第三百四十五話 奥の手を使う?衝撃のラスト!?
一話目。
今書かなければならない気がしたので執筆、そして投稿。
振り回された二振りの剣を見たストーカーは目を丸くする。
「へえ…それは名剣デュアとルソード…まさかそれを軽々と振り回すなんてね。」
ストーカーを警戒させるという目的は達成したので、俺は止まって二振りの剣を鞘に収める。
「…何故剣を収めた?」
「お前ごとき、剣を使わなくても充分だ。手入れが面倒なんでね。」
そして挑発。挑発は相手の隙を少なからず増やし、自身の心の余裕にもつながる。
手入れと言っても、メンテナンスは人の姿になった二人に飯を食わせれば終わる。だが、ストーカーがそのことを知るよしも無い。
「馬鹿にしやがって…!」
先程の威嚇で動揺したのか、ストーカーは簡単に挑発に乗ってきた。
「フン、やはり所詮は小物か。」
「なんだと…!!」
更に挑発。すると、ストーカーは突然どこからかナイフのようなものを出して手に持った。
「お得意の魔法は良いのか?」
「俺が本当に得意なのは短刀による攻撃。勝手に誤解されちゃ困る。」
なるほど。それがコイツの奥の手か…
心にどこか余裕があると思ったら、そんな物を隠し持っていたのか。
「これからが本気だ!」
と言って、ストーカーはこちらに突っ込んでくる。
挑発したためか、それとも本来のものなのかは分からないが、動きが大分直線的だ。
短刀は、とにかく相手に近付かなければならない。それまでが大変だ。
しかし、逆に間合いに入られたら厄介な事になる。デュアとルソードを抜いたとしても、リーチが長すぎて攻撃を防ぐ事はできない。
かと言って、障壁で短刀を急遽創っても駄目だ。短刀は使ったことが無いので、攻撃を防ぎきることは出来ないだろう。
だがその前に、能力の産物はコイツに認識された時点で打ち消される。魔法も同じだ。
しかも今俺は女のままなので、障壁は創れない。ポケットに手を突っ込む余裕があるか無いか…
なので、間合いに入られたらアウトなのである。その前に、魔法と能力無しで勝たなければならないのだ。
「さっきからどうした!避けてばっかりのようだが!?」
間合いに入られたらアウトなんだから自分から近付く訳が無い。むしろ避ける。
この状況では俺が圧倒的に不利だ。一体、どうやって戦えばいいんだ………
…せめて、アイツがナイフを使えないようにしないと…!
ナイフを弾き飛ばす…は、失敗した時のリスクが大きい。
愛剣を使う…も、避けられたら終わり。
……万事休すか。せっかくのチート能力も、打ち消されたら意味が無い…
…そう言えば、認識さえされなければ能力も魔法も使えるんだよな?
気付かれなければチートが使える……一回だけならいけそうだ。
俺は後ろに思いっきり飛び、距離をとって足を止める。
「諦めたのか?なら、覚悟は決まってるよな!!」
ストーカーが素早い動きで距離を詰め、短刀を振る。
ここで体感時間を延ばす。普通なら素早いはずの、のんびりしたナイフの動きを見ながらタイミングをはかる。
そして、短刀が俺に少しだけ当たる…今だ。
ここで、能力を発動。何も切れない性質を付け、体感時間を元に戻す。
「なに!?切れな」
「今だああああああああああああああああ!!」
俺は短刀目掛けて拳を素早く振るう。
パキィィィィン!!
短刀は通り抜けた拳によって折れ、奴の武器が無くなる。
その隙を逃さず、奴にも拳を振る。
ゴッ!!
気持ちいいくらい思いっきりストーカーの顔に突き刺さった拳は振り切られ、ストーカーは悲鳴を上げる事無く少し空を舞って地面に叩きつけられた。
「勝った…」
なんとか勝てた。少し危ない場面もあったが、何も無かった。
このストーカーは狩人のギルドにでも連れて行こう。傷害事件の犯人だしな。
…正直触るのも嫌だが、おぶっていくしかないんだよな…
その後は迎えに来る移図離を待つだけだ。それまで何してるかね~…
「お前、そいつを倒したのか?」
突如後ろから声がした。
俺はストーカーをおぶったまま、後ろに飛びつつ振り返る。背中から人一人分の重みが無くなったが、そんなことを気にしていられる状況じゃない。
アイツ、全く気配がしなかった。気配を完全に消したとでも言うのか?
「ああ、そうだ。言っとくがこれは正当防衛だ。恨むなよ。」
「フン。恨みはせんが、そいつをどこに連れて行く気だったんだ?」
「もちろん狩人のギルドだ。」
「それは困る。そいつを返してもらうぞ。」
「それはでき…」
俺はその後の言葉を言う事は出来なかった。
気が付くと腹に強い衝撃があり、民家の壁に背中から当たってその勢いのままに強く頭をぶつけた。
壁が石だったせいか、俺は頭をぶつけると同時にすぐに気絶してしまった。




