第三百五十一話 思い出していない重要な事?やっぱり嘘か!?
二話目。
守はまだあのことを思い出せていない…
思いっきり笑った後、俺たちはあっさり和解していた。笑いの力ってすげえ。
既に自己紹介を終え、ルクアもあっさり皆に打ち解けた。和気藹々とした空気となっている。
「高壁君は、本当に記憶が無いんだよね…」
「え?ああ。そうだが…」
あいつらの中から、一人の少女が出てきた。
しかし、高壁”君”?俺、こんな喋り方だけど女だぞ?なんで君付けなんだ?
…記憶を無くす前の俺は男っぽい性格だったのか?こんな喋り方だし。
「じゃあ、私と付き合ってたことも忘れたんだよね…」
……はい?
「あ、悪い。ちょっと聞こえなかった。もう一回言ってくれ。」
「え!?あ、うん。私と付き合ってたことも忘れたんだよね?」
………はい?
あれ?この子は女だよな…そんで、俺も女。
…………マジで?
記憶を無くす前の俺って、そういう趣味があったのか?
うわ、引くわー。自分のことだけど引くわー。
「はいそこ、さらっと捏造しない。」
「イテッ。」
ギーナが津瑠に軽くチョップする。
「なんだ、捏造だったのか。
あー、びっくりした。記憶を無くす前の俺にそんな趣味があったと思ったぞ。」
「「え?」」
…なんだその呆けた顔は。
まさか俺は男だったのか?って、そんな訳あるか。
「………ああ!そう言うことね!分かった分かった。
貴女にそんな趣味は無かったから安心して!!
……あと、ちょっと来て。」
「?」
ギーナが津瑠を引っ張って、なにやら小声で話し合っている。
こういう場合はあまり踏み込まない方が良いだろうし、ほっとくか。
…と思っていたら、ギーナはルクアと俺以外の皆を呼び始めた。なんか大事になってないか?
「なんでしょうね?」
「さあ…?」
マジでなんなんだ?
さすがに気になるので、少しだけ聞き耳を立ててみ…ようとしたら解散した。
「なんだったんだ?」
「ああ、守には関係無いことだ。気にしなくても良い。」
…怪しい。太郎の目が完全に明後日の方向を向いている。
「それより、守の記憶を取り戻す方法を考えなきゃならないだろ?まずはそっちだ。」
あからさまに逃げてやがる。
しかし正論でもあるので、その意見にのっからせてもらおう。
「確かにそうだな。
さて、どうやって記憶を戻すか…」
「ほっといても勝手に戻るんじゃねえか?」
「何もしないで待つより、なんかして早く取り戻しておきたいだろ。」
「それもそうか。」
「それに、今の俺は戦えない。
デュアとルソードを使って、どうやって戦ってたのか…全く思い出せないんだ。」
「…それはまずいな。」
今の俺に戦う術は無い。
デュアとルソードは背中にしょっただけで分かるが、重い。
それを振り回せるくらいなので、力はそれなりにあると思うが…
力があっても、いかなる戦いでも勝てるとは限らない。
戦術のせの字も無い今の状態では、戦うことすらままならないだろう。
「…あ、そうだ。戦いといえば、守はいつも戦いが終わったらするポーズがあったな。」
「ポーズ?」
ポーズ…そんなのがあったのか?
喋る前の俊太が一瞬だけした表情が気になるが…
「そうだ。ダサいって何回も言ったんだけどな、それでも止めようとしないから恐らくなにか思い入れでもあったのかも知れねえな。
それで記憶が戻るかもしれないぞ?」
俺、そんなことしてたのか?
とはいえそんなに思い入れがあるなら、記憶が少なからず戻る可能性がある。やってみる価値はありそうだ。
「ちょっと、そんなのなかっ…あ、あったわね。」
ギーナが何かを言いかけたが、中断して肯定する。
今絶対に無かったって言おうとしたよな。なんか雲行きが怪しくなってきた。
「なあ、そのポーズとか言うの、でっちあげじゃないだろうな?」
「…そんな訳無いだろ。じゃあ、そのポーズを教え」
「させませんよ!!」
と言ってリセスが止める。
さっきも思ったが、やっぱり俺と似ている。
「守さんにそんなことさせたら、私がしたようなものじゃありませんか!
守さん、そんなポーズ存在しませんからね!?」
薄々気付いてはいたが、やっぱり嘘だったのか。
「チッ、おしかった…」
「おい、何がおしかっただよ。」
バシン!
と言って強めに俊太の頭を叩く。
「いってー!なにすんだ!自分の馬鹿力くらい自覚しろよ!!」
「うるさい。それと女相手に馬鹿力言うな。」
「女ってオメェ」
「俊太、ストップ。」
「…悪かった。」
何を言いかけたのかが気になるが、この場では追求しないことにしよう。
…この場ではな。
「それより、早く記憶を取り戻す方法を話し合おう。なにをするにも記憶が戻ってないと不便だし、問題もある。学校とかな。」
学校…俺は学校に通っていたのか?
…全く思い出せない。さっきまではあんなにポンポン思い出せてたと言うのに…
とにかく、記憶を失う前の俺のことを知っている奴らがたくさんいる。多少心配な部分もあるが、心強いものだ。
今はあの一行が頼りです。
…心配すぎる。




