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第三百四十六話 何も分からない?お前だよ!?

四話目…になるんですか?

今回の話を見るに当たって注意。守は女のままです。

 

「……ここは…」


 目が覚めた。

 天井があるということはどこかの建物の中なんだろうけど、それ以外は何も分からない。


「目が覚めましたか?」


 声の方向を見ると、そこに一人の青年が立っていた。


「…貴方は誰ですか?」


「俺の名前はルクアです。倒れている貴女を見たときは驚きましたが、一体どうしたんですか?」


 倒れていた…何故?

 全く思い出せない。ならその前は何を…!


「うっ…」


「どうしました!?」


 頭が痛い。

 何も思い出せない。

 何故倒れていたのか、何をしていたのか。


「…全く思い出せません。」


「……そうですか。では、自分の名前は言えますか?」


 名前………あと少しで思い出せそうなのに………


「………」


「…言えませんか。」


 必死で思い出そうとしていると、記憶のようなものが頭の中で再生された。これは…記憶の断片?

 目の前には男の人、その後ろにはこちらを見る数人と、三人くらいの倒れた人がいた。

 そしてその時、自分は言った。


『…私は…ルーマ。ルーマです!』


 ルーマ…それが私の名前…


「…私の名前は…ルーマ。」


「ルーマさん…ですか。良い名前ですね。」


 ルクアさんは少し微笑みながら言う。

 何故か少し嬉しい。まるで自分で名前をつけたみたいだ。


「他には何か覚えていますか?」


「…いえ。何も。」


 思い出せたのは今の光景だけで、他はと言うといくら考えても思い出せない。

 しかも今の光景がどこのものなのか、視界以外の情報は何も無い。

 これはまさしく…


「やはり、記憶喪失でしょうか。」


 私はその言葉に頷く。


「でも、ひょっとしたら何かのきっかけで記憶を取り戻せるかもしれません。

 今自分の名前を言えたのも、記憶が少しだけ戻ったからなので。」


 しかし、希望はある。

 今のように何らかのはずみで記憶が戻ってくるかもしれない。

 そしていつか、全ての記憶を…


「そうですか。では、俺も手伝いましょう。

 せっかくここまで助けたんです。だったら、最後まで助けますよ。」


「乗りかかった船、というわけですね。」


「お、うまいこと言いますね。」


 ルクアさんは悪い人では無さそうだ。

 そう思った私は、どれだけ掛かっても完全に記憶を取り戻すことを決意した。







『…守、もう良いぞ。』


「え!?誰ですか!?」


 ルクアさんが部屋を出て行ってしばらくすると、どこからか声が聞こえてきた。

 しかしその声は耳を通してではなく、頭に直接語りかけているという感じだった。テレパシーだと思う。

 というか、守って誰?


『俺達の主の事だぁ~、どうせ今のは演技なんだろぉ~?』


 何この喋り方。

 それより、今出てきた単語、”主”というのが気になる。

 主って誰の事?

 …いや、私には関係無いことだと思う。私は演技なんてしてない。


『…無視は傷つくのだが…』


「まったく…無視なんてひどい事をしますね。

 誰だか分かりませんが、返事してあげたらどうですか!?」


『『お前だろう!!』』


「え?」


 どこから入ってきたのか、私が寝ていたベッドの横に髪と目の色が特徴的な二人の子供が居た。

 ドアを開けた音すらしなかったのに一体どうやって…


『どうしたのだ守!まさか本当になにもかも忘れたのか!?』


「だから、その守って誰なんですか!?

 私は”高壁守”なんて知らな…!!」


 高壁…守?

 自然に口から出てきたフルネームに、私は驚いた。

 記憶を失って数分、私はそんな名前は聞いていなかった。

 まさか、”高壁守”は私の記憶を失う前の…

 …どうあれ、間違いなく私が失った記憶の鍵を握っているのは間違い無い。

 これは二つ目の記憶の欠片。

 そして欠片が集まれば、私の記憶は…!


『…おい。我もルソードも守の名字までは言っていなかったぞ?やはり本当は…!』


 テレパシーが途中で途切れ、目の前の二人の子供も消えた。


 ガチャ


 部屋にルクアさんが入ってきたのはそれとほとんど同時で、子供が消える方が僅かに早かった。


「なにか話し声が聞こえましたが、部屋に誰か居たんですか?」


「…いえ、気のせいです。」


 今の子供もテレパシーも、失われた記憶が生み出した幻だろう。

 そう思った私は、これ以上ルクアさんに心配を掛けまいとそのことを隠した。

 …記憶の欠片も一緒に。

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