがとうございます。」


「まだ言い切ってないぞ。夢だからお前に会えた。

 俺はお前に会いたかったからな。」


「会いたかった…?」


「ああ…お前に言いたいことがあってな。」


「…何を言い出すかと思えば、言いたいこと?

 まさか、私を口説くつもり?」


「……んなわけないだろ。どこの世界に自分を口説く奴があるか。」


 安心した。彼女も私と同じように正常らしい。


「で、俺が言いたいことは一つ。


 ”自分を信じろ”。


 …以上だ。」


「自分を信じる…?

 まるで意味が分かりませんが。」


「おいおい、俺ってそんなに察しが悪かったのか?

 これじゃあ俊太も馬鹿に出来ないな…」


「なっ…じ、自分をお前呼ばわりする人に言われたくありません!」


 俊太さんは知って間も無い私でも分かるくらいには馬鹿だ。

 それと一緒にされ、少しカチンときた私はつい言い返してしまった。


「それは関係ないだろ!?というか、それを言うならお前も自分相手に敬語使ってんじゃねえか!!」


「粗暴な口調のくせに!」


「丁寧すぎるくせに!」


 どちらかが話すたび、口喧嘩はヒートアップしていく。

 しかし、それが私にはどこか楽しいものに思えた。彼女も心なしか楽しそうだ。


「大体、なんでわざわざこんな長い道を歩かせたんですか!

 貴女、会った時の感じからして完全に待ちくたびれてたでしょう!?」


「う、うるさい!いきなり話を聞いてくれなんて言われても聞いてくれるやつのほうが少ないだろ!!」


「だからと言って長すぎませんか!?ここに来るまでどれだけかかったことか…」


「やかましい!そもそも、こんな事をしなきゃならない羽目になったのは全部お前のせいなんだよ!!」


「へー!それはなんででしょうかねー!?ぜひとも教えて頂きたいですよ!!」


「お前が自分を信じなさ過ぎるんだよ!!」


「…え?」


 予想すら出来なかった言葉に、私の勢いが止まる。

 自分を信じなさ過ぎる?


「記憶があろうと無かろうと、お前はお前だ!

 なのに、なんで信じないんだよ!!

 信じられないからと言って悪い方向からしか見ず、全く良い方向から見ようとしない!!

 何か事情があったのかもしれない、そんな考え方すら出来ないんじゃ、俺が一言言いたくなっちまうのも無理ねえだろ!!」


 …全く考えもしなかった。

 悔しいけど、全部この人の言うとおりだった。

 私は記憶を取り戻す前の自分の事情なんて考えられず、ただひたすらに周りのことしか考えていなかった…

 要するに、私は周りだけを見て、自分を全く見てなかったんだ。

 記憶を取り戻すのを手伝ってもらっていることに引け目を感じて、迷惑をかけないということにこだわりすぎていたのだ。

 だから迷惑をかけていた可能性に気を取られて、他の事を見てなかったのかもしれない。


「…全部お前に気付かせたかったんだが、結局俺が言っちまったな。

 ついでといっては何だが、もう一つ言わせて貰う。」


 口を滑らせて頭が冷えたのか、一気に冷静になった彼女が落ち着いた口調で言う。


「なんですか?」


「友達なら迷惑かけても良いだろ。その分友達に迷惑をかけてもらえればいいんだからな。

 それでおあいこ。どっかで聞いた言葉ようなだけど、そうだろ?」


「…そうかもしれませんね。

 って、それは単に言いたかったから言っただけでは?」


「ハハッ、ばれたか。

 でも、自分が考えてる事くらいお見通しだってことも忘れるなよ?」


「……貴女には敵いませんね。」


「…実は全部口に出てたんだがな。そりゃわかるっての。」


「え!?本当ですか!?」


「それは企業秘密…おっと、もう時間らしいな。そろそろ夕食だから起こされるぞ。」


「そうなんですか…もう少し、こうして話したかったんですが。」


「俺もだ。俺が喋れるのはこれで最後だしな。」


 …最後?

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