第三百四十三話 全て論破?所詮馬鹿はバカ!?
まさかの三話目。
珍しい事もあるもんだ…(他人事)
「フッフッフ、それが今回のミソと言っても過言ではない。
そう!犯人を推理で見つけるのだ!!ミステリーのように!!」
俊太がものすごく元気に言うが、それには問題しかない。
「…それ、本気で言ってるのか?」
「あたぼうよ!」
「問題しかないぞそれ。
ミステリーなら定番の容疑者がいないし、犯人を特定する手がかりも無い。なのに、推理のしようが無いだろ。」
「容疑者ならいるだろ!二人が倒れていた時に集まっていたギャラリーだ!!」
「何人居るんだよ。多すぎて集められないだろ。
しかも、当の犯人はとっくに離脱してたかもしれないし。」
「なら聞き込みだ!聞き込みで情報を集めれば」
「何の権限も無い俺達に、一体どれだけの人が情報をくれるだろうな。」
「…犯人は現場に戻ってくる!だからここで張り込んで」
「ここ、普通の通路だぞ?しかも人通りが多い。戻ってくる奴は何人いるのやら…」
「……」
俊太は黙り込んでしまった。
言った事は全て論破され、打つ手無しと言ったところか。
「分かったか?仇をとろうにも、そもそも犯人を見つけようが無いんだ。
だからここは大人しく村を出て行って、安全を確保するしかないん」
「そこの君達。」
太郎の意見は、何者かによって遮られた。
突然現れたそいつは真っ黒の服を着込んだ男で、俺たちというよりバッグを見ている様子だ。
まさかこいつが…ん?こいつどっかで見たな。
「そのバッグはどこで手に入れた?」
「預かったんだ。このバッグがどうした?」
「そのバッグを渡せ。」
「なんでお前に渡さなければならない?」
「俺はお前等にそのバッグを預けた奴の知り合いなんだ。
噂によると、お前等は旅人だそうじゃないか。だったら俺がその荷物をアイツに渡すから、お前等は俺にそのバッグを預けて旅を続けるといい。」
…これ、間違いなく絶対に渡しちゃいけない奴だよな?
さすがにこの状況でこれを渡そうとする奴は…
「ああ、なら持ってけ。早く渡してやれよ。」
……なんでいるのかな~。
なんで子供でも分かる事を分からないかなこの馬鹿は。
「…駄目だこのバカ、早くなんとかしないと…」
「なんだと!?なんで俺がバカ呼ばわりされなきゃなんねえんだよ!!」
察してない時点で充分だバカ。
「キャビの様子を見ても分からないの?」
「な!?え!?なんで身構えてんだ!?」
「……」
………もう何も言うまい。
「とにかく、そんなことは嘘だってバレバレだ。
でなきゃあいつはこれを預ける時に、これを持って逃げろ、じゃなくて知り合いに預けてくれって言うだろうしな。」
え!?あ!嘘だったのかよ!!
と騒ぐ馬鹿を放っておいて、黒ずくめの男…黒男でいいか。
黒男を睨む。
黒男は少し笑みを浮かべながらなお喋る。
「やはりこの程度の嘘は通じないか…大人しく騙されていれば痛い目に遭わずに済んだものを。」
…約一名には通じてるがな。
それはともかく、コイツはこのバッグを盗もうとしている。
もしかするとコイツがこのバッグを持っていた奴を襲った犯人なのかもしれない。
「でも、どうかしらね。こっちはこの人数の上、その内数人が能力持ち。
これで掛かって来られても返り討ちにあう事は確実だと思うけど?」
ギーナの言うとおり、こちらが圧倒的に有利だ。黒男には勝機が全く無い。
一体どこからその威勢が出てくるんだ?もしかして何か秘策が…
「フッフッフ、俺の能力を忘れたか?ルーマ!」
…思い出した。あのやたらムカつく笑い声は…
「あの、私じゃないんですが…」
って、間違えんな。なんでこっち見てないんだと思ってはいたが、そういうことかい。
「ああ、私も思い出した。コレは…」
「あ~、あの人ね。」
俺以外にもこいつを知っている奴は三人いる。
間違えられたリセス、タカミ、キャビだ。
そう、こいつは…
「いつぞやの…ストーカー!」
…名前知らなかった。




