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第三百五十五話 決めてたのに?ドジ最高!?

一話目。

「突然だが、このクラスに転校生が来た。

 今から紹介する。教室に入ってきていいぞ。」


「はい。」


 翌朝。私は転校生として南凧野高校のとある教室の前に居た。

 以前から通っていたらしいけど、覚えていないし思い出せない。例によって記憶喪失のせいだ。

 事情を知ってる第三者がこの光景を見れば疑問に思うはずだ。

 何故なら私は昨日の話し合いで、記憶を取り戻すまで仮病で休むと決めていたはずだから。

 では、何故この高校に転校生としてきているのか。その理由は昨日の夕飯の会話の中にある。







「守、明日以降の学校はどうするんだ?」


 夕食中、記憶喪失の報告が済んだ後のこと。父さんがそう訊いてきた。


「それなんですが、習ってたところも思い出せないし、皆に相談して普段通りに通うって言う手も何故か皆から反対されたから、仮病で休む事にしました。」


「……確かに、授業内容が思い出せないのではしょうがないかもな。

 …あと、その姿では…」


「何か言いました?最後の方聞こえませんでしたが。」


「いや、気にするな。

 しかし、本当に良いのか?」


「何がですか?」


「学校に行けば、なんらかのきっかけで記憶が戻ることもあるんじゃないか?

 半年弱とはいえ、記憶を無くす前に通っていた場所だからな。」


 確かにその可能性はある。

 でも…


「でも、普通に通うのはまずいんじゃないですか?あそこまで反対するなら、よほどの事情があると思うんですが…」


 いつも通り通うのは駄目ですか?

 と未練がましく言ってみたけど、返ってきたのは強い反対だった。


「…性別か。」


「また何か言いましたか?」


「いや、なんでもない。その辺に関しても心配するな。俺が校長に話をつけて、守を転校生として通わせる事にする。」


「はあ…分かりました。」


「…敬語は止めてくれ。今までタメ口だったから慣れない。あと、リセスと紛らわしい。」


「え~…無理です。」







 という訳で、私はこの高校の制服を着て四人には何も言わずにここにいる。

 着慣れた制服のはずなのに新品みたいに綺麗だったり、値札が付いてたりしたけど…まあ気にしなくて良いかな。

 ずっと回想してたけど、先生に呼ばれてたことを思い出す。この間二秒だったので心配無い…なんちゃって。

 返事してから数秒経っても入らなかったけど、緊張してると思われたのか(実際に緊張はしている。クラスの皆は覚えていないので、転校生になった気分だ…って、本当に転校生っていう設定なんだよ!)、幸い先生に怪しまれる事は無かった。生徒は教室の外からだと分からなかったけど。

 とにかく、これ以上待たせるのも悪いので教室に入る。

 教室に入り、歩いている間に教室の中からあの四人を捜してみる。

 四人は開いた口がふさがらないと言う様子だった。

 そして先生の隣に来て、挨拶を始める。


「今日からこのクラスでお世話になる高壁たかかべ瑠間るまです。

 皆さん、よろしくおねがいしま”しゅ”!」


 ………

 …噛んだ…

 最悪……めちゃくちゃヘコんだ…

 テンションだだ下がり…せっかくあの四人を驚かせられたのに…


 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


 うわっ、びっくりした。

 少しの静寂の後、何故かクラスが歓声に包まれた。

 そして、ある生徒は言った。


「ドジっ娘…最高!」


 私はドジっ娘じゃない。

 今回はたまたま…だと思う。実際今までドジ踏んでないし…






 次の休み時間、やはりと言うべきか、質問責めに遭っていた。

 思っていたより落ち着いて対応できたのはそうなる覚悟があったからか、それとも前にもあったのか…それは分からないけど、私はある質問に答えかねていた。


「名字って高壁だったよね?高壁君とどういう関係?」


 あ、間違えた。その次だった。


「はい、親戚ですが…」


「へぇ~、じゃあ高壁君と顔が似てるけど、親戚にしても似すぎてない?」


「ってか、前に転校してきたルーマさんとも似てるよな。髪を染めればそっくりだ。」


 …ルーマさんって誰だろう。

 あと、親戚にしても似すぎてない?なんて言われても…どう答えれば良いの?

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